基本的な考え方
当社グループは、アセアン地域でモータリゼーションが興る以前より事業を展開し、「地域の発展が当社グループの発展につながる」という思いで地域に寄り添いながら各国とともに成長してきました。
長年にわたり事業活動を行っている地域の社会課題の解決に積極的に取り組み、ともに成長をめざし、促すことは、地域の活性化、市場の育成、消費者ニーズの把握、当社ブランド力の強化などにつながり、「地域の発展」と「当社の発展」を同時に実現できると考えています。中期経営計画「Challenge 2025」では、アセアンを事業中核地域として位置付け、これまで以上に研究開発と設備の増強に対する投資を拡大しています。特に、電動化、IT、新事業への支出割合を増やすことで、会社のさらなる成長をめざしています。また、「事業を通じた地域経済への貢献」をマテリアリティの一つに定めており、雇用、投資、技術移転、輸出に加え、自動車産業を支える人材育成(地域経済を担う人材の成長支援)を通じて、アセアン地域における事業の発展と地域経済への貢献をめざしています。
加えて、アセアン地域の社会ニーズに応え、環境と社会貢献の分野でも当社グループ独自の技術・サービスを活かした取り組みを進めています。
マネジメント体制
アセアン地域でのマテリアリティ「事業を通じた地域経済への貢献」への取り組みは、現地子会社が活動計画の策定および実行を担い、責任部門として当社営業部門が取り組みを管理・監督しています。生産拠点を持つタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの4カ国の現地子会社については、年2回、当社営業部門において取り組みの進捗や実績を確認し、サステナビリティ委員会を通じて経営層に報告を行っています。
雇用
中期経営計画「Challenge 2025」では、アセアン地域を事業の中核地域と位置付けており、2023年度から、インドネシア、ベトナム、フィリピンと内燃機関車である新型SUV『エクスフォース』を順次市場投入しました。また、新型ピックアップ『トライトン』をタイなど各国に投入しました。
さらに、各国でカーボンニュートラル社会の実現を促進するための政策が相次いで発表されていることから、当社グループでもタイでは『エクスパンダー』シリーズのHEVモデル、インドネシアでは海外初の電気自動車である『L100 EV(ミニキャブEV)』の生産・販売を開始しました。
これらの事業活動により、企業の事業利益の創出だけでなくアセアン地域における雇用の拡大も計画しています。生産拠点のあるタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの4カ国における2024年度の従業員数は約1万700人であり、2025年度も現地の事業計画に沿って現地雇用を持続的に創出します。
人材育成
産業の高度化をめざすアセアン地域において、当社グループでの自動車の製造や販売、サービスなどの就業経験は、専門的な知見や技能を培い、地域経済の発展を担う産業人材の育成につながっています。
| エリア | 対象者 | 内容 |
|---|---|---|
| タイ | 工業系大学11校の学生26人 | 地域経済の担い手となる人材を育成するインターンシッププログラム |
| インドネシア | 現地社員317人 | 職務レベルに合わせた業務スキルの習得をめざす研修 |
| フィリピン | 現地社員8,786人 (延べ受講者数) |
業務スキルの強化と専門性・生産性の向上を目的とする複数の研修 |
| ベトナム | 現地社員719人 | 職位や分野に応じた業務スキルの強化と専門性の向上を目的とする研修 |
| 各国 | 現地社員 | 各国の状況に応じた研修・OJT |
投資
地域経済の成長を支える工場の設備投資を継続的に実施しています。中期経営計画「Challenge 2025」では、アセアン地域を事業中核地域と位置付け、新商品の連続投入や各国市場に適した電動車の生産・導入を計画しており、同地域において安定的かつ従来よりも高い水準の研究開発投資と設備投資を継続して行う予定です。
主な投資案件
| 2024年度実績 | タイ:HEVの生産立ち上げ(2024年度は「エクスフォース」)にともなう設備投資を実施 |
|---|---|
| フィリピン:組立/検査ラインの移設・拡張 | |
| 今後の計画 | インドネシア:生産能力向上のために設備の拡張を実施 (2024年度から2025年度に生産能力を22万台から25.5万台に増強) |
| ベトナム:新工場の設置を検討 |
技術移転
当社グループの成長ドライバーであるアセアンを中心に、各国での現地生産によって、ものづくりの高度化と競争力の強化を継続的に支援しています。2024年度は、『新型3列SUV』や『エクスパンダー』(HEVモデル)などの生産準備を通じて、日本で培ってきた電動車も含めたものづくり技術の海外移転を推進しました。
加えて、現地子会社(製作拠点)のものづくり競争力を強化するために導入した「Buddy制度」も定着してきています。この制度では、海外工場とともに成長していく存在として、国内工場が海外工場の「Buddy」となり、人材育成も含めて積極的な支援を行います。新型車の製造ラインの立ち上げから、量産車の生産に至るまで、品質管理や物流改善などさまざまな面で競争力強化やノウハウの伝授を進めています。
さらに、従業員のモチベーションアップを図る施策として「ものづくりスキル」「からくり改善®」「QCサークル活動」の3つのコンペティションをグローバルで開催し、アセアン地域にある多くの海外工場からも従業員が参加しました。
アセアンの各拠点には、ものづくりのスキル、現場管理の知識を伝承するマスタートレーナーを配置しています。これらのトレーナーは当社のグローバルマスタートレーナーによって育成・認定されています。これにより、知識とノウハウの深化、技術力の向上を図っています。
また、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの技術系大学や職業訓練校に奨学金や実習車両を提供し、現地人材の技術習得を支援しました。加えて、自動車産業に携わる職業訓練校の学生が最新の技術や業界のニーズを理解できるよう、教師向けオンラインセミナーを開催しました。
これらの取り組みを通じて、現地ニーズに応じた多角的な支援を行い、技術移転のさらなる推進を図っています。
輸出
販売会社では、不具合事象や発生した状況などについてお客様から具体的に聞き取りを行っています。販売会社から当社に提供されるこれらの情報は、品質部門が中心となって関連部門と共有する体制としています。
また、特定の車種で発生している事象、お客様からの不具合のご指摘や修理の実績について、システムを活用して分析することで、早期に不具合情報を把握して対策を講じるなど、品質改善につなげています。
環境・社会貢献
アセアン地域においても環境規制への対応がますます重要になるなか、当社グループは電動車の技術や知見を活用し、また各地域のパートナーと協力して、アセアン地域で持続可能な事業を実現するとともに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを推進しています。また、各国での災害時の被災地への寄付、車両や部品の教育機関への供与や職業訓練校での教育・トレーニング、植林や廃棄物リサイクル活動への参加など、ビジネス以外でも地域に根付いた環境・社会貢献活動に取り組んでいます。