人権への取り組み

トップメッセージ

「人権尊重の取り組みを引き続き強化」

三菱自動車工業株式会社 取締役 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤 隆雄

三菱自動車工業株式会社
取締役
代表執行役社長
兼 最高経営責任者
加藤 隆雄

グローバルに事業を展開し持続的に成長するため、また企業の社会的責任としても、人権尊重の取り組みが不可欠です。当社は国連が提唱する「人権・労働・環境・腐敗防止」の4分野・10原則についての「国連グローバル・コンパクト」への支持を表明するとともに、その参加企業として、「国際人権章典」「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際的な規範や基準を支持、尊重しています。
また、当社グループでは、「人権方針」で、差別の禁止や不当な労働慣行の排除などを示しています。当社は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて、当社およびグループ会社での人権アセスメントを進め、事業活動が人権に与える負の影響を特定、確認するとともに、迅速な改善を図ることにより、人権侵害の防止強化に取り組んでいます。
サプライチェーンにおいても人権尊重の取り組みを促進するため、取引先に「サプライヤーCSRガイドライン」に合意いただくとともに、第三者評価機関による取引先へのCSRアセスメントなどを通じて状況把握に努めています。自動車産業の調達先の裾野は大変広く、かつ複雑であることから、直接の当社取引先以外での原材料の調達や部品生産において児童労働、強制労働などの潜在リスクが懸念されます。このようなリスクの排除に向け、取引先と協力し、さらなる人権侵害防止の強化に取り組みます。また、環境問題が直接的・間接的に人権へ影響することから、気候変動対策・資源循環・環境汚染防止などの環境保全の取り組みを強化しています。

基本的な考え方

三菱自動車は、人権の尊重が事業活動の基本であるとの考えのもと国連が提唱する「人権・労働・環境・腐敗防止」の4分野・10原則についての「国連グローバル・コンパクト※1」への支持を表明しています。その参加企業として、「国際人権章典※2」、「ビジネスと人権に関する指導原則※3」、「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言※4」、「OECD多国籍企業行動指針」などの国際的な規範や基準を支持、尊重しています。今後も「国連グローバル・コンパクト」の10原則にもとづき、社会の良き一員として持続可能な成長の実現に向け活動を続けていきます。
当社はステークホルダーの人権を尊重した事業活動を行うことを目的として、「人権方針」を専門家との協議及び経営会議の承認を経て制定しています。本方針では、人権に関する国際的な規範や基準を支持・尊重すること、遵守すべきことなどの基本事項及び人権に与える負の影響の防止・低減、救済措置、役員・従業員教育の実施などの具体的な取り組みについて定めています。更に、本方針は英語に翻訳し、国内外の当社グループ会社の全従業員がウェブサイトにて閲覧できるようにしています。
また、各国において、企業に対して人権の取組みを求める法規の制定が進み、サプライチェーン上の人権リスク対応の必要性が急速に高まっており、これら法規に対して適時適切な対応ができない場合には、法令違反のみならず、社会的信用の低下によるブランド・イメージが毀損し、生産・開発・購買・営業等の事業活動にも影響し、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。 具体的には、ヨーロッパを中心にバッテリーの製造過程におけるデュー・ディリジェンスの法制化に向けた動きなど、自動車産業においてもより広範で複雑な事項への取り組みが求められるようになっています。 これらの要請に適切に対応するべく、当社は人権方針の改定を含むデュー・ディリジェンス方針の整備に向けて対応中です。
また、三菱自動車グローバル行動規範における 「人権と多様性の尊重、機会平等」では、人権を尊重するとともに、取引先、お客様、役員・従業員、地域社会の多様性を尊重し、差別や報復、いやがらせは、どのような形・程度にせよ容認しないことを定めています。

  1. 国連グローバル・コンパクトの定める4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)10原則は、いずれも普遍的な価値として国際社会で認められており、「人権擁護の支持・尊重」、「強制労働の排除」、「児童労働の廃止」等が盛り込まれている。
  2. 「国際人権章典」は、「世界人権宣言」、「市民的、政治的権利に関する国際規約」、及び「経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約」の総称。
  3. 「国連のビジネスと人権に関する指導原則」は、ハーバード大学ジョン・ラギー教授により国連人権理事会に提出され、全会一致で承認を受けた「国際連合『保護、尊重及び救済』枠組」(2008年)を具体化するため、2011年に策定された原則。企業が人権問題に取り組む際に重要とされる人権デュー・ディリジェンスの手順等についても示されている。
  4. 「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」には、「結社の自由及び団体交渉権」、「強制労働の禁止」、「児童労働の実効的な廃止」、「雇用及び職業における差別の排除」が謳われている。

人権方針

当社は人権方針において、以下の内容および遵守事項、取り組み事項を規定しています。

  • 三菱自動車は、人権尊重の取り組みを、社会的責任を果たしていく上で不可欠な要素であると認識します。すべての役員・従業員はこの人権方針を遵守します。
  • 三菱自動車は、企業ミッション及びグローバル行動規範を踏まえ、私たちの事業活動において、基本的人権を尊重します。
  • 三菱自動車は、「国際人権章典」及び人権諸条約、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」及び諸基準、「ビジネスと人権に関する指導原則」、「国連グローバル・コンパクト」といった国際規範や基準を支持、尊重します。
  • 三菱自動車は、ステークホルダーとの関わりを通じて人権尊重の取り組みを推進します。
  • 三菱自動車は、事業活動を行うそれぞれの地域において、その国の国内法及び規制を遵守します。また、国際的に認められた人権と各国法の間に矛盾がある場合、私たちは、国際的な人権の原則を尊重するための方法を追求していきます。

遵守事項

  1. 差別の禁止

    三菱自動車は、人種、皮膚の色、国籍、民族、門地、性別、性的指向、性自認、年齢、障害の有無、言語、宗教などに基づく不当な差別やハラスメントを容認せず、多様性を尊重するとともに機会の均等に努めます。

  2. 不当な労働慣行の排除

    三菱自動車は、人身取引を含む奴隷労働や児童労働、強制労働といった不当な労働慣行を認めず、それらの排除に努めます。

  3. 結社の自由と労使の対話

    三菱自動車は、従業員が結社する権利を尊重します。また、従業員の代表、もしくは従業員と、誠実に対話・協議します。

  4. ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保

    三菱自動車は、役員・従業員への教育、生計が立てられる賃金、安全で健康的に働ける職場、適正な労働時間といった「ディーセント・ワーク」の確保に努めます。

  5. 地域社会との共生

    三菱自動車は、自らの事業活動が地域社会の人々に与える影響を理解し、多文化共生を図ります。

取り組み事項

<人権デュー・ディリジェンス>

三菱自動車は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて私たちの事業活動が人権に与える負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう取り組みます。

<救済措置>

三菱自動車が、人権に与える負の影響を引き起こした、あるいはこれに関与したことが明らかになった場合、社内外のしかるべき手続きを通じて、その救済に取り組みます。

<透明性及び説明責任の確保>

三菱自動車は、事業活動の中で本方針が定着するよう、すべての役員・従業員に対して適切な教育や研修を行ないます。また、当社グループ企業に対して本方針の遵守を徹底し、お取引先には本方針を踏まえた「サプライヤーCSRガイドライン」を遵守いただくことを要請していきます。
三菱自動車は、人権尊重の取り組みについて、透明性及び説明責任を確保するため、ウェブサイト等で公開します。

人権方針の遵守

三菱自動車では、12月10日の“世界人権デー ”に合わせて、執行役社長が全役員・従業員に向けて人権尊重に関するメッセージを例年発信し、誠実な言動と意識向上の重要性について伝えるとともに、人権方針について啓発を行い、 人権尊重の取り組みの重要性について周知しています。
人権の尊重を推進及び実現するにあたり、当社が掲げる方針や活動は以下のとおりです。

  1. 差別の禁止

    当社は、人種、皮膚の色、国籍、民族、門地、性別、性的指向、性自認、年齢、障がいの有無、言語、宗教などにもとづく不当な差別やハラスメントを容認せず、多様性を尊重するとともに機会の均等に努めることを全役員・従業員に求めています。
    また、多様性の重要性について社内研修でも取り上げ、様々な価値観の違いを認め、協働することを促しています。

  2. 不当な労働慣行の排除

    当社は、人身取引を含む奴隷労働や児童労働、強制労働といったあらゆる不当な労働慣行を容認せず、それらの排除に努めています。
    具体的には、雇用契約締結時における法定要件を満たすための年齢確認を実施しています。また、採用に係る費用や手数料を、応募者や採用した従業員に請求することはありません。
    給与明細には法定控除を明記し不当な控除を行わず、定期的に全額を支払っています。
    加えて、従業員に対してはパスポートなどの身分証明書の留置や移動の禁止を行わず、従業員寮への入退寮についても従業員の自由な選択にもとづいています。

  3. 結社の自由と労使の対話

    当社は、従業員が結社する権利を尊重し、従業員との誠実な対話を行うことで、様々な課題の解決に努めています。
    労働組合との間で締結している労働協約においても、団体交渉を含む正当な組合活動の自由を認め、この活動を理由に労働条件そのほかについて不利益な取り扱いをしないことを明記しています。

  4. ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保

    当社は、ディーセント・ワークの確保のため、各国の法令を遵守することに加え、国際的規範(「国際人権章典」や「労働における基本原則及び権利に関するILO宣言」など)に準拠した人権尊重の実践に取り組んでいます。
    具体的には、社員が安定した生活を維持できる賃金水準を確保しながら、成果を発揮した社員がより高く処遇される仕組みとすることで、社員の意欲向上、能力向上を図ることができるよう人事制度を設計しています。
    そして、これらを適切に評価できるよう、毎年労使交渉を開催し、労使合意のうえで必要に応じた改定・見直しを実施しています

  5. 地域社会との共生

    当社は、従業員一人ひとりの持つ技術やノウハウ・製品を活用した継続的な社会貢献に取り組むことで地域社会との共生を図っています。

  6. 業務・投資における人権配慮

    三菱自動車は、従業員や地域の皆様との相互理解にもと づく良好な関係は持続可能な当社事業に不可欠であると考 え、事業所や関連施設を開設する際は、国や地域の慣習、 宗教を含む文化的価値観などに配慮しています。

  7. サプライチェーンへの配慮

    当社は、取引先に対する人権侵害を発生させないことな どを含めた適正取引を行っており、取引価格や納期を各取 引先と十分協議のうえ決定しています。
    加えて、「サプライヤー CSRガイドライン」にもとづくマネ ジメントにより、取引先との双方向のコミュニケーションを 図っています。
    本ガイドラインには差別撤廃や児童労働・強制労働の 禁止など人権尊重の項目を定め、取引先に対して人権に配 慮した取り組みを要請するとともに、「サプライヤー合意確認 書」を取引先から受領することにより、その実効性を高めて います。
    また、取引先に受審いただいたCSR第三者評価の中で 「労働と人権」について評価し、評価にもとづき、必要に応 じてCSR第三者評価向上に向けた改善を要請しています。 加えて、AI分析ツールを活用し、サプライチェーン上の人権 リスクを分析し、これらのリスクが判明した場合は改善を行 い、WEBサイトにて公開していきます。

  8. 販売会社での取り組み

    販売会社では、従業員の安全や健康に配慮した職場環 境の整備に取り組み、人権侵害の行為を禁止しています。


当社が制定、支持、尊重している規範

マネジメント体制

当社における人権尊重の活動は、サステナビリティ部門、人事部門、購買部門、管理部門などが中心となり取り組んでいます。また、2024年11月に代表執行役社長兼 最高経営責任者を委員長とする人権委員会を設置し、人権に特化した主要事項に関して報告・協議するとともに、重要事項に関しては取締役会で審議・報告する体制としています。審議・報告された内容については、人権委員会委員が担当部門へ共有のうえ、社内外における人権尊重に関する取り組みを推進しています。
加えて、当社ではバリューチェーンにおける人権侵害を企業存続にかかわるリスクと捉え、内部統制委員会における全社リスク管理の中に統合し、潜在的影響度が大きく、かつ緊急性の高い優先リスクの一つとして位置づけ、適切に管理しています。
社内の啓発推進体制としては、2023年度に経営幹部を対象に「ビジネスと人権」をテーマとした研修を外部講師を招いて実施したほか、人事部門担当の執行役員が主導し、人権啓発教育を推進しています。人権啓発教育の一環として、各種研修プログラムに人権をテーマとした共通の資料を組み入れ、各地区人事部門が従業員の人権意識の向上に努めています。また、当社が加盟している東京人権啓発企業連絡会、三菱人権啓発連絡会の各種行事やその他外部団体が主催する大会・研修会に参加しています(2023年度研修参加実績 延べ83日間)。これらへの参加を通じて得た最新情報も活用し、人権啓発活動に取り組むとともに、そこで得た知見を社内研修などに活用しています。

人権デュー・ディリジェンス

当社は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて事業活動が人権に与える負の影響を特定し、その防止、又は軽減を図るよう取り組んでいます。 当社の従業員は当社が持続的に成長し、企業価値の向上を実現していくための重要なステークホルダーであり、従業員の尊厳、基本的な権利を損うことは、人材戦略を阻害するだけでなく、 エンゲージメントの低下を誘引します。
更には、当社の製品や品質にも重大な悪影響をもたらし、お客様に危険を及ぼす恐れがあることから、当社は労働条件、健康と安全などの従業員の人権が、自社の事業活動及びステークホルダーにとってインパクトの大きなリスク要因であると認識しています。この認識のもと、当社は人権デュー・ディリジェンスの一環として、2021年度に本社及び国内3製作所、2022年度にアセアンの主要生産拠点であるミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)において人権アセスメント(※)を実施しました。アセスメントの実施にあたっては、様々な属性を持つ従業員に対して評価機関とマンツーマンでのインタビューを行うなど、従業員の関与のもとでインパクトを評価しています。なお、社外の評価機関の起用により、アセスメントの客観性及び国際規範との整合性を確保しました。
2021年度・2022年度に実施したアセスメントの結果、事業及び従業員の人権に重大なインパクトをもたらす侵害事項はありませんでした。
当社は人権アセスメント結果に対し、以下のプロセスを通じ、人権リスクの低減に取り組んでいます。

  1. アセスメントの結果まとめ
  2. 改善を要する事項とその実行部門の選定
  3. 実施状況のモニタリング
  4. サステナビリティ委員会への報告
  • アセスメントの項目例:賃金(給与記録、残業代、不当な賃金控除)、児童労働(15歳未満の雇用)、強制労働(移動や退職の自由)、差別(ハラスメント)、健康と安全(トレーニングや教育、避難防災)、救済措置(相談窓口)などを、社外の評価機関との協議のうえで、ILO基準および産業界イニシアチブを参考に評価
人権デュー・ディリジェンスのプロセス

サプライチェーンへの配慮

当社は、取引先に対する人権侵害を発生させないことなどを含めた適正取引を行っており、取引価格や納期を各取引先と十分協議のうえ決定しています。
加えて、「サプライヤーCSRガイドライン」にもとづくマネジメントにより、取引先との双方向のコミュニケーションを図っています。
本ガイドラインには差別撤廃や児童労働・強制労働の禁止など人権尊重の項目を定め、取引先に対して人権に配慮した取り組みを要請するとともに、「サプライヤー合意確認書」を取引先から受領することにより、その実効性を高めています。
また、取引先に受審いただいたCSR第三者評価の中で「労働と人権」について評価し、評価にもとづき、必要に応じてCSR第三者評価向上に向けた改善を要請しています。

救済へのアクセス

当社は、社内で人権にかかわる問題が発生した場合に迅速に対応するため、社内外に相談窓口(ヘルプライン)及び多言語での対応が可能なグローバル内部通報窓口を設け、従業員から通報や相談を受け付ける体制を整えています。グローバル内部通報窓口では、当社及び主要関係会社の従業員からの通報に対応するために、14カ国に窓口を設置し、計13言語での受付を可能としています。
また、お客様に対しては「お客様相談センター」を設け、取引先に対しては「お取引先様相談窓口」を窓口として、人権にかかわる通報や相談を受け付けています。
これらの窓口では秘密保持と利用者の匿名性を担保しており、通報や相談を行った者が不利益を受けることはありません。社内調査にとどまらず、取引先企業内での調査が必要と判断した場合は、取引先のコンプライアンス担当者と情報を共有・統制し、通報者探しや報復などの禁止行為を事前合意のうえで解決に向け連携対応します。