基本的な考え方・方針

三菱グループ共通の根本理念である「三綱領」と当社の「ビジョン・ミッション」、日々の業務の方向付けとなる「MMC WAY」の3つを教育の柱としています。また、これらを実現するために職務区分ごとに求める人材像を設定し、必要な能力やスキルを明確にしています。

そのうえで、人事部門では全社教育体系を整備しており、新入社員から部長クラスまで、体系的な人材育成を進めるため、職位・経験年数に基づいて構成された研修カリキュラムや、次世代リーダー育成のための選抜型研修、eラーニングを活用した全社員向け研修や希望者が自主的にプログラムを選択して受講する選択型研修など、さまざまな研修プログラムを実施しています。
また、各領域・部門においても、業務を通じて成長し、職場でより活躍していく人材を輩出すべく、部門ごとに定義した専門スキルに基づく教育プログラムを実施しています。
さらに、当社では毎年職場の上司と面談を行い、将来のありたい姿について話し合う機会を設けています。自分の将来像を上司と共有することで、今後のキャリアについてより理解を深め、次の成長につながるような人材育成をめざしています。
教育・リスキリングプログラムの充実
キャリア入社者フォロー施策
キャリア入社者が当社に馴染み早期に力を発揮できるよう、メンターの設定や1 on 1ミーティングなど職場での受け入れ体制を強化しています。また、同時期入社者同士のつながりを醸成する集合研修として、現場理解の機会を提供する工場・開発施設見学のほか、過去の安全や品質に関わる不祥事への理解を深め、再発防止を図ることを目的とした「過ちに学ぶ研修」をプログラムに組み込んでいます。
マネジメント力強化
課長職層を対象に、職場管理や指導・育成の強化など、マネジメントスキル向上の機会付与を目的とした「マネジメント力強化研修」を2024年度第4四半期より開始し、年度内に約100人が受講しました。2026年度末までに既存課長職層への研修を完了させ、2027年度からは課長職層昇進後の常設型研修として継続実施する予定としています。
海外との相互社員派遣研修制度の拡大

当社では、海外での生産・販売台数の拡大を図るのにともない、グローバルに活躍できる“次世代リーダー”の育成に力を入れています。当社グループの注力地域であるアセアンを中心に若手社員を1年または2年派遣(現地関連会社での実務経験1年あるいは語学研修1年+現地関連会社での実務経験1年)する海外業務研修プログラム「GCDP(Global Career Development Program)」を実施しています。2024年度は、1年プログラム10人、2年プログラム3人の計13人を派遣しました。
同プログラムには2022年度から公募枠を設置し、要件を満たす社員は誰でも応募できるようにしています。また、2023年度からは関係会社から当社への派遣研修も開始し、海外関係会社社員も含めた継続的な人材育成を図っています。
DXリスキリングプログラムの導入
自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えており、IT・デジタルテクノロジーの進化によって、ビジネス環境は日々劇的に変化しています。こうした変化に適応し、グローバルに広がる多様な顧客層へのリーチを強化するためにも、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は不可欠です。とくに、デジタルネイティブであるZ世代のみならず、あらゆる世代・市場の多様なニーズに応え、より多くの顧客に新たな価値を提供するためには、デジタル技術を駆使した革新的なアプローチの強化が求められます。
このような背景のもと、IT・デジタル領域における15年先のビジョンを全役員で議論し、テクノロジーの力を最大限に活用し未来へ前進するためには、全社員が高度なIT・デジタルリテラシーを備えることが不可欠であるとの認識を共有しました。中期経営計画「Challenge 2025」の中核となる取り組みの一つである「デジタル化推進・新ビジネス領域への進出」においても、デジタル人材の育成は極めて重要なテーマです。
2023年度には、デジタル人材育成の第一歩として、全役員および間接社員を対象に「IT/Digitalリテラシー向上研修」(計6時間)を実施し、全役員・社員の変革マインドの醸成に取り組みました。2024年度からは、加速度的に普及が進む生成AIの基礎知識習得および業務活用に関するセミナーを開講するなど、社員がAIを適切に活用できる環境の整備を進めています。さらに、業務効率化を加速するノーコード・ローコードツールの活用を促進するとともに、それを支える教育プログラムを段階的に展開しており、社員の生産性向上を支援しています。
今後も、当社グループに必要なIT・デジタル人材像を明確に定義し、最先端のデジタルスキルを備えた人材の育成に向けた取り組みを着実に推進していきます。

専門性評価と昇給・昇進システムとの連動
2022年度の人事制度改正において、行動評価の一項目として「専門性」を新設しました。これは、各組織において求められる専門知識とスキルの習得度、およびそれらを活かした実践の度合いを評価することで、社員一人ひとりの成果創出とパフォーマンス向上を促進するものです。「専門性」に基づく評価は、認識と動機付け、実践とフィードバック、能力開発と成長という一連のプロセスと結び付き、昇給・昇進と連動する仕組みとなっています。こうしたサイクルを毎年の評価を通じて循環させることで、専門性の向上を基盤としたキャリアの開発・発展と新たな挑戦に対する意欲の醸成を図っています。
導入当初の2022年度は、暫定的な全社基準のもとで評価を実施しましたが、2023年度を通じて部門ごとの評価基準を策定し、2024年1月より正式導入に至りました。2025年度は、さらに「専門性」の定義を深化させるべく、職種別スキルマップと体系的な教育プログラムの整備を進め、より実効性の高い能力開発を推進します。「専門性」は単なる研修を通じて育まれるものではなく、実践と経験の積み重ねによって真に深化するものです。そのため、各部門において、OJT(On-the-Job Training)を核とした成長機会の創出を重視しつつ、必要に応じてOff-JT(Off-the-Job Training)を効果的に組み合わせることで、実務を通じた「専門性」の強化を後押ししていきます。
今後も、「専門性」を企業競争力の源泉と捉え、その強化に向けた制度・環境のさらなる進化を図っていきます。
次世代リーダーの育成

持続的な企業成長を実現するため、将来を担う次世代リーダーの育成を計画的に進め、会社の長期的な発展を支える基盤を築いています。
2024年度からは、管理職に加え指導専門職まで対象を拡大して、選抜型研修「リーダーシップ・デベロップメント・プログラム」を実施しています。約7カ月間にわたる同プログラムでは、職位ごとにめざすリーダー像を定義したうえで、将来、経営を担うために必要な知識の習得と思考力の訓練を行い、段階的な成長を支援しています。
また、経営人材の計画的な育成と配置を目的としたタレントマネジメントとして、当社では、社長、副社長、執行役を含む会議体「主要ポスト人事事前検討会」にて、役付執行役から関係会社社長、社内の本部長など、事前に「主要ポスト」と定めた各ポジションのサクセッションプランについて議論しています。議論のベースとなるサクセッションプランは各部門のトップが毎年更新し、「1-2年以内に後任になりうる人材」「3-5年以内に後任候補になりうる人材」「将来候補になるポテンシャルを有する人材」の3層を、各部門の内外からリストアップして人事部門と共同で作成しています。各本部においても部長サクセッションプランを毎年作成し、本部長および人事部門を交えた人事会議を開催し、次年度の配置や候補人材の育成について議論しています。
なお、2024年度から女性役員候補者の育成に向けた取り組みとして、役員と女性リーダー層との個別面談を実施しています。
キャリア形成支援
キャリア開発
キャリア形成にあたっては、社員一人ひとりが業績や能力、ライフプランから主体的に目標を持ち、能力向上につなげられる仕組みを整えてきました。
キャリア開発の具体的な進め方は、社員が自己のキャリアを棚卸しし、将来進みたい方向と中長期的なキャリアデザインを記載した「キャリア・デベロップメント・プラン(CDP)」に基づき、毎年上司と面談を行います。この面談を通じて、自身の課題を客観的に把握し、納得感と高いモチベーションを持って、自らのキャリア形成を進めることをめざしています。また、この取り組みのさらなる活用を目的に、2024年度より全社員を対象にキャリア形成の重要性と具体的な方法を学ぶセミナーを実施しています。
新卒入社の事務系社員には、「第二配属制度」という仕組みを用意しています。これは初任配属から3-5年経過したタイミングで部門を越えたローテーションを実施するもので、複数部門の業務を経験することにより、幅広い知識・見識と社内の幅広い人脈を有する全体最適思考を持った人材の育成をめざしています。
また、これ以外にも部門内ローテーションや、業務上関係性のある他部門へのジョブローテーション、営業部門から販売会社への派遣など、多様な経験や高度な専門性を有する人材の育成に取り組んでいます。
生涯教育の支援

当社では、2021年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」に基づき、60歳以上の定年退職者の再雇用を推進し、熟練者の技術や知識・経験の着実な伝承を図っています。
また、労働組合との共同事業の一つとして、50歳以上の社員を対象に、定年後の生活設計のアドバイスなどを行う「グッドライフセミナー」を定期的に開催するなど、生涯キャリア開発の支援にも取り組んでいます。
女性社員の活躍推進

当社は、「女性活躍推進」を重点課題の一つに設定しています。2024年4月には、女性活躍推進法に基づき「女性活躍推進行動計画」を策定し、2029年3月までに「女性管理職比率と間接従業員に占める女性比率とのギャップを埋める」ことを目標とする取り組みを継続的に進めています。
この一環として、社員のモチベーション・スキルの向上、社外ネットワークの構築を目的とし、当社の管理職候補者や現役管理職を選抜し、公益財団法人21世紀職業財団が主催する女性活躍サポート・フォーラムに継続して派遣しています。また、リーダーシップスタイルやマネジメントスキルを学ぶ機会として、あいち女性の活躍促進事業実行委員会のセミナーにも岡崎地区の女性管理職候補者を派遣しています。