人権への取り組み

人権への取り組み

トップメッセージ

「人権尊重の取り組みを強化します」

三菱自動車工業株式会社 取締役 代表執行役社長 兼 最高経営責任者 加藤 隆雄

三菱自動車工業株式会社
取締役
代表執行役社長
兼 最高経営責任者
加藤 隆雄

グローバルに事業を展開し持続的に成長するためには、人権尊重の取り組みが不可欠であり、三菱自動車グループでは、「人権方針」で差別の禁止や不当な労働慣行の排除などを示しています。2021年度の本社および国内の3製作所に続き、2022年度はアセアンの主要生産拠点であるミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)において海外では初めての人権アセスメントを実施するなど、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて事業活動が人権に与える負の影響を特定し、その防止に取り組んでいます。
自動車産業の複雑なサプライチェーンにおける人権尊重の取り組みに関しては、お取引先様に「サプライヤー CSR調達ガイドライン」に合意いただくとともに、第三者評価機関によるお取引先様へのCSRアセスメントなどを通じて把握に努めています。原材料の調達や部品生産において深刻な人権侵害である児童労働、強制労働などにつきましては、関連するお取引先様と協力し、それらの排除に取り組んでいます。これからもサプライチェーンを含めた取り組みを強化します。

基本的な考え方

人権の尊重は、事業活動の基本であるとの考えのもと、三菱自動車は国連が提唱する「人権・労働・環境・腐敗防止」の4分野・10原則についての「国連グローバル・コンパクト※1」への支持を表明しています。その参加企業として、「国際人権章典※2」、「ビジネスと人権に関する指導原則※3」、「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言※4」、「OECD多国籍企業行動指針」などの国際的な規範や基準を支持、尊重しています。今後も「国連グローバル・コンパクト」の10原則にもとづき、社会の良き一員として持続可能な成長の実現に向け活動を続けていきます。
当社はステークホルダーの人権を尊重した事業活動を行うことを目的として、人権方針を専門家との協議および経営会議の承認を経て制定しています。本方針では、人権に関する国際的な規範や基準を支持・尊重すること、遵守すべきことなどの基本事項および人権に与える負の影響の防止・低減、救済措置、役員・従業員教育の実施などの具体的な取り組みについて定めています。更に、本方針は英語に翻訳し、国内外の当社グループ会社の全従業員がウェブサイトにて閲覧できるようにしています。
また、三菱自動車グローバル行動規範における 「人権と多様性の尊重、機会平等」では、人権を尊重するとともに、取引先、お客様、役員・従業員、地域社会の多様性を尊重し、差別や報復、いやがらせは、どのような形・程度にせよ容認しないことを定めています。

  1. 国連グローバル・コンパクトの定める4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)10原則は、いずれも普遍的な価値として国際社会で認められており、「人権擁護の支持・尊重」、「強制労働の排除」、「児童労働の廃止」等が盛り込まれている。
  2. 「国際人権章典」は、「世界人権宣言」、「市民的、政治的権利に関する国際規約」、及び「経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約」の総称。
  3. 「国連のビジネスと人権に関する指導原則」は、ハーバード大学ジョン・ラギー教授により国連人権理事会に提出され、全会一致で承認を受けた「国際連合『保護、尊重及び救済』枠組」(2008年)を具体化するため、2011年に策定された原則。企業が人権問題に取り組む際に重要とされる人権デュー・ディリジェンスの手順等についても示されている。
  4. 「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」には、「結社の自由及び団体交渉権」、「強制労働の禁止」、「児童労働の実効的な廃止」、「雇用及び職業における差別の排除」が謳われている。

人権方針

三菱自動車は人権方針において、以下の内容および遵守事項、取り組み事項を規定しています。

  • 三菱自動車は、人権尊重の取り組みを、社会的責任を果たしていく上で不可欠な要素であると認識します。すべての役員・従業員はこの人権方針を遵守します。
  • 三菱自動車は、企業ミッション及びグローバル行動規範を踏まえ、私たちの事業活動において、基本的人権を尊重します。
  • 三菱自動車は、「国際人権章典」及び人権諸条約、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」及び諸基準、「ビジネスと人権に関する指導原則」、「国連グローバル・コンパクト」といった国際規範や基準を支持、尊重します。
  • 三菱自動車は、ステークホルダーとの関わりを通じて人権尊重の取り組みを推進します。
  • 三菱自動車は、事業活動を行うそれぞれの地域において、その国の国内法及び規制を遵守します。また、国際的に認められた人権と各国法の間に矛盾がある場合、私たちは、国際的な人権の原則を尊重するための方法を追求していきます。

遵守事項

  1. 差別の禁止

    三菱自動車は、人種、皮膚の色、国籍、民族、門地、性別、性的指向、性自認、年齢、障害の有無、言語、宗教などに基づく不当な差別やハラスメントを容認せず、多様性を尊重するとともに機会の均等に努めます。

  2. 不当な労働慣行の排除

    三菱自動車は、人身取引を含む奴隷労働や児童労働、強制労働といった不当な労働慣行を認めず、それらの排除に努めます。

  3. 結社の自由と労使の対話

    三菱自動車は、従業員が結社する権利を尊重します。また、従業員の代表、もしくは従業員と、誠実に対話・協議します。

  4. ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確保

    三菱自動車は、役員・従業員への教育、生計が立てられる賃金、安全で健康的に働ける職場、適正な労働時間といった「ディーセント・ワーク」の確保に努めます。

  5. 地域社会との共生

    三菱自動車は、自らの事業活動が地域社会の人々に与える影響を理解し、多文化共生を図ります。

取り組み事項

<人権デュー・ディリジェンス>

三菱自動車は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて私たちの事業活動が人権に与える負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう取り組みます。

<救済措置>

三菱自動車が、人権に与える負の影響を引き起こした、あるいはこれに関与したことが明らかになった場合、社内外のしかるべき手続きを通じて、その救済に取り組みます。

<透明性及び説明責任の確保>

三菱自動車は、事業活動の中で本方針が定着するよう、すべての役員・従業員に対して適切な教育や研修を行ないます。また、当社グループ企業に対して本方針の遵守を徹底し、お取引先には本方針を踏まえた「サプライヤーCSRガイドライン」を遵守いただくことを要請していきます。
三菱自動車は、人権尊重の取り組みについて、透明性及び説明責任を確保するため、ウェブサイト等で公開します。

当社が制定、支持、尊重している規範

マネジメント体制

三菱自動車における人権尊重の活動は、サステナビリティ部門、人事部門、購買部門などが中心となり取り組んでいます。また、年に3回開催されるサステナビリティ委員会にサステナビリティ担当執行役が人権尊重の活動推進責任者として、人権に関するリスク評価の取り組み状況や諸課題への対応策について報告を行っています。報告された内容については、サステナビリティ委員会メンバーが担当部門へ共有のうえ、社内全体の人権尊重に関する取り組みを推進しています。
加えて、当社では人権侵害を企業存続にかかわるリスクと捉え、内部統制委員会における全社リスク管理の中に統合し、優先リスクの一つとして位置づけ、適切に管理しています。
社内の啓発推進体制としては、人事部門担当の執行役員が主導し、人権啓発教育を推進しています。人権啓発教育の一環として、各種研修プログラムに人権をテーマとした共通の資料を組み入れ、各地区人事部門が従業員の人権意識の向上に努めています。また、当社が加盟している東京人権啓発企業連絡会、三菱人権啓発連絡会の各種行事やその他外部団体が主催する大会・研修会に参加しています(2022年度研修参加実績 延べ約70日間)。これらへの参加を通じて得た最新情報も活用し、人権啓発活動に取り組むとともに、そこで得た知見を社内研修などに活用しています。

人権デュー・ディリジェンス

三菱自動車は、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを通じて事業活動が人権に与える負の影響を特定し、その防止、または軽減を図るよう取り組んでいます。 当社の従業員は重要なステークホルダーの一つであり、従業員の尊厳、基本的な権利を損うことは、エンゲージメントの低下を誘引し、当社の製品や品質に重大な悪影響をもたらす恐れがあります。
したがって、当社は労働条件、健康と安全などの従業員の人権が、当社の事業活動およびステークホルダーにとってインパクトの大きなリスクであると認識しています。この認識のもと、当社は人権デュー・ディリジェンスの一環として、2021年度に本社および国内3製作所、2022年度にアセアンの主要生産拠点であるミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)において人権アセスメント(※)を実施しました。社外の評価機関の起用により、アセスメントの客観性および国際規範との整合性を確保しました。アセスメントの実施にあたっては、さまざまな属性を持つ従業員に対して評価機関とマンツーマンでのインタビューを行うなど、従業員の関与のもとでインパクトを評価しています。
2022年度に実施したアセスメントの結果、MMThの従業員の人権については総じて良好な状態にあることが確認され、事業および従業員に重大なインパクトをもたらすものはありませんでした。
当社の人権アセスメントの活動では以下のプロセスを通じ、人権リスクの低減に取り組んでいます。

  1. アセスメントの結果まとめ
  2. 改善を要する事項とその実行部門の選定
  3. 実施状況のモニタリング
  4. サステナビリティ委員会への報告
  • アセスメントの項目例:賃金(給与記録、残業代、不当な賃金控除)、児童労働(15歳未満の雇用)、強制労働(移動や退職の自由)、差別(ハラスメント)、健康と安全(トレーニングや教育、避難防災)、救済措置(相談窓口)などを、社外の評価機関との協議のうえで、ILO基準および産業界イニシアチブを参考に評価
人権デュー・ディリジェンスのプロセス

サプライチェーンへの配慮

当社は、取引先に対する人権侵害を発生させないことなどを含めた適正取引を行っており、取引価格や納期を各取引先と十分協議のうえ決定しています。
加えて、「サプライヤーCSRガイドライン」にもとづくマネジメントにより、取引先との双方向のコミュニケーションを図っています。
本ガイドラインには差別撤廃や児童労働・強制労働の禁止など人権尊重の項目を定め、取引先に対して人権に配慮した取り組みを要請するとともに、「サプライヤー合意確認書」を取引先から受領することにより、その実効性を高めています。
また、取引先に受審いただいたCSR第三者評価の中で「労働と人権」ついて評価し、評価にもとづき、必要に応じた改善を要請しています。

救済へのアクセス

三菱自動車は、社内で人権にかかわる問題が発生した場合に迅速に対応するため、社内外に相談窓口(ヘルプライン)および多言語での対応が可能なグローバル内部通報窓口を設け、従業員から通報や相談を受け付ける体制を整えています。グローバル内部通報窓口では、当社および主要関係会社の従業員からの通報に対応するために、10カ国に窓口を設置し、計13言語での受付を可能としています。
また、お客様に対しては「お客様相談センター」を設け、取引先に対しては「お取引先様相談窓口」を窓口として、人権にかかわる通報や相談を受け付けています。
これらの窓口では秘密保持と利用者の匿名性を担保しており、通報や相談を行った者が不利益を受けることはありません。社内調査にとどまらず、取引先企業内での調査が必要と判断した場合は、取引先コンプライアンス担当者と連携し対応しますが、得られた情報から通報者探しをする事を固く禁じ、報復等の行為も行わない事を事前に合意したうえで、実施しています。