近年、気候変動への対応や人権尊重などのサステナビリティに関する課題が企業経営において益々重要になっています。加えて、AIやIoTなどテクノロジーの発展により、人の移動とモノを運ぶための手段であった自動車の概念は大きく変わりつつあり、自動車業界は新しい時代に向かおうとしています。このような状況下、三菱自動車は、人々の移動を効率化・最適化することで、個人の新しい挑戦や経済活動を促進し、社会全体の活性化に貢献していきたい、という思いを込め、「モビリティの可能性を追求し、活力ある社会をつくります」をビジョンとして掲げ、その実現を目指しています。
このビジョンに向け、中期経営計画「Challenge 2025」を通じて、モビリティビジネスの構築に取り組むほか、地球規模の課題であるカーボンニュートラルの実現、人権尊重や多様な人材が活躍できる職場の確立などに取り組んでいます。
そのうえで、「『環境×安全・安心・快適』を実現する技術に裏付けられた信頼感により、冒険心を呼び覚ます心豊かなモビリティライフをお客様に提供すること」という三菱自動車らしさを徹底的に磨き上げ、多様なステークホルダーとの対話を通じて相互に理解を深めながら、クルマという身近な製品を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
「環境ビジョン2050」の実現に向けた挑戦
水と緑が豊かなかけがえのない地球環境を次世代以降へ継承するために、気候変動をはじめとする環境問題への対応が企業に求められています。当社は、このような社会の要請に応えるために、「気候変動対策」「資源循環」「環境汚染防止」について、2050年までに実現したい社会像と当社の取り組みの方向性を定める「環境ビジョン2050」を策定し、実現に向けて取り組んでいます。
「気候変動対策」については、サプライチェーン全体で2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、電気自動車・プラグインハイブリッド車・ハイブリッド車を適切なタイミングで投入するとともに、事業活動における省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入・拡大などを進めていきます。
また、調達・物流では主要な取引先及び輸送会社と協力し、原材料・部品の生産・調達段階でのCO2排出量削減や、製品・部品の輸送効率化などに取り組んでいます。
更に「資源循環」については、リサイクルに配慮した設計・開発、使用済自動車のリサイクル促進、生産活動における排出物の発生抑制と再資源化の取り組みなど、投入資源の最小化と資源効率の最大化による資源循環型社会の実現への貢献、「環境汚染防止」については、走行時の排出ガスのクリーン化、環境負荷物質の低減といった製品による環境負荷や事業活動にともなう汚染の低減により人の健康と生態系に影響を及ぼす環境汚染のない社会の実現への貢献に取り組んでいきます。
モビリティの可能性を追求
自動車産業の大変革時代を迎え、当社はデジタルトランスフォーメーションと新ビジネス領域への進出を成長の新たなシーズと位置づけ、強化していきます。一例としては、電動車の使用済みバッテリーを蓄電池として活用し電力の需給を調整するエネルギーマネジメントや、災害による停電時などの緊急電源として車載バッテリーを活用する実証実験などに取り組んでいます。こうした自動車メーカーならではのバッテリーの利活用といった事業機会の可能性を模索し、異業種との協業も図りながら、新たな収益の柱とすべく、本格展開に向けた基盤構築を進めます。
働きがいのある環境の構築と人材育成を推進
事業環境の急速な変化や少子高齢化が加速する中、当社が持続的に成長し企業価値の向上を実現していくためには、高い志や専門性などを有する多様な人材を獲得・育成し、更に、リテンションを図ることが欠かせません。人材は経営資本であるとの観点から、一人ひとりがやりがいを感じ、能力を存分に発揮して、心身ともに健康でいきいきと働ける環境を整えることに取り組んでいます。
中期経営計画「Challenge 2025」を支える人材戦略の方向性として掲げた、「より一層働きやすい職場への改革」、「教育・リスキリングプログラムの充実」、「多様で幅広い人材確保の推進」を重点項目として、働き方改革、育成に関する制度・施策の見直しなどにより、社員一人ひとりが働きがいのある職場の確立と人材育成を推進します。
人権尊重の取り組みを引き続き強化
グローバルに事業を展開し持続的に成長するため、また企業の社会的責任としても、人権尊重の取り組みが不可欠です。当社は国連が提唱する「人権・労働・環境・腐敗防止」の4分野・10原則についての「国連グローバル・コンパクト」への支持を表明するとともに、その参加企業として、「国際人権章典」「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際的な規範や基準を支持、尊重しています。また、当社グループでは、「人権方針」で、差別の禁止や不当な労働慣行の排除などを示しています。
当社は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて、当社およびグループ会社での人権アセスメントを進め、事業活動が人権に与える負の影響を特定、確認するとともに、迅速な改善を図ることにより、人権侵害の防止強化に取り組んでいます。
サプライチェーンにおいても人権尊重の取り組みを促進するため、取引先に「サプライヤー CSRガイドライン」に合意いただくとともに、第三者評価機関による取引先へのCSRアセスメントなどを通じて状況把握に努めています。
自動車産業の調達先の裾野は大変広く、かつ複雑であることから、直接の当社取引先以外での原材料の調達や部品生産において児童労働、強制労働などの潜在リスクが懸念されます。このようなリスクの排除に向け、取引先と協力し、さらなる人権侵害防止の強化に取り組みます。
また、環境問題が直接的・間接的に人権へ影響することから、気候変動対策・資源循環・環境汚染防止などの環境保全の取り組みを強化しています。
サステナブル経営の強化
当社は、サステナビリティへの対応が当社グループの経営の要であるとの認識のもと、14のマテリアリティすべてに役員・本部長の取り組み責任者を定め、私が委員長を務める「サステナビリティ委員会」で取り組みの進捗を確認し、気候変動対策など重要事項は、取締役会に報告・審議しています。
サステナブル経営においては、幹部・従業員全員の意識共有が重要です。そのため、役員については、中長期業績連動報酬を決定する指標として「事業活動CO2排出量」および「従業員エンゲージメント」を組み込んでいます。従業員には、タウンホールミーティングなどの場を通じて、私自身の言葉で繰り返しサステナビリティの重要性を伝え、意識向上に努めています。
以上のような様々な取り組みを通じて、お客様や株主様をはじめ、すべてのステークホルダーのご期待に応える価値の提供を目指すとともに、コンプライアンスを最優先に、ガバナンスの継続的強化・充実に取り組んでまいります。
今後も透明性高く、グループ全体でのサステナブル経営を強化します。
三菱自動車工業株式会社
取締役
代表執行役社長
兼 最高経営責任者