製品品質、セールス・サービス品質の向上

基本的な考え方・品質方針

当社は、2019年4月に改定した品質方針に基づき、お客様の購入検討から車両の保有期間、すべての段階で品質を向上させるため、コンプライアンスを基盤として「製品品質」「感性品質」「セールス品質」「サービス品質」の4つのカテゴリーで改善に取り組んでいます。
「製品品質」には、お客様が新車購入直後に経験される「初期品質」と、末永くお使いいただくなかで経験される「耐久品質」があり、市場において発生するさまざまな問題やお客様から寄せられる声を真摯に受け止め、迅速に改善につなげていく体制を強化しています。また、お客様が商品を“見て・触って・使ってみて”感じる使い勝手や心地良さ、見た目の良さなど、感性で受け止める「感性品質」の向上にも取り組んでいます。販売会社での「セールス品質」や「サービス品質」は、お客様の声を確実に聞き取り、ご要望に沿った提案や対応をすることによりお客様がご満足いただけるよう日々改善を行っています。
当社は、中期経営計画「Challenge 2025」に基づき、品質領域の中期計画である「品質MTP(Mid Term Plan)」も刷新し、活動しています。
当社の事業中核地域であるアセアンとオセアニアに、ホームマーケットである日本を加えた国・地域を品質MTP活動のコアマーケットとして位置付け、製品品質については、車両の電動化や先進化への対応を強化し、「三菱自動車らしさ」を体現した商品を品質面で下支えしています。セールス品質とサービス品質については、それらの商品をベースにお客様との長期的な信頼関係を構築すべく、お客様への接遇品質向上や、デジタル・ITを活用したカスタマーエクスペリエンスの充実などに取り組み、お客様とのすべての接点においてご満足いただけるよう、お客様視点でトップレベルの品質をめざしています。

マネジメント体制

当社では「お客様からトップレベルの品質と評価される」ために品質情報を解析し、具体的目標値を設定のうえ、その実現に向けた施策を検討・実施し、改善状況の実績を定期的にフォローしています。
また、販売会社から寄せられるお客様の車両不具合情報については日々、関連部門において共有を図り、迅速に対策を協議・決定・実行する体制を整えています。品質に関するお客様の声に接する部署を傘下に持つTCS(※1)本部が、お客様の声に基づき、これらの全社的な品質改善の取り組みを推進しています。

  1. TCS:Total Customer Satisfaction

品質改善の推進組織

会議体名 開催頻度 議長 構成メンバー 目的
Quality Strategy Committee(QSC) 四半期ごと 代表執行役社長、もしくは担当役員(※2) 開発担当役員、生産担当役員、販売・サービス・製品品質に関連する各本部長 販売・サービス・製品の各品質領域に関わる戦略的な事項の討議・決定
Quality of Management Committee(QMC) 四半期ごと QMSトップマネジメント(※3) 部門の長(本部長/所長)および直属部署を所管する責任者 全社的マネジメント品質向上に関わるベストプラクティスの共有および外部審査の対応要領、是正を要する事項の報告ならびに水平展開
Quality Management Meeting(QMM) 毎月 QMSトップマネジメント(※3) 製品品質に関連する各本部長、統括専門職(課長クラス以上)の品質担当者 製品品質目標に対する進捗状況の確認と改善施策の検討・有効性の協議、活動を推進するうえでの障害に対する解決策の検討
  1. 代表執行役社長が委譲した場合
  2. 代表執行役社長、もしくは代表執行役社長から指名された品質マネジメントシステム実行責任者

QMS(※4)(ISO9001)の取り組み

当社は、「お客様の期待を上回る製品品質、およびセールス・サービス品質」を実現するためには、全社的なマネジメント品質の継続改善が必須と考えています。この認識に基づき、製品品質およびセールス・サービス品質に直携わる部門に限定することなく、全社的にマネジメント品質の改善に取り組み、ISO9001の認証は全部門で取得しています。
当社は、マネジメント品質の継続改善のため以下を実践しています。
①目標を定量化した年度計画を作成・実行
②上期/通期のマネジメントレビューで進捗を確認
③内部監査により改善の機会を共有
④認証機関による審査を受審(維持、更新)
また、海外生産拠点においても、同様にISO9001の認証を取得し、世界各地で生産・販売する当社の製品がお客様の期待を上回る製品品質、およびセールス・サービス品質となるよう、取り組みを継続しています。

  1. QMS:Quality Management System

ISO9001認証取得状況

対象 拠点取得率 内訳
当社 100% 2拠点中2拠点(※5)
当社グループのグローバル生産拠点 100% 4拠点中4拠点(※6)
  1. 日本国内の完成車生産拠点
  2. 海外の完成車生産拠点(連結子会社)

第三者評価

お客様満足度の指標として、外部評価であるJ.D.パワー社自動車初期品質調査(IQS)(※)や、当社独自のお客様満足度調査なども分析し、質の高い商品やサービスの提供に取り組んでいます。

  1. IQS:Initial Quality Study

製品品質の向上

お客様満足度の向上には、安全性に関わる不具合にとどまらず、商品性に関わるご指摘やご不満についても的確に対処することが不可欠です。
当社は販売した車種に関して、販売から3カ月および12カ月以内に発生した不具合に着目し、初期不具合の低減に取り組んでいます。品質部門は開発部門および生産部門と連携し、解決までのスピードアップを図り、お客様からのご指摘の低減につなげています。
また、新型車に関しては初期品質の確保をめざし、出荷開始時点から、開発、生産、サービス、品質、購買など各部門の社員が一堂に会して、発生し得る問題に対しての対策を検討し、実行するクロスファンクショナルな「大部屋活動」を実施しています。これにより、よりスピーディーに初期品質の向上を図っています。
耐久品質については、お客様からのご指摘のみならず、実際にお客様が長期間使用された中古車や部品の回収・分析などを通じて、お客様に長く快適にお車をお使いいただける技術の開発に取り組んでいます。
さらに、不具合ではないもののお客様のご不満となっている事象は、今後の新型車で改善できるよう開発段階でのプロセス改善につなげています。

お客様視点にもとづいた車両品質評価と保証

当社は、品質管理の重要な取り組みの一つとしてVES(※8)を導入しています。VESは、お客様が販売会社のショールームにて車両をご覧になり、使用を開始した初期に感じると思われる300以上にわたる品質評価項目から、目標とした品質基準を満足しているかを確認する評価システムです。
品質評価項目は、内外装の外観などの静的評価と、実際に走行させて確認する動的評価で構成されており、動的評価ではノイズ、振動、操縦安定性や各種車載機能の動作などをチェックしています。
上記評価は、社内のスキルトレーニングを終え、厳格な資格試験に合格した認定VES評価員が実施しています。VESは、新型車の生産や出荷開始の判断や、生産車の継続的な品質保証に重要な役割を果たしています。

  1. VES:Vehicle Evaluation Standard

感性品質の向上

お客様のご購入検討時点はもとより、ご購入後のカーライフにご満足いただけるよう、開発段階からお客様の感性を重視した品質の向上に取り組んでいます。
感性品質は大きく2つの品質から成り立っています。基本となるのは「当たり前品質」で、お客様が製品に対して通常期待される品質レベルです。これを満たさなければ、購入しようという気持ちになっていただけません。それをしっかり踏まえたうえで、他社より優れ、「三菱自動車らしさ」をお客様が感じて購入の決断へと導く品質のレベル、これが「魅力品質」の領域です。
「魅力品質」の向上は、お客様に当社独自の魅力を感じ取って選んでいただける製品づくりにつながります。また、「当たり前品質」の向上は、長く愛用していただける製品につながります。お客様が実際に当社の製品に触れた際に、また、日常でお使いいただいた際に、期待以上の満足度を感じていただき、再び当社の製品を選んでいただけるよう、感性品質向上への取り組みを推進し続けます。
また、カラーデザインにおいても、地域ごとの感性をさらに見極めて、北米のお客様に特化したカラーの設定や、アセアンのお客様のご要望にお応えするカラーの提案を行い、色・素材における感性品質の向上につなげています。

セールス品質の向上

お客様に支持・共感していただけるブランドになるため、トップレベルのお客様満足度を得ることをめざし、販売会社とともにセールス品質の向上に取り組んでいます。

国内の販売会社との協働

国内の販売会社では、お客様のニーズに沿った提案と新しい商談体験の提供をめざす取り組みとして、ITを活用した商談スタイルを推進しています。例えば、タブレット端末を導入し、視覚的にわかりやすい商品説明に努めています。併せて、ご来店いただいたお客様にタブレット端末で応対品質に関するアンケートにお答えいただき、お客様の声を早期に把握することで、タイムリーな改善につなげています。
また、2023年より、お客様満足度の改善・向上活動を推進する責任者を全販売会社に設定しているほか、改善活動の推進者を対象とした会議体を年に複数回開催しています。さらに、2025年2月には販売会社で接客を主に担当するスタッフ向けに「おもてなしの心の実践」をテーマにした研修を実施しました。外部講師による講義やグループワークを行い、接遇力のレベルアップと販売会社における改善活動を促進し、お客様満足度の向上を図っています。

海外の販売会社との協働

各国の販売会社では、お客様にご満足いただける購入体験を提供すべく、日々お客様の声をアンケートにより把握し、改善に取り組んでいます。
また、各国・地域のお客様のニーズを踏まえながら、販売プロセスのデジタル化、店舗の改装などを推進しています。
さらに、お客様の購入検討から購入、納車、日々のメンテナンスに至るまで、一貫した高品質なお客様体験の提供をめざし、セールス・サービス部門間の連携を強化しています。当社は好事例の共有、ワークショップの開催などを通じて、各国の取り組みをサポートしています。

製品・サービスに関わる情報の適正な表示

各国・各地域の法令その他の規制を遵守し、製品およびサービスについて適正な情報提供とラベリング表示に努めています。

サービス品質の向上

販売会社のサービス現場においては、クルマの購入時からお客様視点での「良質なサービスの品質」をお客様へ提供することが重要です。当社は国内外の販売会社と連携し、お客様にご満足いただき、再び購入いただけるよう、コミュニケーションスキルや技術力の改善・向上に努めています。

国内における取り組み

当社では、販売会社のサービススタッフを対象に、当社独自のサービス技能資格制度を設け、各資格保持者に対して適切な教育を実施することで、現場対応力のステップアップを後押ししています。また、インターネットを活用したeラーニングやオンラインによる講習の充実に継続的に取り組んでいます。それに加え、新型コロナウイルス感染症の影響で停止していた対面での教育も2023年度より再開しており、より充実した教育の提供を推進しています。
また、全国各地区から選抜されたサービススタッフによる国内スキルコンテストの全国大会を隔年で開催し、サービススタッフの技術力向上、モチベーションアップを図っています。
さらに、全国に7拠点あるテクニカルセンターでは、技術連絡会・勉強会を開催しているほか、当社技術スタッフを販売会社へ派遣し、高難度修理やお客様への迅速な対応をサポートしています。

海外における取り組み

全世界のお客様へ均一なサービスを提供するために、世界統一の基準で整備士の教育、資格認定を行うプログラムを導入し、サービスの向上に努めています。2023年度にはタイに開設したアセアン地域向けの研修センターが本格稼働し、当社が特に重視する同地域のサービススタッフの技術力、およびそれに基づくお客様の満足度向上に向けた取り組みを行っています。
また、国内同様、インターネットを活用したトレーニングにも取り組み、全世界を担当している当社技術スタッフが、高難度修理など販売会社のサポートも行っています。
さらに、世界各国の予選を勝ち抜いたサービススタッフを一同に集めたスキルコンテストの世界大会を隔年で開催し、国内同様、サービススタッフの技術力向上、モチベーションアップを図っています。

お客様の声の活用

魅力ある商品と優れたサービスにより、お客様に豊かな体験を提供し、カーライフにご満足いただくことが当社の使命です。そのため、国内外の販売会社やお客様相談センターに寄せられた貴重なお客様の声を収集・分析し、品質、開発、生産、営業、サービスの各部門が一体となって品質向上に真摯に取り組んでいます。

お客様の声による品質改善

販売会社では、不具合事象や発生した状況などについてお客様から具体的に聞き取りを行っています。販売会社から当社に提供されるこれらの情報は、品質部門が中心となって関連部門と共有する体制としています。
また、特定の車種で発生している事象、お客様からの不具合のご指摘や修理の実績について、システムを活用して分析することで、早期に不具合情報を把握して対策を講じるなど、品質改善につなげています。

お客様相談センターの取り組み

当社のお客様相談センターでは、電話、メールに加え、お客様に手軽に活用いただけるチャットを活用して土日祝日を含めご相談を受け付けています。また、SNSをはじめとするデジタルコミュニケーションツールを積極的に活用してお客様サポートを行っています。
寄せられたさまざまなお客様の声はデータベースで管理しています。ご指摘のうち、お車の不調や品質、不具合に関する事案については、販売会社と連携してお客様の問題解決に対応し、さらに品質改善にも活用しています。また、商品性や仕様に関するご意見・ご指摘については、関連部門と共有し、さらなる商品力の向上につなげています。寄せられた声のなかから重要な情報は、経営幹部へ定期的に報告しています。
なお、当社ではお客様相談センターの業務を外部委託せず、社員が直接お客様とコミュニケーションを取ることで、高い応対品質を維持しつつ、社内各部門とのスムーズな連携を図ることにより的確にお客様の声を製品やサービスの改善につなげています。

リコールなど市場対応発生時のお客様対応

安全性に関わる不具合によりリコールなど市場対応が発生した場合は、お客様にその情報を速やかにお伝えする体制を整えています。対象車をご利用のお客様にはダイレクトメールなどでお知らせし、早期に販売会社にて点検・修理(無償)を受けていただくようご案内しています。また、リコールの該当の有無や修理の実施状況をお客様ご自身でご確認いただけるよう、当社ウェブサイトに情報を掲載しています。

リコール実績(2024年度)(※9)

国・地域 件数 台数
グローバル 9件 約17.4万台
  日本 8件 約11.2万台
  その他 2件 約6.2万台
  1. 社内データのため、当局公表データと異なる場合があります。複数の国・地域で実施した同一のリコールは1件としてカウントしているため、日本とその他のリコール件数の合計は、グローバル件数とは異なります。
    各国当局からの安全関連の調査依頼に対してはすべて対応しています。

品質教育

品質マインドの醸成

当社では、役員・従業員一人ひとりが自身の業務品質を見つめ直し、クオリティアップを図ることで、製品、人、ひいては企業のブランド力や信頼度などの質的向上に取り組んでいます。その一環として、2014年度から国内全事業所においてパネルや映像などの展示を通じて、社内各部門での品質に関する取り組みを紹介する品質フォーラムを開催しています。
2018年度からは、ミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド(MMTh)、ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)でも実施しています。海外の事業所でも取り組みが定着してきており、今後、実施事業所を拡大していく計画です。
なお、同フォーラムは実施会社の全従業員を対象に開催しています。新型コロナウイルス感染症による制約のなか、2020年度から専用ウェブサイトによるオンライン開催に切り替えましたが、2022年度からは実地開催も一部再開しています。

品質フォーラム参加者数(2024年度)

国内開催 7,960人
海外開催(タイ、インドネシア) 2,570人
  • オンライン開催および実地開催への参加者(延べ人数)

お客様ニーズ把握のために

当社では、従業員一人ひとりが実際の「お客様の声」を聞くことで、お客様の多様なニーズを理解し、考える機会とするために、「お客様の声講座」をさまざまな形式で実施しています。

「お客様の声講座」実施内容(2024年度)

形式 対象者 内容
集合研修 全従業員のうち希望者 お客様相談センターの入電状況、当社品質に対するお客様の声、当社製品へのお褒めの声を共有
入社時研修 新入社員、
キャリア入社社員
昇進者研修 昇進者
部門別研修 対象部門の従業員 上記に加え、対象部門の業務に関連するお客様の声を共有
オンライン配信 全従業員 イントラネットの専用サイトにお客様の声を紹介する動画や記事を掲載

消費者志向の向上のために

当社では、消費者のニーズを把握し、商品やサービスなどの品質向上を図ることを目的に、内閣総理大臣および経済産業大臣の事業認定資格である消費生活アドバイザーの取得を希望する社員を支援しています。
2025年4月時点で企業別では12番目、自動車メーカーとしては2番目となる57人の有資格者が在籍しています(※10)。また、有資格社員の約8割がものづくり・品質に関わる部門に在籍しており、当社のお客様視点でのクルマづくりにその幅広い知識・感性を活かしています。

  1. 一般財団法人日本産業協会調べ

ウェブサイトのアクセシビリティ対応

当社は2024年7月にウェブアクセシビリティ方針を制定しました。当社の企業情報サイトと車種紹介サイトにて日本産業規格JIS X 8341-3:2016「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」に対応することを目標とし、アクセシビリティの確保・向上に取り組んでいます。