気候変動・エネルギー問題への対応

基本的な考え

世界中で熱波や干ばつ、大雨による洪水などの極端な気象現象による災害が相次いで発生しています。これらの極端現象をもたらしている最大要因が気候変動であり、CO2をはじめとする温室効果ガスの増加による地球温暖化が主な原因と考えられます。

パリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)など持続可能な社会の実現に向けた国際的な枠組みが進展するなか、2023年11~12月に開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)ではグローバル・ストックテイクが実施され、温室効果ガスを2019年比で2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要性が示されるなど、グローバルでCO2排出量削減に向けた取り組みが加速しています。

自動車は、調達から生産、走行、廃棄までのライフサイクルを通じてCO2を排出します。そのため、三菱自動車は経済、環境、人々に与えるインパクトを勘案し、「気候変動・エネルギー問題への対応」をマテリアリティとして特定しています。更に「環境計画パッケージ」では、当社が直接的に取り組む重要課題の一つと位置付け、2050年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルの実現を目指し、具体的な目標を設定して取り組んでいます。また、中期経営計画「Challenge 2025」では、「カーボンニュートラル対応促進」を主要な3つのChallengeの一つとして打ち出し、全社を挙げて取り組むテーマに位置付けました。

製品においては、当社独自のプラグインハイブリッド車(PHEV)と軽商用電気自動車を起点に、アライアンスの技術を活用しながら、電動化を推進し、各国・各地域のエネルギー事情やインフラ整備状況、お客様のニーズに応じた最適な電動車を積極的に投入していきます。また、電動化と並行して、内燃機関車の燃費技術向上に取り組みます。

事業活動においては、省エネルギー対策の強化、生産性向上技術の追及に加え、燃料転換や次世代生産技術の開発・導入を推進します。更に、太陽光発電設備の主要工場への導入を軸に再生可能エネルギーの利用拡大に取り組みます。

サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現するためには、原材料・部品の生産段階や製品を含めた物流領域のCO2排出量の削減が不可欠であり、取引先と連携して、CO2排出量の見える化と削減に向けた活動を推進していきます。また、製品の廃棄段階においては、低CO2材料の採用やリサイクルしやすい設計など、製品・材料のリサイクル推進に取り組みます。

これらの取り組みによっても最終的に削減しきれなかったCO2排出量については、様々な選択肢の中からオフセットを検討していきます。

加えて、当社の電動車の大容量バッテリーがエネルギーマネジメントや災害時の非常用電源に活用できることを生かして、気候変動の適応策にも取り組んでいきます。

今後、気候変動抑止に向けた企業への期待は更に高まることが予想されるため、より一層のCO2排出量削減を図るべく引き続き取り組みの強化に努めます。

サプライチェーン全体でのCO2排出量削減イメージ

  1. 新車と保有車を含む

カーボンニュートラル推進体制

当社は、サステナビリティ推進体制のもとで「気候変動・エネルギー問題への対応」を進めており、執行役社長を委員長とするサステナビリティ委員会にて、気候変動リスクと機会の評価や対応策などを審議するほか、「環境ターゲット 2030」の進捗状況・実績などを確認しています。
また、2050年までのサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を目指して、具体的な対応策を検討するとともに、中長期的な対応方針・目標などを立案するため、執行役副社長が議長を務めるカーボンニュートラル協議会をサステナビリティ委員会のもとに設置し、経営戦略・商品・生産・調達・物流など各領域を担当する執行役などをメンバーとしています。2023年度は各領域における具体的な方策の積み上げや、2030年度までのCO2排出見通しの試算を行い、「環境ターゲット2030」達成に向けた進捗を確認しました。

カーボンニュートラル推進体制(2024年4月時点)

  役割 開催頻度
サステナビリティ委員会 環境ターゲット2030の進捗状況のモニタリングなど 年3回
カーボンニュートラル協議会 2050年カーボンニュートラル実現に向けた中長期的な対応方針や目標の立案など 年3~4回
事業活動CO2削減推進分科会 事業活動領域におけるCO2削減の実行計画の立案、具体的な対策の推進など 年2回
TCFD検討チーム 気候変動リスク及び機会の特定・評価、シナリオ分析の検討など 適宜開催

電動車の開発・普及

当社は、「環境ターゲット2030」で掲げた「2030年までに新車からのCO2排出量を40%削減(2010年度比)」の達成に向け、走行時のCO2排出量が少ない電動車を「気候変動・エネルギー問題への対応」のコア技術と位置付け、重点的に開発を進めており、電動車の販売比率を2030年度までに50%、2035年度までに100%に引き上げることを目指しています。当社の強みであるプラグインハイブリッド車(PHEV)を軸に、ラインアップ拡充などによる電動車の普及とその社会的活用の促進を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます

電気自動車

電気自動車は、電力とモーターで走行するため、走行中にCO2などの排出ガスを一切出さないクルマです。
当社は、世界で初めて量産型の電気自動車『i-MiEV』を開発し、2009年に市場へ投入しました。『i-MiEV』は環境性能のみならず、静粛性や発進時から最大トルクを発生させる加速性能など、従来のガソリン車より高いパフォーマンスが評価されました。2011年に軽商用電気自動車の『ミニキャブ・ミーブ』、2012年には軽トラックの電気自動車『ミニキャブ・ミーブトラック』もラインアップに加わり、その技術はPHEVなど次世代の電動車の基礎となりました。
より生活に密着した場面での活躍が期待される軽の電気自動車のラインアップ拡充が、電動車普及の伴になると考え、2022年6月に軽電気自動車『eKクロス EV』の販売を開始し、2023年12月に軽商用電気自動車の新型『ミニキャブEV』を発売しました。今後も電気自動車の開発に力を入れ、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

当社の電動車開発

TOPICS

新型 軽商用電気自動車『ミニキャブEV』をインドネシアで発売

2023年12月に日本で発売した新型『ミニキャブEV』は、軽商用電気自動車として12年間で、約13千台(2023年10月末時点)の販売実績を持つ『ミニキャブ・ミーブ』をベースに同車の開発・メンテナンスで得られたノウハウを最大限に生かして大幅改良し、航続距離を先代モデル比で約35%増となる180km(WLTCモード)に延長するとともに、安全装備・機能装備の拡充を図りました。

また、当社は、現地生産合弁会社ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)において、『ミニキャブEV(現地名:L100 EV)』の生産を開始し、2024年2月にインドネシアでの販売を開始しました。

2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて各方面で脱炭素化の取り組みが加速し、物流関係や自治体など軽商用電気自動車の需要が一層高まっていることを受け、『ミニキャブEV』の導入により、商用でのラストワンマイルのCO2排出量削減に貢献します。

プラグインハイブリッド車(PHEV)

左:『エクリプス クロス』(PHEVモデル)及び
右:『アウトランダー』(PHEVモデル)

PHEVは、バッテリーに充電した電力とモーターで走行し、バッテリー残量が少なくなるとエンジンで発電して走行します。バッテリー容量による走行可能距離の制約といった心配がなく、電気自動車特有の力強い走行性能、高い静粛性、走行安定性を兼ね備えたクルマです。

当社はPHEVとして、2013年の『アウトランダーPHEV』に始まり、2020年に『エクリプス クロス』(PHEVモデル)、2021年に『アウトランダー』(PHEVモデル)を発売しました。搭載しているPHEVシステムは、通常の低・中速走行時には主にバッテリーの電力により走行し、バッテリー残量が低下すると、エンジンで発電してモーターとバッテリーに電力を供給しながら走行します。また、高速走行時には、エンジンの駆動力で走行し、モーターがアシストしながら走行します。このように走行状況に合わせて自動的に最適な走行モードに変更します。CO2排出量は従来のガソリン車と比較して大幅に低減され、高い環境性能を発揮します。

プラグインハイブリッド車(PHEV)が提供する価値

CO2排出量低減 航続距離 給電性能

(注)2025年時点における、実質CO2排出量の当社独自の評価。発電時のCO2排出量、生涯走行距離などによってLCA値は変動します。

生産から廃棄までの環境負荷をトータルして算出し評価するLCA(※4)の考え方で、当社は、PHEVシステムが今、最も地球環境に優しい電動システムであると考えています。

  1. HEV:Hybrid Electric Vehicleの略称。ハイブリッド電気自動車
  2. EV:Electric Vehicleの略称。電気自動車
  3. 走行時のCO2排出量には、充電する電気を発電する際に発生するCO2排出量を含みます
  4. LCA:Life Cycle Assessmentの略称。生産から廃棄までの環境負荷を算出して評価する方法

日常の通勤や買い物など、近距離の走行であれば、ガソリンを使わないで電気のみで走り続けることも可能です。また、モーターとエンジンの併用ができるのでバッテリー残量が少なくなるとエンジンで発電し、モーターで走り続けることで、航続距離が長くなります。

V2H(※5)充放電機器を経由してバッテリーの電力とエンジンでの発電を組み合わせれば、最大約12日分(※6)の電力の供給が可能です。災害時の非常用電源として使用することもできます。

  1. V2H:Vehicle to Homeの略称。機器を介してクルマに蓄えた電気を住宅へ給電することができる仕組み
  2. 『アウトランダー』(PHEVモデル)の場合。供給可能電力量は当社試算による(一般家庭での一日当たりの使用電力量を約10kWh/日として算出、V2H充放電機器などの変換効率は含みません)

ハイブリッド車(HEV)

当社のHEVシステムは、EVモード、シリーズハイブリッドモード、パラレルハイブリッドモード、回生モードで構成され、走行状況や駆動用バッテリー残量に応じてシステムが自動で最適な走行モードを選択して低燃費化するとともに、力強く気持ちのよいモータードライブを実現します。

発進時や低速域では、駆動用バッテリーからの電力でモーター駆動するEVモードによって、電気の力だけで走行し、登坂や加速時は、エンジンを発電用として動かして駆動用バッテリーの電力と合わせてモーターで走行するシリーズハイブリッドモード、高速域では、エンジンの動力で走行してモーターがアシストするパラレルハイブリッドモードに切り替わります。回生モードでは、減速時に回生ブレーキによって減速エネルギーを回収して電力変換し、駆動用バッテリーに蓄電します。

当社は、2023年度に『コルト』(HEVモデル)を欧州にて、『エクスパンダー』『エクスパンダー クロス』(HEVモデル)をタイにて販売開始しました。続いて、2024年度は新型『ASX』(HEVモデル)を欧州にて6月から販売開始しました。

TOPICS

新型『エクスパンダー』『エクスパンダー クロス』のHEVモデルをタイで販売開始『ミニキャブEV』をインドネシアで発売

2024年2月に販売を開始した『エクスパンダー』『エクスパンダー クロス』(HEVモデル)は、タイにおける生産・販売会社であるミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)のレムチャバン工場で生産しています。
PHEVから派生したHEVシステムによって電動車ならではの環境に優しく気持ちのよい走りを実現するとともに、FF方式の2WDをベースに、アクティブヨーコントロール(※7)をはじめとした独自の四輪制御技術による意のままで安全・安心な走り、多彩なドライブモードによる天候や路面状況に応じた最適な走りを提供します。また、HEVでありながら任意でEV走行を選択できるため、早朝の閑静な住宅街でエンジン音が気になる時など、シチュエーションに応じた走りを可能としました。

  1. アクティブヨーコントロール:左右輪間の制動力・駆動力差から生じるヨーモーメントを制御し、滑りやすい路面やコーナーリングなどにおいて、操縦性や安定性を高める機能
  • 『エクスパンダー』HEVモデル

  • 『エクスパンダー クロス』HEVモデル

電動車を活用した気候変動への適応策の推進

当社は、電気自動車やPHEVの大容量バッテリーや給電機能を生かして、エネルギーマネジメントやV2X(※8)、災害時の非常用電源への活用など、気候変動・エネルギー問題への適応策を、各国及び異業種と推進しています。

  1. V2X(Vehicle to X):自動車と様々なモノとの接続や相互連携を行う技術の総称

TOPICS

電動車のコネクティッド技術を活用したスマート充電サービスの実証事業を開始

当社、MCリテールエナジー株式会社(MCリテールエナジー)、Kaluza Ltd.(Kaluza)と三菱商事株式会社(三菱商事)の4社は、電動車のコネクティッド技術を活用した国内初となるスマート充電サービスの商用化に向けた実証事業を開始しました。
スマート充電サービスとは、社会全体のエネルギーコスト低減と電動車ユーザーにとって魅力的な充電環境の提供を目的としたサービスで、本実証事業で得られる成果は、本サービス開発に活用します。

実証事業の概要

当社が販売する『アウトランダー』(PHEVモデル)を保有するお客様(※9)対象に、三菱商事の出資先であるOVOグループのKaluzaが提供するEV充電制御プラットフォームを通じて、通常の家庭充電においてお客様がスマートフォンのアプリ上で指定した時間までに、電力市場価格などが安い時間帯に充電が自動で最適化されるサービスを提供します。
お客様は実証期間中、MCリテールエナジーが本サービスのために開発する実証専用の電力プランに加入することで、充電制御の結果に応じて充電コストを節約することができます。また、本サービスでは、Kaluzaのプラットフォームから当社のコネクティッドシステムを通じて、車両に対して直接の充電制御が可能となるため、通信機能が付いた充電設備(スマート充電設備)などが不要となります。

  1. 東京電力パワーグリッド株式会社又は中部電力パワーグリッド株式会社の電力供給区域にお住まいで、当社が提供するコネクティッドサービス「MITSUBISHI CONNECT」にご登録いただき、かつご自宅に普通充電器を設置している方が対象。

TOPICS

電動車用充電器と連携する2つのコンセプトの蓄電活用について実証試験を実施

使用済みバッテリーリユース実証設備

M-Tech Lab

電動車用の急速充電器及び双方向充電器と連携する2つのコンセプトの実証設備を、2023年1月に岡崎製作所のスマートグリッド実証実験装置M-Tech Lab(※10)内に設置し、実証試験を行っています。

どちらも使用済みバッテリーのモジュールを活用したもので、一つは、急速充電器の電源ラインに接続し、電動車に急速充電をする際に蓄電した電力を放電することで電力ピークを下げる蓄電システムです。もう一つは蓄電ユニットで、CHAdeMO(※11)規格の双方向充電器に接続し、電動車が出かけていてもこのユニットに蓄電することにより、効率的なエネルギーマネジメントが可能になります。将来的には蓄電設備メーカーと連携して、当社グループの販売会社の店舗などへの導入を目指していきます。

  1. M-Tech Lab:当社の使用済みバッテリー活用の最初期の取り組みとなるスマートグリッド実証用の試験装置で2012年4月に稼働開始
  2. CHAdeMO(チャデモ):2010年に日本が主導して規格化を実現した世界基準の電気自動車の急速充電方式

TOPICS

使用済みバッテリーを活用した可動式蓄電池の共同実証を開始

当社及び株式会社日立製作所(日立)は、電動車に搭載されているバッテリーのサーキュラーエコノミー実現をめざし、電動車の使用済みバッテリーを活用した可動式蓄電池「バッテリキューブ(※12)」の共同実証を2023年9月から開始しました。

左:バッテリキューブから給電している様子
右:バッテリキューブに搭載している使用済みバッテリー

本実証では、当社が販売するプラグインハイブリッド車『アウトランダー PHEV』の使用済みバッテリーをバッテリキューブに搭載し、その実用性を検証します。具体的には、広域災害などによる停電を想定し、株式会社日立ビルシステムのV2X(※13)システムと、バッテリキューブをCHAdeMO V2H(※14)コネクタで接続し、日立標準型エレベーター「アーバンエースHF」を、バッテリキューブからの給電で駆動します。これまで実績のあるV2H機能搭載の電動車からの給電に加え、バッテリキューブからの給電を組み合わせることで企業における災害発生時の、継続的なバックアップ電源確保への貢献をめざします。

当社と日立はそれぞれ、電動車の使用済みバッテリーのリユースとバッテリキューブの事業化を2024年度に開始することを目指しており、双方連携して企業や自治体などへのバッテリキューブ導入を推進していきます。また、再生可能エネルギーの有効活用に向けて、電動車やバッテリキューブと太陽光パネルなどを連動させるエネルギーマネジメントの共同実証も行う予定です。更に、電動車の使用済みバッテリーを再利用するだけでなく、その後の再資源化に至るまでの構想を検討し、電動車バッテリーにおけるサーキュラーエコノミーの実現を目指します。

  1. 「バッテリキューブ」:株式会社日立ハイテクの日本における登録商標
  2. 2V2X(Vehicle to X):自動車と様々なモノとの接続や相互連携を行う技術の総称。エネルギー分野においては、電気自動車と、住宅やビル、電力網(グリッド)などをつなぎ、電力の相互供給を行うことを可能にするV2Xシステムの実用化が進められている
  3. CHAdeMO V2H:日本のCHAdeMO協議会が標準規格として提案する急速充電方式「CHAdeMO(チャデモ)」のV2H(Vehicle to Home)用規格

TOPICS

プラグインハイブリッド車(PHEV)の使用済みバッテリーを活用した自律型街路灯の実証実験

  • 当社とMIRAI-LABO株式会社は、PHEVの使用済みバッテリーのリユースに取り組むとともに、再生可能エネルギーの利用拡大による脱炭素化に寄与するべく、PHEVの使用済みバッテリーを活用した自律型街路灯の開発を進めています。自律型街路灯は、日中に太陽光で発電した電力をPHEVの使用済みバッテリーに蓄電し、夜間はその電力でLED照明を点灯させるもので、外部からの給電を必要としないため、災害時や停電発生時にも消灯することなく街路灯の機能を発揮します。使用済みバッテリーを活用することで、新品バッテリーを使用した街路灯と比べてバッテリー製造時のCO2排出量を抑制できるほか、太陽光発電による電力の使用により、稼働時のCO2排出量はゼロとなります。

    2022~2023年度に岡崎製作所・水島製作所・京都製作所・十勝研究所の所内に、計24基の自律型街路灯を設置して実証実験を開始しました。使用時のバッテリーなどのデータを取得して、不日照日数などの実用性の検証を行っており、2024年度中の市販化を目指しています。

  • 自律型街路灯設置数(2024年4月現在)

    場所 設置数
    岡崎製作所 15基
    水島製作所 2基
    京都製作所 4基
    十勝研究所 3基
    24基

燃費向上技術の開発

当社は、燃料消費量の低減とエネルギー効率の向上のため、継続してパワートレインの技術開発を推進しています。

アイドリングストップ装置「AS&G(Auto Stop & Go)」

「MIVEC」は、低燃費を追求した可変バルブタイミング機構です。吸気バルブリフトを運転条件に合わせ連続的に変化させ、吸入時のエネルギー損失を低減し、燃費向上を図っています。

減速エネルギー回生(発電制御)

減速時の回生エネルギーを利用した発電によってバッテリーを集中充電することにより、エンジンでの発電を抑制し、燃費向上を図っています。

HYBRIDシステム

『eKクロス』搭載のHYBRIDシステム

eKシリーズ(除く、『eKワゴン』)は、12V BSG(※15)HYBRIDシステムを採用しています。減速時の回生エネルギーを利用して発電した電力をリチウムイオンバッテリーに効率よく充電し、加速時にモーターでエンジンをアシストすることで、トルクフルで低燃費な走りとスムーズなエンジン停止・発進を実現します。
新型『アウトランダー』では48V BSG HYBRIDシステムの仕様を採用し、減速時のエネルギーでより多くの電力を発電しています。

  1. BSG:Belt driven Starter Generatorの略称。
    発電機にモーター機能を追加し、ベルト駆動によるエンジンの始動及び駆動力アシストが可能

可変バルブタイミング機構
「MIVEC(Mitsubishi Innovative Value timing Electronic Control System)

MIVECエンジン

「MIVEC」は、低燃費を追求した可変バルブタイミング機構です。吸気バルブリフトを運転条件に合わせ連続的に変化させ、吸入時のエネルギー損失を低減し、燃費向上を図っています。

ガソリン直噴ターボエンジン

ガソリン直噴ターボエンジン(4B40型)

『エクリプス クロス』には1.5Lダウンサイジング ガソリン直噴ターボエンジン(4B40型)を採用しています。運転状態により筒内噴射と吸気ポート噴射をきめ細かく制御することで、優れた燃費性能とクリーンな排出ガス特性を実現しています。更に、排気マニフォールド一体型シリンダーヘッド、吸排気MIVEC、電動ウエストゲートアクチュエーター付小型ターボチャージャーを組み合わせて、最適な過給圧制御を行い、ドライバーの要求どおりに反応させることで、快適で力強い走りを提供します。

新型『アウトランダー』には、この4B40型エンジンを改良した次世代型の1.5Lダウンサイジング ガソリン直噴ターボエンジンの仕様を追加し搭載しています。更に48V BSGを採用したHYBRIDシステムと組み合わせ、発進時や加速時にモーターでアシストすることにより、性能向上と低燃費を高次元で両立させました。

クリーンディーゼルターボエンジン

2023年7月、タイで世界初披露した新型『トライトン』には、新開発した2.4Lクリーンディーゼルターボエンジンを搭載しています。シリンダーブロック、ピストン、コンロッドなど主要な部品を新設計により最適な形状とすることで、エンジンの軽量化と摩擦による機械損失を低減、更に高圧燃料噴射システムを新世代化し、高性能を維持しつつ、優れた燃費性能とクリーンな排出ガス特性を実現しています。
2024年2月には、2ステージターボチャージャーを搭載した高出力版エンジンを追加しました。最高出力150kW、最大トルク470N・mを発揮して、パワフルな加速と、低中速からレスポンス良く立ち上がる豊かなトルクを実現しています。

電動車用新型ガソリンエンジン

電動車用1.6Lガソリンエンジン

2024年2月、タイで発売を開始した『エクスパンダー』及び『エクスパンダー クロス』のHEVモデルには、新開発の電動車用1.6Lガソリンエンジンを搭載しています。高膨張比サイクル(アトキンソンサイクル(※16))化することで燃焼効率を向上し、当社のエンジンとして初めて電動ウォーターポンプを採用することで補機駆動ベルトを廃止し、機械損失を低減しています。

  1. アトキンソンサイクル:圧縮比よりも膨張比を高くすることにより排熱を少なくし、熱効率を改善する内燃機関の一種

TOPICS

2.4L クリーンディーゼルターボエンジンの搭載

『トライトン』

2024年2月、当社は市場の多様性に応えるため、2023年7月にタイで発売したトライトンに高出力版エンジンを追加しました。
2ステージターボチャージャーを搭載した新型クリーンディーゼルエンジンは、最高出力150kW、最大トルク470N・mを発揮。パワフルな加速フィーリングと、低中速からレスポンス良く立ち上がる豊かなトルクを実現しています。
加えて「尿素SCR(※17)システム」を採用し、尿素水溶液である「AdBlue®(※18)」を使ってディーゼルエンジンが排出する窒素酸化物(NOx)を浄化するこのシステムにより、低燃費と高出力を両立し、クリーンな排出ガスを実現します。

  1. SCR: Selective Catalytic Reductionの略称。選択還元触媒
  2. AdBlue®:ドイツ自動車工業会(VDA)の登録商標

2.4L クリーンディーゼルターボエンジン

カーボンニュートラルに向けた事業活動の取り組み

当社は、カーボンニュートラルの実現に向けて、エネルギーを消費する「需要サイド」及びエネルギーを創出・調達する「供給サイド」の両面からアプローチしています。計画的な活動推進のため、カーボンニュートラルに向けた中長期ロードマップを策定し、将来技術の開発や生産プロセスの改善、再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでいます。

カーボンニュートラルに向けた
「7つの切り口」

また、サステナビリティ委員会の下部会議体として、国内・海外の生産・開発・販売会社が参画したCO2削減推進分科会を設置し、当社グループ全体で事業活動のカーボンニュートラルの実現に向け活動しています。分科会では、活動計画の進捗状況やCO2排出量実績などの情報を共有するとともに、削減施策の立案、将来技術の検討、エネルギー構成の将来像などについて協議しています。

再生可能エネルギーの導入

当社は、各拠点のエネルギー事情に応じて、自社内での再生可能エネルギー発電の導入とエネルギー供給事業者からの再生可能エネルギーの調達との双方の観点から、事業活動への再生可能エネルギーの導入を進めています。
特に太陽光発電は、カーボンニュートラルの実現に寄与する重要な取り組みと位置付けており、各拠点にて導入を進めています。また、2023年度から、国内製作所の一部の電力について、再生可能エネルギー由来のCO2フリー電力の導入を開始しました。

TOPICS

太陽光発電設備の稼働開始(工場屋根)

MMThの第三工場の太陽光発電設備

2023年度には、ミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーション(MMPC)に2.8MW、エイシアン・トランスミッション・コーポレーション(ATC)に1.7MW、水島製作所に1.3MWの太陽光パネルを新たに導入しました。また、ミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)に5.6MW、エムエムティエイチ・エンジン・カンパニー・リミテッド(MEC)に2.0MW、ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)に5.6MWの太陽光パネルを追加し、グループ合計で約30MWの発電能力になりました。

生産工場での取り組み

生産活動におけるCO2排出量低減のため、プレス、溶接、塗装、組立、パワートレインといった生産技術の領域ごとに、カーボンニュートラルに向けた中長期ロードマップを策定し、将来技術の開発や生産プロセスの改善に取り組んでいます。
生産設備の高効率化・省エネ化、燃料・蒸気・圧縮エア使用設備の電化、汎用設備の省エネタイプへの更新といった施策は、好事例を全拠点で共有し、各拠点の年度ごとの設備投資計画に織り込んで実行しています。
また、生産現場、生産技術、動力などの関係者が参加する省エネ活動において、塗装・鋳鍛工程などのエネルギーの多消費工程の運用改善、ボイラーやコンプレッサーなどの動力供給設備の運転・管理の見直し、エア漏れなどのロス防止活動など、設備導入後の運用改善に取り組んでいます。

TOPICS

塗装工程の運転制御最適化(岡崎製作所)

岡崎製作所において、塗装工程の管理を大幅に見直し、徹底した省エネに取り組みました。
塗装工程では、品質管理のため非常にシビアな空調管理が要求されますが、条件を一つ一つ見直し、温湿度条件の変更、風速ダウン及び間欠運転化、圧縮エア使用工程のブロワ化、外気の温湿度に対応した空調制御などの施策を実施しました。
これらの取り組みによって、塗装工程全体の約10%のエネルギー使用量を低減し、年間3,500tのCO2排出量を低減できる見込みです。今後、岡崎製作所で得られた知見を、他拠点にも展開していきます。

  • 岡崎製作所 塗装工場全景

  • 塗装工程と投入エネルギーの概要

エア使用量の低減活動(京都製作所)

インバーター式に更新したコンプレッサー

圧縮エア製造用のコンプレッサーは京都製作所の約20%のエネルギーを消費しているため、CO2排出量低減の重点項目の一つとして圧縮エアの使用量低減に取り組んでいます。
2023年度には、鋳造工程での圧縮エアの無駄削減に重点的に取り組み、冷却用エアや清掃用エアの間欠化といった施策を実施したほか、2022年度に大きな効果を得られた、回転水切り装置を他のラインに展開し新規に3台導入しました。更に、コンプレッサーも更新することで圧縮エアの供給にかかるエネルギー効率も改善しました。
これらの対策によって、コンプレッサーの消費電力を15%以上を低減し、年間約2,800tのCO2排出量を削減できる見込みです。

オフィスでの取り組み

開発本館のデジタルサイネージ(岡崎)

2018年度に稼働した開発本館(愛知県岡崎市)や本社オフィス(東京都港区)では、太陽光発電設備の設置やグリーン電力証書システム(※19)の活用などを通じて、消費電力の一部を再生可能エネルギーで賄っています。また、全てのオフィスで、電気設備や空調設備の省エネルギー化によりCO2排出量を低減しています。

  • グリーン電力証書システム:自然エネルギーにより発電された、再生可能エネルギーとしての電力の環境付加価値を、証書発行事業者が第三者機関の認証を得て、「グリーン電力証書」という形で取り引きする仕組み

販売での取り組み

当社は国内の販売会社に対し、環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証取得を推進し、各販売会社においてエネルギー使用量低減、廃棄物排出量低減、水使用量低減、電動車の普及促進などの活動を行っています。
「エコアクション21」は環境省推奨のガイドラインにもとづく環境経営の認証・登録制度です。「エコアクション21」には以下の3つの特徴があります。

  • 中小規模の事業者でも容易に「環境経営」の仕組みが構築・運用・維持できる
  • CO2排出量を把握・管理し、CO2排出量をゼロにしていく
  • 環境法令遵守などのコンプライアンス管理の徹底を図る

「エコアクション21」の詳細は、エコアクション21中央事務局のウェブサイトをご参照ください。

エコアクション21取得販売会社一覧(2024年3月1日時点)

会社名
青森三菱自動車販売株式会社、東日本三菱自動車販売株式会社、茨城三菱自動車販売株式会社、京都三菱自動車販売株式会社、西日本三菱自動車販売株式会社、滋賀三菱自動車販売株式会社(※20)、富山三菱自動車販売株式会社、富山ダイヤモンドモータース株式会社、熊本三菱自動車販売株式会社、長崎三菱自動車販売株式会社、石川中央三菱自動車販売株式会社、三重三菱自動車販売株式会社、九州三菱自動車販売株式会社、大分三菱自動車販売株式会社、総武三菱自動車販売株式会社、東海三菱自動車販売株式会社、駿遠三菱自動車販売株式会社、群馬三菱自動車販売株式会社
  1. 京都三菱自動車販売株式会社グループとして認証取得

TOPICS

全国都道府県へ電動DRIVE STATIONを展開中

「電動DRIVE STATION」全国配置図

当社は、各都道府県において、災害時の電源活用や環境への貢献など、電動車の魅力を体感できる次世代店舗「電動DRIVE STATION」の展開を進めています。
2023年度には4店舗(※21)がオープンし、全国で97店舗となりました。
今後も全国への電動DRIVE STATIONの展開を推進し、電動車の意義であるエネルギーソースの多様性と外部給電機能がもたらす災害時の価値をお伝えしていきます。
次世代店舗「電動DRIVE STATION」についての詳細は、ウェブサイトをご参照ください。

  1. 熊本三菱自動車販売株式会社 新南部店、九州三菱自動車販売株式会社 佐賀支店、
    長崎三菱自動車販売株式会社 オートモール多良見店・佐世保店

熊本三菱自動車販売株式会社 新南部店

  • 外観

  • ライフスタイルコーナー
    一般家庭でのダイニングを模したコーナーでは、電動車両の100VAC電源(1500W)だけでも災害時の生活を支えられることを実現する「1500W体験デモンストレーション」などを実施

  • 電動車への充電設備
    太陽光発電システムで生み出した電力をV2H(※22)機器を通じて電動車への充電に使用

  1. V2H:Vehicle to Homeの略称。機器を介してクルマに蓄えた電気を住宅へ給電することができる仕組み

物流での取り組み

グローバル物流CO2排出量の見える化

当社は、海外を含めサプライチェーンを通じた物流CO2排出量のグローバル全体像の把握、見える化を推進しています。従来から取り組んできた海外生産工場での物流CO2排出量把握に加え、2023年度は海外の車両販売子会社も対象とし、物流CO2排出量の把握範囲を拡大しました。また、見える化した物流CO2排出量を分析し、排出量削減に向けた取り組みも推進しています。

当社のグローバル物流領域全体像(概略図)

物流CO2排出量削減の取り組み

当社は生産部品や部品・用品、完成車輸送におけるCO2排出量の削減に向けた取り組みを推進しています。伴となる物流効率化施策として、梱包改善活動、輸送積載率向上活動といった自社努力による改善のみならず、各物流協力会社との連携によるエコドライブの推進や輸送機材の大型化、モーダルシフト、更にはアライアンスパートナーとの共同輸送や物流施設の共同利用を通じた輸送距離削減など、積極的かつ包括的な取り組みを過去より実施し、活動を促進してきました。また、非化石燃料車に関しても、各物流協力会社との連携を深める中で導入の検討を進めます。

TOPICS

部品・完成車輸送におけるCO2排出量の削減に向けた取り組み

改善事例1:輸送機材の大型化 フルトレーラー導入
(大分県中津市→三菱自動車水島製作 所近隣物流センター)

対象物流ルート:大分県中津市→当社水島製作所近隣 物流センター(岡山県倉敷市)約400km

  従来:大型トラック 改善後:フルトレーラー 改善効果
月間運行便数 40便/月 22便/月 ▲18便/月
年間CO2排出量 228t-CO2/年 150t-CO2/年 ▲78t-CO2/年

改善事例2:モーダルシフト 内航船(※23)の活用(新門司港→大阪南港)

対象物流ルート:北九州地区→当社岡崎製作所(愛知県岡崎市) 約750km

  従来:大型トラック輸送 改善後:内航船輸送 改善効果
年間CO2排出量 265t-CO2/年 111t-CO2/年 ▲154t-CO2/年
  • 内航船:日本国内の貨物輸送に使用される船

なお、当社のモーダルシフト内航船活用(新門司港→大阪南港)は一般社団法人日本長距離フェリー協会が主催する「令和5年度エコシップ・モーダルシフト事業」において、優良事業者として国土交通省海事局長より表彰され、「エコシップマーク認定」を受けました。

改善事例3:モーダルシフト 鉄道貨物輸送の活用(当社水島製作所→新潟)

対象物流ルート:倉敷貨物ターミナル駅→新潟貨物ターミナル駅 約790km

  従来:大型トラック輸送 改善後:鉄道輸送 改善効果
年間CO2排出量 10.8t-CO2/年 2.4t-CO2/年 ▲8.4t-CO2/年