基本的な考え方
自動車は、事業活動や製品の使用により排出される環境汚染物質や化学物質によって、人々の健康や生物多様性に影響を及ぼす可能性があります。
三菱自動車は、環境汚染のない社会の実現への貢献を目指し、「環境計画パッケージ」では直接的に取り組む課題の一つと位置づけ、製品による環境負荷や事業活動にともなう汚染の低減に取り組んでいます。
製品の開発段階では、排出ガスに含まれる有害な成分の削減や燃費向上に向けた技術及び電動化技術の開発を進めるとともに、製品に含まれる環境負荷物質の管理に努めています。生産工程では、法令基準よりも厳しい自主基準を設定し、工場から排出される大気汚染物質の低減に努めています。このように大気汚染物質及び化学物質による環境への影響を低減するため、事業活動全体を通じて環境汚染の防止に取り組んでいます。
走行時の排出ガスのクリーン化
当社は、走行時の排出ガスが少ない電動車の開発・普及はもとより、排出ガス中の有害な成分を削減したガソリン車及びディーゼル車の開発・改良に努めています。
ガソリン車での取り組み
ガソリン車に対しては、1960年代に一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の排出量が規制されて以来、その後も排出ガス規制は段階的に強化されています。
当社は、排出ガス規制導入当初から様々な対策に取り組んできました。現在では、電子制御の燃料噴射装置による燃焼のコントロールや、GPF(※1)システム、進化した触媒技術により強化される排出ガス規制に対応しています。
ディーゼル車での取り組み
ディーゼル車に対しては、1970年代以降、日本、米国、欧州などの国や地域で、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM(※2))の排出量が規制されています。
当社は、排出ガス規制導入当初から燃焼技術の改善などに取り組んできました。これらの排出ガス規制に対しては、VGターボチャージャーやコモンレール式燃料噴射システムなどによる燃焼コントロールと、NOxトラップ触媒、DPF(※3)、尿素SCR(※4)システムなど後処理技術をシステム化したクリーンディーゼルエンジンを開発して対応しています。
- GPF:Gasoline Particulate Filterの略称
- PM:Particulate Matterの略称。排ガスに含まれるススなど、µmサイズの微粒子
- DPF:Diesel Particulate Filterの略称
- SCR:Selective Catalytic Reductionの略称。選択還元触媒
クリーンディーゼルエンジンのシステム
VG(※5)ターボチャージャー

タービンの可変ノズルを連続的に制御し、エンジンの全作動範囲において最適に過給することで、燃費を向上しPMを低減します。
- VG:Variable Geometryの略称。
コモンレール式燃料噴射システム

高圧燃料ポンプ、高圧燃料を蓄えるコモンレール(蓄圧容器)、電子制御インジェクター(燃料噴射装置)などにより、不完全燃焼によるPMやNOxの発生を抑制します。
DPF(※6)

PMを捕集し燃焼させて除去するフィルターで、PMの排出量を大幅に低減します。
- DPF:Diesel Particulate Filterの略称
尿素SCR(選択還元触媒)システム
尿素水溶液(AdBlue®(※7))を使ってディーゼルエンジンから排出される窒素酸化物(NOx)を還元することにより、大気に無害な水と窒素に分解し浄化しています。
- AdBlue®:ドイツ自動車工業会(VDA)の登録商標
[クリーンディーゼルエンジンのシステム図(4N16エンジン)]

- s-DPF:選択還元触媒を表面コートしたDPF
- ASC:アンモニア スリップ触媒
環境負荷物質の低減
当社は、一般社団法人日本自動車工業会(自工会)の環境負荷物質の削減目標及び欧州のリサイクル法となるELV(※10)指令にもとづき、4物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム)の使用低減を推進するとともに、ELV指令をはじめ、化学物質に関するREACH規則(※11)、POPs(※12)条約などの環境負荷物質の使用規制への対応を各国で行っています。
現在、4物質などの重金属規制に加え、VOC(※13)、臭素系難燃剤など様々な化学物質の使用が規制されており、近年は欧州と同様の規制がアジアの新興国にも広がりつつあります。
当社は社内技術標準を制定し、自主的な環境負荷物質の低減にも取り組んでいます。
- ELV:End-of-Life Vehiclesの略称
- REACH:Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicalsの略称。2007年6月1日に発効した化学物質の総合的な登録・評価・認可・制限の制度
- POPs:Persistent Organic Pollutantsの略称。残留性有機汚染物質
- VOC:Volatile Organic Compoundsの略称。揮発性有機化合物
IMDSによる材料データ管理
取引先から納入される部品などに含まれる環境負荷物質のデータは、国際的な材料データ収集システムであるIMDS(※14)を利用して収集しています。データは、社内システムを通じて海外工場を含めグローバルに一元的に管理しており、環境負荷物質の使用量低減に活用しています。
EUにおける化学物質の総合的な登録・評価・認可・制限の制度であるREACH規則にも取引先のご協力のもと対応しています。
製品含有環境負荷物質の適切な管理に向け、GADSL規制物質の情報を反映した社内管理システムの改修を実施しています。サプライヤーが入力したIMDSデータを収集し、対象物質の含有率、含有材料から、新たな規制物質が部品に含まれていた場合、当該システムによって法規適合可否を自動判断できる仕組みとしています。また、法規制に基づき、部品の切り換え・設計変更を実施しています。
- IMDS:International Material Data Systemの略称
IMDSを通じたデータ収集の流れ

車室内VOC低減
当社は、健康的で安心な車内空間を提供するため、車室内のVOCを低減しています。
VOCとは、ホルムアルデヒドやトルエンなどの常温で揮発しやすい有機化合物を指し、目や鼻、喉に刺激を感じるなどの体調不良が生じる、いわゆるシックハウス症候群の要因とされています。車室内では、主に内装部材に使われている接着剤や塗料などから発生します。
自工会の自主取り組みの詳細は、同会ウェブサイトをご覧ください。
取り組み状況
当社は発生源に対する低減策を実施することで車室内のVOC低減に取り組んでいます。
VOC低減策の例
カーペット | パイル接着剤のアルデヒド類を低減 |
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シート | 生地接着剤の有機溶剤を低減 |
オーナメント | 内装用高光沢部品の原着化によりVOCを低減 |
大気汚染防止
生産工程からのVOC排出抑制

塗装工場(MMTh)
当社は、VOC排出抑制のため、塗装工程への水性3WET塗装工法(※15)の適用を進めており、国内では水島製作所、岡崎製作所、海外ではミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)の第三塗装ライン、塗装工場において導入しています。
また、ロボットなどの塗装システムの更新や、生産ロット調整による塗料使用量の低減、使用済みシンナーの回収率向上などにも取り組み、車体生産時のVOC排出量を抑制しています。
- 水性3WET塗装工法:中塗りと上塗りは水性塗料で塗装し、上塗りクリアのみ溶剤を用いる塗装方法
大気汚染物質の管理
当社は、生産活動から排出される窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ばいじんなどの大気汚染物質は、法規制にもとづき排出濃度・排出量を管理しています。
また、灯油など化石燃料を熱源とした機器、電動ヒートポンプをはじめとした電動機器への更新を推進しており、大気汚染物質とCO2排出量を同時に低減しています。
化学物質管理
化学物質の適正管理
当社は化学物質の使用について、「化学物質管理システム」を導入し、化学物質の導入前に、性状及び利用計画の内容を精査し、法的要求事項の調査、リスクアセスメント、導入可否の審査、作業者教育などを実施するとともに同システムによって最新のSDS(Safety Data Sheet)情報を一元管理しています。また、PRTR(※16)対象物質の取扱量も同システムのデータを活用して把握しており、取扱量、排出量などを法的要求事項にもとづいて国に届け出ています。
引き続き、労働安全衛生及び環境汚染防止の両面から、化学物質を適正に管理していきます。
- PRTR:Pollutant Release and Transfer Registerの略称。化学物質排出移動量届出制度
有害廃棄物の適正管理
当社は、バーゼル条約(※17)で規制されている有害廃棄物の輸出入を行わないように管理しています。
また、国内の産業廃棄物については、各種法的要求事項にもとづき、適正に運搬・処理を行っています。
- バーゼル条約:一定の廃棄物の国境を越える移動などの規制に関する国際的な枠組み、手続きなどを規定する条約
PCB(※18)含有廃棄物の適正管理
PCBは、製造年月日の古いトランスやコンデンサなどに絶縁油として封入されており、有害性があります。当社はPCBを含有する廃棄物などをPCB廃棄物特別措置法にもとづいて適切に処理を行っています。
- PCB:Poly Chlorinated Biphenylの略称。ポリ塩化ビフェニル