MMC WAY(行動指針)
当社は、事業環境が急速に変化するなか、グループが持続的に成長し、企業価値の向上を実現していくための鍵は「人材」であると考えています。
そこで当社グループでは、組織と組織で働く従業員すべてで共有し、物事を進めるうえでの“拠りどころ”となる共通の行動指針として2017年度に「MMC WAY」を設定しました。また、当社グループを取り巻く環境が大幅に変化していることを踏まえ、グループのあるべき姿について代表執行役社長をはじめとする経営陣が改めて議論を重ね、社員からも意見を聞いたうえで、2022年度には「MMC WAY」を刷新しました。企業として大切にすべきこと、人として生きていくうえで大切なことを新たな「MMC WAY」に整理し、全役員・従業員が一体となって当社の「ビジョン・ミッション」の実現にチャレンジしています。
「MMC WAY」の冒頭2項には、ベースとなる重要な価値観として、社会からの信頼の土台となる「お客様第一」と企業活動を通じた「社会の発展への貢献」を据えました。当社グループの存在意義は「企業活動を通じてお客様に喜んでいただき、社会に貢献していく」ことであり、このことを従業員一人ひとりがつねに念頭に置いて行動できるよう冒頭2項を定めています。ほかの3項については、従来の「MMC WAY」の大切な要素をより具体的にわかりやすく表現しました。
企業として重視すべき行動指針である「MMC WAY」は人事評価制度にも反映しています。「MMC WAY」「人材育成・組織管理」「専門性」の3つの基軸による多面的なコンピテンシー(行動特性)評価を導入し、社員の主体的な成長を図っています。
また、「MMC WAY」の浸透のために毎年職場ワークショップを開催しています。2024年度は、改めて「MMC WAY」の必要性を振り返り、その理念に基づいた行動につなげるため、各項目について具体的な行動例を討議し、理解度向上を図りました。
「MMC WAY」職場ワークショップ実施後のアンケート結果
| 設問「MMC WAYを理解した」に対する肯定的回答率 | ||
|---|---|---|
| 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
| 91.3% | 95.2% | 96.5% |
基本的な枠組み
当社は「ビジョン・ミッション」を遂行するための行動指針である「MMC WAY」を体現できる「人材育成」、また一人ひとりがやりがいを持って働き、自身の能力を存分に発揮し、エンゲージメント高く、心身ともに健康でいきいきと働ける職場環境を整えることが重要な課題であると認識し、各種取り組みを進めています。
多様な人材が働きがいのある職場の確立
多様な人材の活躍を企業価値の創造へと結び付けるため、個々の能力が最大限に発揮され、誰もが働きやすい職場環境の整備を進めています。仕事の生産性と生活の質をともに向上するワーク・ライフ・バランスの確立をめざし、女性社員のさらなる活躍推進、シニア人材の多様な活躍機会の創出、障がい者雇用のいっそうの促進に加えて、出社勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークの推進や、育児、介護といったライフイベントに対応可能な柔軟な勤務制度の整備に取り組んでいます。
人材育成
当社では、三菱グループ共通の根本理念である「三綱領」と当社の「ビジョン・ミッション」、日々の業務の指針となる「MMC WAY」の3つを教育の柱とし、新入社員から部長クラスまで、体系的な人材育成が図れるよう、人事部門が全社教育体系を整備しています。業務を通じて成長し、より職場で活躍できる人材を育成すべく、教育プログラムの充実に取り組んでいます。
海外での生産・販売台数の増加にともない、世界的な視点で考え、活躍できる人材を育成する取り組みに力を入れています。また、時代の変化に合わせたDXリスキリングプログラムを実施するとともに、各組織で求められる専門的な知識・スキルや行動基準である「専門性」を行動評価の一項目に設定し、専門性の強化を促すべく、OJT/Off-JTの双方での教育施策を充実するなど、次世代リーダーの育成に取り組んでいきます。
人事評価・報酬
当社の評価・報酬制度においては、目標管理制度に基づく業績達成度評価に加え、行動指針「MMC WAY」、ならびに「人材育成・組織管理」「専門性」の3つの柱による多面的なコンピテンシー(行動特性)評価を採用し、個人の業績と成長を多角的に捉える仕組みを構築しています。
管理職に対しては、組織活性化の推進に資するマネジメントの役割を担わせるとともに、①組織目標の共有と達成責任の徹底、②目標達成に向けたインセンティブの強化、③求められる思考・行動様式の浸透、④実力本位の公正な登用を図ることで、経営基盤の強化に資する人材マネジメントを実践しています。
一般社員に対しては、①組織目標の共有と達成意識の醸成、②評価・処遇における透明性および納得感の向上、③企業理念および行動規範の浸透を通じて、組織としての一体感の醸成と個の成長をともに促す仕組みを整えています。
さらに、役職や担う責任の大きさ、ならびに個々の会社への貢献度を的確に評価し、これらを適正に処遇へと反映する報酬制度を設計することで、社員一人ひとりのキャリア形成と、さらなる意欲向上につながる環境の整備に努めています。特に管理職においては、経営への参画意識および高い当事者意識を涵養するとともに、透明性・公平性を確保すべく、賞与に会社業績連動の要素を組み入れています。
なお、給与水準については、法令を遵守することはもとより、業界水準にも十分配慮しつつ職務の内容に応じ適正に決定しています。加えて、人種、国籍、性別などによる不当な給与格差の排除を徹底し、公正かつ信頼に足る制度運用を堅持しています。
健康経営・安全衛生
従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが、企業価値向上と持続的成長の実現への原動力となります。当社では、従業員の健康を保持・増進させることを重要な経営課題の一つと位置付け、「健康宣言」を掲げ、国内拠点において全社一丸となって健康経営を推進しています。また、従業員の安全と健康の確保は企業活動の基盤と考え、「全社安全衛生管理方針」のもと、構内協力事業場も含め、継続して対策に取り組んでいます。
従業員エンゲージメントの向上
当社では、2013年度からエンゲージメントサーベイ(社員意識調査)を継続的に実施しています。同サーベイは、企業、組織全体、社員の状態を可視化し、結果から見える課題と向き合うことで人と組織を活性化させ、従業員エンゲージメントの向上につなげることを目的としています。
エンゲージメントは、「当社で働いていることを幸せに感じますか」と「当社を職場として推薦できますか」の2設問に基づき測定しており、これらに加え、会社の方針、経営陣、意思決定スピード、キャリア、ウェルビーイングなどに関する網羅的な設問を投げ掛け、社員の声を集めています。
調査結果を分析のうえ、役員、組織長、担当部門それぞれに担当領域のフィードバックを実施し、エンゲージメント向上を図るアクションの実行を促しています。特に組織・人材マネジメントにおいては、組織開発研究の第一人者が監修した当社オリジナルの学習プログラム「ヨリヨイ職場対話」を開発し、組織長向けに職場づくりを実践的に学習するためのワークショップを提供することに加えて、全社員に対して動画学習教材を提供しています。また、2023年度より社外有識者を招いたセミナー「Drive your team」を毎年開催し、マネジメントの質の向上を推進しています。さらに、同サーベイ結果は、経営幹部が出席する人材開発会議においても、今後の人材開発の方向性を議論する際の参照データとして使用し、会社としてエンゲージメントを持続的に高めるためのアクションにつなげています。
マネジメント体制
当社では、経営戦略と連動した人材戦略を推し進め実行していくため、代表執行役社長および幹部からなる人材開発会議を設置し、企業競争力に直結する人材確保・育成に関する課題や施策について月1回、計画的に議論および検討しています。
事業を支える各機能の専門性の強化を織り込んだ最適な要員計画を策定し、電動車のパワートレイン制御システムの開発や各種要素技術の領域拡大、カーボンニュートラル対応の促進、デジタル化の推進、新ビジネス領域への進出などを企図した体制の強化を進めています。社員が安心して能力を発揮できる働きがいのある職場づくり、社員のチャレンジと成長を促す教育・研修を含む育成機会の拡充、社内外の優秀な人材を惹き付けるような魅力ある会社のあり方など、当社を取り巻く社内外の環境や市場動向を分析しながら、人材開発会議の場での闊達な議論を通じて、既存の施策の振り返りと効果検証、加えて、新規施策の検討・審議を行っています。
過去の歴史が色濃く反映された歪な労務構成など、当社の現状認識・分析を出発点として、中期経営計画「Challenge 2025」の達成に向けた人材に関する課題を、幹部への個別ヒアリングも実施しながら、中期経営計画の初年度である2023年度より幅広く議論しています。2023年度は、人材戦略で掲げている、重点施策の3本柱である「より一層働きやすい職場への改革」「教育・リスキリングプログラムの充実」「多様で幅広い人材確保の推進」の具体化とともに、課題・テーマの優先順位付けを行いながら、継続的なキャリアおよび新卒の採用強化、キャリア入社者の早期戦力化と定着、またシニア人材の活用や、部門の状況に応じた管理職ポストの任期の柔軟な運用など、特に“量”の課題に関して優先的に取り組みました。
また、2024年度においては、一定の“量”の充足を確認できたことを踏まえて、次なる施策として、社員一人ひとりの生産性向上に資する“質”の向上に焦点を定めて、人材育成の強化に注力しました。具体的には、部門ごとの職務や当該部門に所属する社員の経験年数に応じた教育体系の可視化に向けて、部門がめざす「あるべき姿」を起点とし、その実現に必要な「スキル」、さらにスキル習得のための「研修・OJT」を体系的に整備する取り組みを推進しています。こうした取り組みを通じて、社員の中長期的なキャリア形成への意識の醸成、現時点における自身の立ち位置の可視化による上司と部下の間の認識ギャップの解消、さらに、担当業務や研修受講の意義への理解促進による主体的な学びの姿勢の醸成といった効果を期待しています。これらは、中期経営計画期間中の本格運用をめざして、着実に準備を進めています。加えて、今後も“質”のさらなる向上を重要課題と位置付け、人材育成のいっそうの強化を通じた社内人材のレベルアップを図るべく、引き続き検討・議論を重ねていきます。
「Challenge 2025」の人材戦略
2023年度に始動した中期経営計画「Challenge 2025」を力強く推進し、持続的な成長を実現するためには、すべての従業員が心身ともに健やかに、そして働きがいを感じながらその能力を最大限に発揮できる職場環境を整備することが不可欠です。加えて、かつてない事業環境の変化に直面するなか、DXの加速や新規事業の創出を実現するための教育とリスキリングの強化、多様な価値観やバックグラウンドを有する人材の確保・活用が、企業としての競争力を左右する重要な要素であると認識しています。
こうした認識のもと、当社は人材戦略の中核に「より一層働きやすい職場環境の整備」「全社的な教育・リスキリングプログラムの充実」「多様な人材の戦略的確保と活躍推進」の3つを据え、具体的な施策の策定と実行に注力しています。