基本的な考え方
当社グループは、クルマづくりの企業グループとして交通安全への責任を認識し、「道路交通事故の削減に寄与する製品の提供」をマテリアリティとして特定しています。
世界では年間約119万人が交通事故により亡くなっているといわれています。2010年から2021年の間に約5%減少しているものの、依然として多くの人が亡くなっているのが現状です(※1)。交通事故の削減は世界的に喫緊の課題であり、国連持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット3.6(世界の道路交通事故による死傷者を半減させる)については、2020年に開催された第74回国連総会で、2021年から2030年までの10年間で世界の道路交通事故による死傷者を半減させることが採択されました。
当社グループは、交通事故ゼロのクルマ社会に向けた安全理念を掲げ、安全技術の開発・普及と、交通安全教育の2つの側面から取り組みを進めています。
- 2023年 世界保健機関(WHO)調査より
マネジメント体制
製品開発においては、安全理念に基づき、製品安全委員会にて安全開発指針・戦略とともに、安全技術の考え方として自動車安全フレームワークを策定し、以下の3点を軸として取り組んでいます。
-
①交通事故を未然に防止する技術(予防安全)
-
②交通事故による被害を軽減する技術(衝突安全)
-
③工業製品としてハードウェア、ソフトウェア両面から想定される危険の回避(製品基本安全)
また、技術開発従事者に対して教育を通じて安全理念および自動車安全フレームワークを浸透させ、マネジメント体制の強化を図っています。
安全技術の開発
当社グループでは、さまざまな安全技術を製品に反映することによって、お客様に、安全、安心かつ快適な運転をしていただけることをめざしています。
“ぶつからない”予防安全技術
交通事故をなくすために、事故を未然に防止することをめざし、各種予防安全技術の開発・搭載を推進しています。
e-Assist(イーアシスト)
電波レーダーやカメラなどを利用して、事故の危険を検知し、被害を予防・回避・軽減できるようアシストする技術です。
予防安全機能の例
| 機能名 | 概要 |
|---|---|
| 衝突被害軽減 ブレーキシステム |
前方の車両や歩行者、人が乗車している自転車との距離や相対速度を監視。さらに、夜間の歩行者も監視します。衝突する危険性があると判断した時には警報音とインフォメーション画面表示で注意を促し、ブレーキ制御を作動させて衝突回避または衝突被害の軽減をアシストします。 |
| 踏み間違い衝突 防止アシスト |
前進時と後退時には壁などの障害物を、前進時には車両や歩行者も検知し、踏み間違いなどの操作ミスによってアクセルペダルを強く踏み込んだ場合、警報音とインフォメーション画面表示で注意を促します。さらにモーター出力を抑制し、ブレーキ制御を作動させて衝突回避または衝突被害の軽減をアシストします。 |
| 車線逸脱警報 システム&車線 逸脱防止支援能 |
車線を逸脱しそうになると、ステアリング振動などで注意を促します。さらにブレーキを短時間制御し、クルマを車線内に戻すサポートを行います。 |
| オートマチック ハイビーム |
先行車や対向車、道路周辺の明るさを検知。ハイビームとロービームを切り替えることにより、遠方視認性を高めるとともに、切り替え忘れや手動操作の煩わしさを軽減します。 |
| 前方衝突予測警報 | 前方車両のさらに前を走る車両の車間・相対速度を監視。 自車からは見えない前方の状況変化を検知し、自車の減速が必要と判断した場合に、注意を促します。 |
| 標識認識システム | 速度標識などを認識し、インフォメーション画面表示とヘッドアップディスプレイに制限速度などを表示します。 |
| ふらつき警報 | ドライバーのハンドル操作から注意力が低下していると感知すると、警報音とともにインフォメーション画面に「休憩しませんか?」と警告メッセージを表示します。運転の疲労による事故を予防します。 |
- 搭載機能や検知対象は、車種によって異なります。ドライバーの安全運転を前提としたシステムであり、運転操作の負担や衝突被害を軽減することを目的としています。
システムの検知性能・制御性能には限界があるため、これらのシステムに頼った運転はせず、つねに安全運転を心がけてください
「サポカー」対象車の拡大
セーフティ・サポートカー(サポカー)は安全運転をサポートする先進技術を搭載したクルマです。高齢運転者の交通事故防止対策の一環として、日本が官民一体で推進する新しい自動車安全コンセプトです。搭載機能に応じて「サポカー」「サポカーS(ベーシック、ベーシック+、ワイド)」に区分されます。当社は、サポカーSワイドのラインアップを拡大しています。
対象車種(2025年4月現在)
| サポカーSワイド対応車種 | アウトランダー(PHEVモデル)、エクリプス クロス(PHEVモデル)、エクリプス クロス(ガソリンモデル)、トライトン、デリカD:5、デリカD:5 URBAN GEAR、デリカD:2、デリカD:2カスタム、デリカミニ、eKクロスEV、eKクロス、eKワゴン、eKスペース、タウンボックス、ミニキャブEV、ミニキャブ バン(※)、 ミニキャブトラック(※) |
|---|
- 一部グレードを除く
加えて、国土交通省の「先進安全技術の性能評価認定制度」において、衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い急発進抑制装置、後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置が一定の性能を有していると認定を受けています。
認定車種(2025年4月現在)
| (対車両)衝突被害軽減ブレーキ (対歩行者)衝突被害軽減ブレーキ |
アウトランダー(PHEVモデル)、エクリプス クロス(PHEVモデル)(※2) エクリプス クロス(ガソリンモデル)(※2) デリカD:5(※3)、デリカD:5 URBAN GEAR(※3)、eKクロスEV、eKクロス、eKワゴン、eKスペース、デリカミニ デリカD:2、デリカD:2カスタム、ミニキャブトラック(※4) |
|---|---|
| ペダル踏み間違い急発進抑制装置 | アウトランダー(PHEVモデル)、エクリプス クロス(PHEVモデル)、エクリプス クロス(ガソリンモデル)、デリカD:5(※5)、デリカD:5 URBAN GEAR(※5)、eKクロスEV、eKクロス、eKワゴン、eKスペース、デリカミニ、デリカD:2、デリカD:2カスタム、タウンボックス、ミニキャブ バン(※6)、ミニキャブトラック(※6) |
| 後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置 取り付け可能車種 | eKワゴン(ʼ13年~ʼ19年)、eKカスタム(ʼ13年~ʼ19年)、eKスペース(ʼ14年~ʼ20年)、eKスペースカスタム(ʼ14年~ʼ20年)、ミラージュ(ʼ12年~ʼ23年)、デリカD:5(ʼ07年~) |
- 一部グレードは対車両のみ
- 対車両のみ
- 一部グレードのみ
- 前方のみ
- 一部グレードのみ
“人を守る”ボディ構造
『アウトランダー』(PHEVモデル)に採用した
RISEボディ
万一の衝突の際には、乗員が受ける衝撃を緩和し、かつ十分な空間が確保できる車体構造が重要です。当社では、衝突安全強化ボディ「RISE(ライズ)」(※7)を採用し、前面、側面、後面の全方位での衝突安全性能を向上させています。
例えば、2021年4月に北米向けに販売を開始した『アウトランダー』(ガソリンモデル)、および同年12月に日本向けに販売を開始した『アウトランダー』(PHEVモデル)では、車体前後にはストレートフレーム構造を採用し、効率よくエネルギーを吸収できる構造としています。客室(キャビン)部分には、従来から採用している高張力鋼板に加え、ホットスタンプ式超高張力鋼板を採用することにより、乗員の安全性と軽量化を両立させています。
また、乗員に対してだけではなく、歩行者に対する安全性も追求しています。事故の際に、歩行者頭部の傷害を低減するためにボンネット部やカウルトップ、ワイパーなどにエネルギー吸収構造を採用し、バンパーフェースやヘッドランプなどには歩行者の脚部を保護するエネルギー吸収構造を採用しています。
- RISE:Reinforced Impact Safety Evolutionの略称
『アウトランダー』(PHEVモデル)に採用したRISEボディ
採用車種(2025年4月現在)(※8)
| 衝突安全ボディ「RISE」採用車種 | アウトランダー(PHEVモデル)、エクリプス クロス(PHEVモデル)、エクリプス クロス(ガソリンモデル)、トライトン、デリカD:5、デリカD:5 URBAN GEAR、デリカミニ、eKクロス EV、eKクロス、eKワゴン、eKスペース、ミニキャブEV |
|---|
- OEM受け車を除く
第三者機関による安全性能評価
当社は、日本のJNCAP(※)をはじめ、国内外の公的機関による自動車アセスメントプログラムにおいて、安全性に対する高い評価を獲得しています。
- NCAP:New Car Assessment Program
主な評価結果(2025年4月現在(※10))
| 外部評価 | レーティング | 車種 | 最高評価獲得車種数/ 評価を受けた車種数 |
|
|---|---|---|---|---|
| 日本 | JNCAP | 5☆ | アウトランダー (PHEVモデル) エクリプス クロス (ガソリンモデル) eKクロスEV |
3/5 |
| アセアン | ASEAN NCAP |
5☆ | トライトン エクスフォース エクリプス クロス (ガソリンモデル) |
3/4 |
| 豪州 | ANCAP | 5☆ | テキスト | 2/2 |
| 米国 | NCAP | 5☆ | エクリプス クロス (ガソリンモデル) |
1/4 |
| IIHS(※11) | TSP+ | - | -(※13) | |
| 中南米 | Latin ANCAP |
5☆ | アウトランダー (PHEV&ガソリンモデル) L200/トライトン |
2/2 |
- OEM受け車を除く
- IIHS:Insurance Institute for Highway Safetyの略称。IIHS(米国道路安全保険協会)が実施する安全性能総合評価。TSP+(Top Safety Pick+)が最高評価
- ダブルキャブモデルが対象
- 2024年度に評価を受けた車種はありません
工業製品として想定される危険の回避
ハードウェア面の取り組みとして、難燃性の材料の使用や高電圧部の隔離など、安全・安心のための技術を採用しています。
また、ソフトウェア面の取り組みとして、クルマに搭載されている電子機器へのサイバー攻撃に対するリスクを低減するため、車両ネットワークにファイヤーウォールや暗号化通信などを採用しています。
交通安全の教育・普及
当社では、交通事故削減を目的に交通安全の教育・啓発を通じて社会全体の安全意識を高めることに取り組んでいます。また、産官学連携の活動を通じ、交通事故死傷者数の削減をめざしています。
ウェブサイトを活用した交通安全情報の発信
当社ウェブサイトでは、クルマをより安全にお使いいただくために、特に注意していただきたい装備の操作方法などを紹介しています。
アセアンにおける産官学連携の推進
TARC(Thailand Accident Research Center)が主催し、2025年2月に第2回会議が開催されたタイ道路交通安全フォーラムにて、当社は、人の行動に起因する交通事故対策(教育や啓発など)についてのプレゼンテーションやパネルディスカッションに参画しました。同フォーラムには、タイの道路交通安全に関わる運輸省や公共保健省、警察といった政府関係機関や、大学、研究機関、自動車メーカーなどが参加し、交通事故死者数削減に向けた議論をしています。
当社は、このような産官学連携の活動を積極的に推進することで、アセアン地域で特徴的に多い自動二輪車乗員の死亡事故をはじめ、交通事故による死傷者数を削減するための調査・分析や方策立案に貢献しています。