トップメッセージ
「人権尊重の取り組みを引き続き強化」
三菱自動車工業株式会社
代表執行役社長
兼 最高経営責任者
加藤 隆雄
グローバルに事業を展開し持続的に成長していくためには、企業としての社会的責任を果たしていくとの観点から、人権尊重への取り組みは欠かせません。当社は「国際人権章典」「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際的な規範や基準を支持・尊重するとともに、「人権方針」を定めて、差別の禁止や不当な労働慣行の排除を明確に掲げています。これまでも、人権デューディリジェンスの仕組みを通じて、当社およびグループ会社において人権アセスメントを実施しているほか、サプライチェーンにおいても、人権尊重の取り組みは重要な課題であることから、各取引先には「サプライヤーCSRガイドライン」への合意をいただくとともに、第三者評価機関による取引先へのCSRアセスメントなどを通じた状況把握に努めています。こうした人権尊重に対する取り組みをいっそう強化するため、2024年11月には社内に「人権委員会」を新たに設置しました。自動車産業の調達先の裾野は大変広く、かつ複雑です。直接の取引先以外での原材料の調達や部品生産といった場での人権侵害も含めあらゆる人権リスクを確実に排除するため、サプライチェーン全体での人権侵害防止の強化に取り組んでいきます。
ガバナンス
基本的な考え方
【図解】国際的基準に基づく持続可能な企業活動
当社グループは、人権の尊重が事業活動の基本であるの考えのもと、「国際人権章典」「ビジネスと人権に関する指導原則」「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」「OECD多国籍企業行動指針」などの国際的な規範や基準を支持・尊重しています。
方針・行動規範の策定・公表
当社グループはステークホルダーの人権を尊重した事業活動を行うことを目的として、「人権方針」を専門家との協議及び経営会議の承認を経て判定しています。同方針では、人権に関する国際的な規範や基準を支持・尊重すること、遵守すべきことなどの基本事項、および人権に与える負の影響の防止・提言と救済措置、役員・従業員教育の実施などの具体的な取り組みについて定めています。同方針は英語に翻訳し、国内外のすべてのステークホルダーがウェブサイトにて閲覧できるようにしています。
当社グループのグローバル行動規範における第8条「人権と多様性の尊重、機会平等」では、人権を尊重するとともに、取引先、お客様、役員・従業員、地域社会の多様性を尊重し、差別や報復、いやがらせは、どのような形・程度にせよ容認しないことを定めています。
また、環境・人権リスクに関する国内外の法令や要求事項を踏まえて、「人権方針」や「サプライヤーCSRガイドライン」といった既存規範の改定、環境・人権に関するデュー・ディリジェンス規範の制定について、外部有識者を加えて検討しています。
人権方針
当社は人権方針において、以下の内容および遵守事項、取り組み事項を規定しています。
- 三菱自動車は、人権尊重の取り組みを、社会的責任を果たしていく上で不可欠な要素であると認識します。すべての役員・従業員はこの人権方針を遵守します。
- 三菱自動車は、企業ミッション及びグローバル行動規範を踏まえ、私たちの事業活動において、基本的人権を尊重します。
- 三菱自動車は、「国際人権章典」及び人権諸条約、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」及び諸基準、「ビジネスと人権に関する指導原則」、「国連グローバル・コンパクト」といった国際規範や基準を支持、尊重します。
- 三菱自動車は、ステークホルダーとの関わりを通じて人権尊重の取り組みを推進します。
- 三菱自動車は、事業活動を行うそれぞれの地域において、その国の国内法及び規制を遵守します。また、国際的に認められた人権と各国法の間に矛盾がある場合、私たちは、国際的な人権の原則を尊重するための方法を追求していきます。
遵守事項
-
差別の禁止
三菱自動車は、人種、皮膚の色、国籍、民族、門地、性別、性的指向、性自認、年齢、障害の有無、言語、宗教などに基づく不当な差別やハラスメントを容認せず、多様性を尊重するとともに機会の均等に努めます。
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不当な労働慣行の排除
三菱自動車は、人身取引を含む奴隷労働や児童労働、強制労働といった不当な労働慣行を認めず、それらの排除に努めます。
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結社の自由と労使の対話
三菱自動車は、従業員が結社する権利を尊重します。また、従業員の代表、もしくは従業員と、誠実に対話・協議します。
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ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保
三菱自動車は、役員・従業員への教育、生計が立てられる賃金、安全で健康的に働ける職場、適正な労働時間といった「ディーセント・ワーク」の確保に努めます。
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地域社会との共生
三菱自動車は、自らの事業活動が地域社会の人々に与える影響を理解し、多文化共生を図ります。
取り組み事項
<人権デュー・ディリジェンス>
三菱自動車は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて私たちの事業活動が人権に与える負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう取り組みます。
<救済措置>
三菱自動車が、人権に与える負の影響を引き起こした、あるいはこれに関与したことが明らかになった場合、社内外のしかるべき手続きを通じて、その救済に取り組みます。
<透明性及び説明責任の確保>
三菱自動車は、事業活動の中で本方針が定着するよう、すべての役員・従業員に対して適切な教育や研修を行ないます。また、当社グループ企業に対して本方針の遵守を徹底し、お取引先には本方針を踏まえた「サプライヤーCSRガイドライン」を遵守いただくことを要請していきます。
三菱自動車は、人権尊重の取り組みについて、透明性及び説明責任を確保するため、ウェブサイト等で公開します。
人権方針の遵守
三菱自動車では、12月10日の“世界人権デー”に合わせて、執行役社長が全役員・従業員に向けて人権尊重に関するメッセージを例年発信し、誠実な言動と意識向上の重要性について伝えるとともに、人権方針について啓発を行い、人権尊重の取り組みの重要性について周知しています。
人権の尊重を推進及び実現するにあたり、当社が掲げる方針や活動は以下のとおりです。
- 差別の禁止
当社は、人種、皮膚の色、国籍、民族、門地、性別、性的指向、性自認、年齢、障がいの有無、言語、宗教などにもとづく不当な差別やハラスメントを容認せず、多様性を尊重するとともに機会の均等に努めることを全役員・従業員に求めています。
また、多様性の重要性について社内研修でも取り上げ、様々な価値観の違いを認め、協働することを促しています。 - 不当な労働慣行の排除
当社は、人身取引を含む奴隷労働や児童労働、強制労働といったあらゆる不当な労働慣行を容認せず、それらの排除に努めています。
具体的には、雇用契約締結時における法定要件を満たすための年齢確認を実施しています。また、採用に係る費用や手数料を、応募者や採用した従業員に請求することはありません。
給与明細には法定控除を明記し不当な控除を行わず、定期的に全額を支払っています。
加えて、従業員に対してはパスポートなどの身分証明書の留置や移動の禁止を行わず、従業員寮への入退寮についても従業員の自由な選択にもとづいています。 - 結社の自由と労使の対話
当社は、従業員が結社する権利を尊重し、従業員との誠実な対話を行うことで、様々な課題の解決に努めています。
労働組合との間で締結している労働協約においても、団体交渉を含む正当な組合活動の自由を認め、この活動を理由に労働条件そのほかについて不利益な取り扱いをしないことを明記しています。 - ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保
当社は、ディーセント・ワークの確保のため、各国の法令を遵守することに加え、国際的規範(「国際人権章典」や「労働における基本原則及び権利に関するILO宣言」など)に準拠した人権尊重の実践に取り組んでいます。
具体的には、社員が安定した生活を維持できる賃金水準を確保しながら、成果を発揮した社員がより高く処遇される仕組みとすることで、社員の意欲向上、能力向上を図ることができるよう人事制度を設計しています。
当社では、所定労働時間を超える業務が必要となる場合、各国・地域の労働関連法令を遵守し、労使協定や就業規則に基づき、従業員への説明と同意のもとで時間外労働を実施しています。
また、時間外労働を実施した際には、法令に従い適正な割増賃金を支給し、従業員の健康と働きやすさに配慮した運用を徹底しています。
そして、これらを適切に評価できるよう、毎年労使交渉を開催し、労使合意のうえで必要に応じた改定・見直しを実施しています。 - 地域社会との共生
当社は、従業員一人ひとりの持つ技術やノウハウ・製品を活用した継続的な社会貢献に取り組むことで地域社会との共生を図っています。
- 業務・投資における人権配慮
三菱自動車は、従業員や地域の皆様との相互理解にもとづく良好な関係は持続可能な当社事業に不可欠であると考え、事業所や関連施設を開設する際は、国や地域の慣習、宗教を含む文化的価値観などに配慮しています。
- サプライチェーンへの配慮
当社は、取引先に対する人権侵害を発生させないことなどを含めた適正取引を行っており、取引価格や納期を各取引先と十分協議のうえ決定しています。
加えて、「サプライヤー CSRガイドライン」にもとづくマネジメントにより、取引先との双方向のコミュニケーションを図っています。
本ガイドラインには差別撤廃や児童労働・強制労働の禁止など人権尊重の項目を定め、取引先に対して人権に配慮した取り組みを要請するとともに、「サプライヤー合意確認書」を取引先から受領することにより、その実効性を高めています。
また、取引先に受審いただいたCSR第三者評価の中で「労働と人権」について評価し、評価にもとづき、必要に応じてCSR第三者評価向上に向けた改善を要請しています。加えて、AI分析ツールを活用し、サプライチェーン上の人権リスクを分析し、これらのリスクが判明した場合は改善を行い、WEBサイトにて公開していきます。 - 販売会社での取り組み
販売会社では、従業員の安全や健康に配慮した職場環境の整備に取り組み、人権侵害の行為を禁止しています。
方針・行動規範の策定・公表に関する取り組み
環境・人権リスクに関する国内外の法令や要求事項を踏まえて、「人権方針」をはじめとした既存規範の改定、環境・人権に関するデュー・ディリジェンス規範の制定について、外部有識者を加えて検討を開始しました。
社内体制の構築
当社グループは、経営層をトップとしサステナビリティ部門、人事部門、購買部門、管理部門などが中心となり、外部専門家のアドバイスも得ながら人権尊重の活動に取り組んでいます。また、加えて、ビジネスと人権におけるリスクを潜在的な影響が大きく、かつ緊急性の高い優先リスクの一つとして位置付け、内部統制委員会が監理する全社リスクに統合し、適切に管理しています。
当社が制定、支持、尊重している規範
マネジメント体制
2024年11月に代表執行役社長を委員長とする人権委員会を設置しました。同委員会は、年に3回程度開催し、人権に特化した主要事項に関して協議しており、重要事項に関しては取締役会へ報告し審議する体制としています。取締役会へ報告され審議された内容については、人権委員会委員から担当部門へ共有し、社内外における人権尊重の取り組みの改善につなげています。
理念の共有
<従業員の教育・研修>
当社では、人事部門担当の執行役員が主導し、各地区人事部門が従業員の人権意識の向上に努めています。すべての役員・従業員が人権を尊重するために、階層別研修や新入社員研修をはじめとするさまざまな研修に人権尊重への理解を深めるためのプログラムを組み込んでいます。
従業員の教育・研修に関する取り組み
2024年度は、新入社員、中堅社員、新任管理職(部長・課長クラス)、約760人を対象に研修を延べ730時間実施しました。また、経営幹部を対象にした研修も実施しました。加えて、「ビジネスと人権」に関するeラーニングを開設し、全社員が受講するよう義務付けています。
教育・研修実績(2024年度)
| 対象 | 研修内容 | 受講者数 |
|---|---|---|
| 経営幹部 | 外部講師による「ビジネスと人権」に関する最新動向の共有 | 49人 |
| 新任部長クラス | 職場の責任者として求められる社会的な人権課題に関する認識の向上、ハラスメント防止及び発生時の対応など | 70人 |
| 新任課長クラス | 人権に関する最近のトピック、ハラスメント防止及び発生時の対応と管理職の役割など | 174人 |
| 中堅社員 (昇進者) |
人権に関する最近のトピック、業務と人権の関係など | 307人 |
| 新入社員 | 企業が人権について取り組む意味、人権全般に関する基礎知識 | 208人 |
| 希望者 | LGBTQ に対する理解促進 | 485人 |
| 全従業員 | LGBTQ に対する理解促進(eラーニング講座) | 9,259人 |
| ビジネスと人権(eラーニング講座) | 8,665人 | |
| コンプライアンス オフィサー /コードリーダー |
人権に関する最近のトピック、業務と人権の関係など | 156人 |
サプライヤー等への説明と対話
人権への取り組みを進めていくにあたり、さまざまな形でステークホルダーへの説明と対話を行うことは必要不可欠なものとされています。その意識を丁寧にわかりやすく説明することで意義を共有し協力を得ることに加え、対話によって自社の取り組みを振り返り、改善する機会となり得ると認識しております。
サプライヤー等への説明と対話に関する2024年度の取り組み
現時点ではまず主要なサプライヤーに対し人権を含めた弊社の調達の基本的な考え方や特に注意すべき法令等についての理解を促進しています。より広範囲のサプライヤーを対象として国際的な「ビジネスと人権」の基準を踏まえ遵守・協力を依頼したい事項について説明・対話を行っていく予定です。
(現時点で実施した特に留意すべき法令等対応のための説明と対話については、各項目にて記載)
<各種媒体を通じた発信>
当社は、自社の人権に対する基本理念を、人権方針及び支持・尊重する国際規範を通じて明らかにしており、それらの情報はサステナビリティレポート及び本ウェブサイトに掲載することで、開示・発信しています。
合わせて人権への取り組みに関する進捗状況や課題は、代表執行役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会および人権委員会にて報告することで、社内全体で共有しています。
また、同委員会での主な審議・報告事項及び人権に関する具体的な取り組みは、サステナビリティレポート及び本ウェブサイトに掲載することで、外部にも報告しています。
このように、理念及び具体的な取り組みいずれにおいても社内外への情報共有と発信を行うことで、自社の立ち位置と課題を明らかにしています。
<人権デュー・ディリジェンスの継続実施>
当社は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて事業活動が人権に与える負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう取り組んでいます。その実施方法については、経済協力開発機構(OECD)が発行している「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」(以下、OECDガイダンス)に基づいており、この取り組みを継続的に行っていくことにより、自社ビジネスが社会や環境に与えるリスクに対処することで、持続可能なサプライチェーンの構築の実現に努めています。
インパクト・リスクおよび機会の管理
<バリューチェーン上の重要リスクの特定・評価>
バリューチェーン上の特に重要な人権リスクについて、外部専門家の協力を得ながら、特定と評価、そしてその防止・軽減策の検討を推進しています。人権リスクの特定と評価では、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンが公表しているガイドラインを用いてリスクマップを作成し、リスクカテゴリーごとに深刻性と発生可能性を評価し優先順位付けしました。
(関連事項:リスクの調査評価[人権])
- 強制的な労働:処罰の脅威によって強制される労働や、自由意思で働く権利の侵害リスク。
- 紛争鉱物(タンタル、錫、タングステン、金)およびコバルト、マイカ(責任ある鉱物調達):紛争鉱物や責任ある鉱物調達に関連する児童労働や強制労働のリスク。
- 労働安全衛生(安全):劣悪な作業環境や危険な作業による負傷及び疾病のリスク。
- 消費者の安全と知る権利:消費者の心身の健康を害する製品・サービスの提供や不当表示のリスク。
- 救済へアクセスする権利:効果的な救済を受けるための適切なプロセスへのアクセスが確保されないリスク。
- ハラスメント:パワーハラスメントやセクシャルハラスメントによる就業環境の悪化リスク。
- 環境・気候変動に関する人権問題:企業活動による環境破壊や地域住民の権利侵害リスク。
- 児童労働:法律で定められた就業最低年齢を下回る児童による労働のリスク。
- 先住民族・地域住民の権利:企業活動による先住民族や地域住民の人権侵害リスク。
<優先度が高いリスクの報告[人権]>
第三者の専門家に意見/確認を頂きながら、リスクマップを基に優先度が高いリスクを決定し人権委員会にて報告、今後当社が取り組むべき重要課題として特定しました。今後も継続的にリスクの見直しを行う予定です。
<リスクの調査評価[人権]>
評価結果を基に優先順位を付け、リスク毎に是正・予防措置を検討中です。本リスク評価は、第三者の専門家に意見/確認を頂きながら実施されています。
(関連事項:バリューチェーン上の重要リスクの特定・評価、是正措置)
リスクの調査評価に関する2024年度の取り組み
アセアン主要拠点の人権アセスメント[人権]
2024年度にアセアンの主要生産拠点であるミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーション(MMPC)において人権アセスメントを実施しました。アセスメントの実施にあたっては、様々な属性を持つ従業員に対して評価機関とマンツーマンでのインタビューを行うなど、従業員の関与のもとでインパクトを評価しています。なお、社外の評価機関の起用により、アセスメントの客観性及び国際規範との整合性を確保しました。
(防止・軽減・是正処置については、関連事項:防止・軽減・是正措置[人権]にて記載)
- アセスメントの項目例:賃金(給与記録、残業代、不当な賃金控除)、児童労働(15歳未満の雇用)、強制労働(移動や退職の自由)、差別(ハラスメント)、健康と安全(トレーニングや教育、避難防災)、救済措置(相談窓口)などを、社外の評価機関との協議のうえで、ILO基準及び産業界イニシアチブを参考に評価
AI分析ツールの導入[サプライチェーン]
2024年度から、当社サプライチェーン上の人権デュー・ディリジェンスの一環としてAIを活用し、各国人権法令への抵触リスクのあるサプライチェーンの確認や、紛争鉱物等に関連するサプライヤーとの繋がりの可能性について分析・調査を開始しております。
AIを利用することにより、より網羅的にサプライチェーン全体を把握し、蓋然性を高めたうえで分析・調査を実施しています。
グローバルに広がるサプライチェーンにおいて、様々な部品・原材料・地域を網羅的に確認する必要があり、調査対象が膨大なものになるため、人権リスクの高さ・製品の輸出国・輸出車種・部品の種類・原材料等優先順位を付けた上で、サプライヤーと協力しながら調査を進めています。
2024年度は、当社主要サプライヤー約800社との取引を対象に、AI分析を実施し、155社に書面での調査協力を依頼いたしました。
サプライヤーからの回答内容を確認した結果、一定数のサプライヤーについて、追加調査が必要と判断し、直接ヒアリングでの調査を実施し、追加調査が必要なサプライヤーについては継続モニタリングを実施中です。今後も継続的にモニタリングを実施し、人権デュー・ディリジェンス(DD)の取組を拡大していくことで、人権尊重の取り組みの強化を図り、人権課題のリスク低減を目指しています。
負の影響への対応
防止・軽減・是正措置
<サプライヤーCSRガイドライン[サプライチェーン]>
当社は、強制的な労働や紛争鉱物及びコバルト、マイカ等のリスクに対応し、サプライチェーン全体での持続的な成長を図るために、「サプライチェーンCSRガイドライン」を制定し、全ての取引先と共有の上、一体となってCSRに取り組んでいます。
当ガイドラインの遵守は、当社の調達活動における優先事項であるため、取引先説明会などの場で、当社役員がサプライチェーン全体に対して徹底を要請しています。
本ガイドラインは三菱自動車の人権方針を踏まえて差別撤廃や児童労働・強制労働の禁止など人権尊重の項目を定め、取引先に対して人権に配慮した取り組みを要請するとともに、「サプライヤー合意確認書」を取引先に提出をお願いしています。新規取引先に対しては、これらの書類を提出いただいた上で取引を開始し、その後も合意状況を継続的に確認することで実効性の担保を図っています。
このガイドラインは、当社の主要海外拠点である、ミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)、ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)、ミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーション(MMPC)でも同様の取り組みを展開しています。
サプライチェーンマネジメントにおいて、取引先への適切な情報提供や双方向コミュニケーションは欠かせません。当社は毎年、年度末に次年度に向けた調達方針の説明会を開催しており、約300社の取引先に参加いただいています。また、取引先約180社の自主組織である「三菱自動車協力会」が毎年実施している取引先経営幹部と当社幹部の個別懇談会(1回あたり20社程度の小規模懇談会、計9回開催)を開催し、経営者レベルによる密接なコミュニケーションを図っています。
「サプライヤーCSRガイドライン」にもとづくマネジメントにより、取引先との双方向のコミュニケーションを図っています。本ガイドラインは三菱自動車の人権方針を踏まえて差別撤廃や児童労働・強制労働の禁止など人権尊重の項目を定め、取引先に対して人権に配慮した取り組みを要請するとともに、「サプライヤー合意確認書」を取引先から受領することにより、その実効性を高めています。
防止・軽減・是正措置に関する2024年度の取り組み
アセアン主要拠点への人権アセスメント[人権]
<サプライヤーCSRガイドライン[サプライチェーン]>
前述の通り、2024年度にアセアンの主要生産拠点であるミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーション(MMPC)において人権アセスメントを実施しました。アセスメントの結果、事業及び従業員の人権に重要なインパクトをもたらす侵害事項はありませんでしたが、アセスメントの結果まとめ、改善を要する事項とその実行部門の選定、実施状況のモニタリング、サステナビリティ委員会への報告を通じ、定期的な状況の確認を行い、それを踏まえた仕組みの見直しを行うことで人権リスクの低減に取り組んでいます。
また、これらの取り組みについては、今後グループ内でのナレッジ共有、同様の事態が発生するのを予防する参考知識として共有することを検討しています。
今後はさらに人権アセスメントの対象を広げ、それによって特定したリスクやそれに対する防止・軽減策の検討に加え、防止・軽減策のモニタリングと情報開示を推進する予定です。(本件の人権アセスメントについては、関連事項:リスクの調査評価[人権]にて記載)
第三者評価によるサプライチェーンでのCSRの向上[サプライチェーン]
お取引先におけるCSR活動をレベルアップいただくことを目的に、第三者により「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資源調達」の4分野に関わるCSR評価を実施しています。継続して評価受審取引先を拡大しつつ、既に受審済みの取引先(発注金額ベースで全体の約9割)の評価スコアの向上に注力しています。
ガイドライン及び対策強化、監査及び現地視察についての検討[サプライチェーン]
「サプライヤーCSRガイドライン」について。必要な事項を確認後、規定事項の拡充を行った改訂版を発行することを検討しております。
また、EVバッテリーの原材料鉱物のサプライチェーン上における人権リスクの予防・是正に向けた対応も強化する予定です。
人権リスクが高いとされたサプライヤーへの監査および現地視察の重要性についても認識しており、今後素材・原材料や精錬所レベルのTier Nのサプライヤーに対して、どのように取組むべきかを検討しています。
是正措置
OECDガイダンスにおいて、是正措置とは人権への負の影響に対する救済、または負の影響を弱める・修復するような実質的な成果のことを指します。当社では2024年度から本格的に人権デュー・ディリジェンスを開始したため、今後具体的なプロセスを策定する予定です。
また今後是正措置を実施した場合、ほかの開示事項と同じように、サステナビリティレポートおよび本ウェブサイトに掲載することで、開示・発信致します。
レビュー(個別課題のフォローアップ/全体の振り返り)
人権への取り組みは、継続的・反復的に行われるものであるため、個別の人権に関わる課題への取り組み内容とその成果に対するフォローアップや、マネジメント体制の妥当性に対する振り返りはOECDガイダンスにおいて、非常に重要であるとされています。またこうしたレビューでは、ステークホルダーへのエンゲージメントや、国内および現地法規制の改正、国際水準やガイドラインの改定等の反映が必要不可欠です。
当社では2024年度から本格的に人権デュー・ディリジェンスを開始したため、開示・発信方法を含めて、具体的なプロセスの検討を今後行う予定です。
また今後レビューを実施した場合、ほかの開示事項と同じように、サステナビリティレポートおよび本ウェブサイトに掲載することで、開示・発信致します。
情報開示・コミュニケーション
各国・地域におけるデュー・ディリジェンスの報告義務や、サステナビリティ報告に関する国際基準を考慮し、情報開示要請に適切に対応するべく、防止・軽減措置の開示を含む情報開示の強化を検討しています。当社「サステナビリティレポート」による年次での開示に加え、必要に応じて当社ウェブサイトにおける適時開示を通して透明性を確保する予定です。
モニタリング
防止・軽減措置について、今後モニタリングを継続・拡大予定です。
苦情処理メカニズム
当社が人権に与える負の影響を引き起こした、直接的または間接的に助長した、事業やサービスが取引関係を通じて人権への負の影響と直接関連したことが明らかになった場合、社内外のしかるべき手続きを通じて、その救済に取り組みます。
対話救済プラットフォーム
JaCERは「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して非司法的な苦情処理プラットフォームである「対話救済プラットフォーム」を提供し、専門的な立場から会員企業の苦情処理の支援・推進を目指す組織です。バリューチェーン上の全てのステークホルダーが通報出来、JaCERの支援により苦情処理メカニズムの正当性の担保と苦情処理の実効性・効率性の向上を図ることで、対話・救済に努めています。
三菱自動車グローバル内部通報窓口 /社内相談窓口(社員相談室) /MMCほっとライン
社内で人権にかかわる問題が発生した場合に迅速に対応するため、社内外に相談窓口(ヘルプライン)及び多言語での対応が可能なグローバル内部通報窓口を設け、従業員から通報や相談を受け付ける体制を整えています。グローバル内部通報窓口では、当社及び主要関係会社の従業員からの通報に対応するために、専門会社が一次受付を行う窓口を14カ国に設置し、計13言語での受付を可能としています。
お客様相談センター
お客様に対しては「お客様相談センター」を設けております。この窓口はお客様からの声を直接承る窓口として全国のお客様からのお車の購入や取り扱いに関するお問い合わせ、ご意見・ご要望などあらゆるご相談に対し取り組んでおり、人権に関わるご意見・ご要望についてもこちらで承っています。
お取引先様相談窓口
取引先に対しては「お取引先様相談窓口」を窓口として、人権にかかわる通報や相談を受け付けています。この窓口は経済産業省策定の「自動車産業適正取引ガイドライン」に則した適正取引を推進する取り組みとして、当社調達部門の取引先を対象としており、この窓口を通じ、取引先よりご意見やご指摘をいただき、当社の調達活動における法令違反や不正・不当行為、人権侵害など、コンプライアンスの問題や懸念を早期に発見、迅速な改善につなげることで、より一層の適正取引の確保に努めています。
これらの窓口では秘密保持と利用者の匿名性を担保しており、通報や相談を行った者が不利益を受けることはありません。社内調査にとどまらず、取引先企業内での調査が必要と判断した場合は、取引先のコンプライアンス担当者と情報を共有・統制し、通報者探しや報復などの禁止行為を事前合意のうえで解決に向け連携対応します。また、人権侵害やその疑いがあった場合の対応・是正措置の内容は、適時、当社ウェブサイトで開示するとともに、サステナビリティレポートに掲載する予定です。
| 窓口名 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 対話救済プラットフォーム | バリューチェーン上のすべてのステークホルダー | 一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が一次窓口 |
| お客様相談センター | お客様 | 三菱自動車お客様相談センターが対応 |
| お取引先相談窓口 | 当社調達部門の取引先 | コンプライアンス部門が一次受付 |
| 三菱自動車グローバル内部通報窓口 | 国内外のグループ従業員 | 専門会社が一次受付 14カ国に窓口を設置、13言語に対応 |
| 社内相談窓口(社員相談室) | 当社および国内関係会社従業員 (退職者含む) |
コンプライアンス部門が対応 |
| MMCほっとライン | 当社および国内関係会社従業員 (退職者含む) |
外部弁護士が対応 |
苦情処理メカニズムに関する2024年度の取り組み
一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)への加盟[人権][サプライチェーン]
バリューチェーン上のすべてのステークホルダー(含む社外のステークホルダー)が通報可能なグリーバンスメカニズムの整備を目指し、当社は一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加盟致しました。
外部イニシアチブへの参画
東京人権啓発企業連絡会
三菱人権啓発連絡会
これらのイニシアチブで得た最新情報を、人権啓発活動や社内研修に活用しています。
以上が、三菱自動車の人権への取り組み内容です。こうした取り組みにより、社会の良き一員として持続可能な成長の実現に向け活動を続けていきます。