持続可能なサプライチェーンの実現

ガバナンス

基本的な考え方

当社および主要海外生産拠点では、材料・部品の調達先、ならびにサービスや広告、物流などの約800社の企業と直接取引があり、さらにより多くのTier2以降の取引先があることから、当社グループの企業活動が多くの企業に影響を及ぼすと認識しています。また、サプライチェーン全体での協働や現地調達を通じて、カーボンニュートラルの実現や品質の向上、地域社会の発展に貢献できると認識しています。
これらの認識のもと、当社グループにおける原材料の調達から、部品および製品の製造、納入に至るすべての過程において、法令遵守はもちろん、環境、人権などに配慮した責任ある行動が重要と考えています。
そこで当社グループは、「サプライヤーCSRガイドライン」と「グリーン調達ガイドライン」を制定し、すべての取引先と共有のうえ、一体となってサプライチェーン全体での持続的な成長をめざしています。両ガイドラインの遵守は、当社グループの調達活動における優先事項であるため、取引先説明会などの機会に際して、当社購買部門の担当役員がサプライチェーン全体に対して徹底を要請しています。

サプライヤーCSRガイドライン

「サプライヤーCSRガイドライン」では、当社の人権方針を踏まえて差別撤廃や児童労働・強制労働の禁止など人権尊重の項目を定め、取引先に対して人権に配慮した取り組みを要請するとともに、第三者機関によるCSR評価受審の要請と、コンプライアンス違反事象が発生した際の措置を明記しています。労働や環境マネジメント、コンプライアンスなどの各分野に関して、当社グループは、すべての取引先と同一の視点で連携して活動を推進しています。
また、バリューチェーンを対象とした環境・人権リスクに関する国内外の法令や要求事項に対応するべく、同ガイドラインの改定について、外部有識者を交えて検討を進めています。

グリーン調達ガイドライン

当社の取引先には次のような「グリーン調達ガイドライン」の要求事項をはじめ、さまざまな取り組みに協力いただいています。また、このガイドラインは、日本はもとより、主要海外拠点でも各国の実状、各拠点の業務内容に合わせて作成し、それぞれの取引先に展開しています。

「グリーン調達ガイドライン」での主な要求事項

  • 環境マネジメントシステムの外部認証取得・更新
  • 環境負荷物質の管理
  • 3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進
  • ライフサイクル環境負荷把握のためのLCA(※1)データ提出
  • 取引先の事業活動における環境負荷低減の取り組み
  • 物流に関わる環境負荷の低減
  1. LCA:Life Cycle Assessmentの略称。生産から廃棄までの環境負荷を算出して評価する方法

マネジメント体制

当社グループは、「持続可能なサプライチェーンの実現」を含むすべてのマテリアリティに関して、各取り組み責任者が長期視点で洗い出しを行ったリスクと機会を確認するとともに、サステナビリティ委員会で中期視点による外部環境およびステークホルダーのニーズと期待を踏まえた取り組み目標を審議・決定し、その進捗を確認することによりPDCAを回しています。
さらに、マテリアリティの見直しなどの重要事項やサステナビリティ全般の活動状況は、取締役会で審議・報告する体制としています。

戦略

リスク・機会とインパクト

リスク
  • サプライチェーンにおける人権侵害・環境破壊などの問題発生による社会的信用の低下や部品/材料の安定調達への悪影響
機会
  • 持続的安定調達による当社のものづくりへの貢献およびサプライチェーン上のESG強化による投資家・ステークホルダーからの評価向上
インパクト
  • 業界団体・行政とも連携したBCP(※2)体制の強化による事業継続
  • 紛争鉱物など、取引先における人権課題への対応を通じてサプライチェーン全体でのCSR推進による人権・環境へのインパクト低減
  1. BCP:Business Continuity Plan

責任のある材料調達

紛争鉱物(錫、タンタル、タングステン、金)、コバルトが武装勢力の資金源となり、深刻な人権侵害が起きています。
当社グループでは紛争鉱物などの調達により人権侵害に加担することがないよう、「サプライヤーCSRガイドライン」に「児童労働の禁止」「強制労働の禁止」「紛争鉱物などの不使用」を明記し、責任ある調達を推進しています。また持続可能な鉱物調達に向け、環境・人権デューディリジェンスを含む新たなポリシーの策定を外部有識者の知見を取り入れながら検討しています。取引先とともに原材料調達の透明性を確保し、社会に対する責任を果たしていきます。

リスク管理

サプライチェーンにおける事業継続計画(BCP)

大規模災害、感染症の大流行、特定部品および材料(半導体など)の生産ひっ迫などが発生した場合に、取引先からの部品供給が途絶え、事業が中断するリスクがあります。そのリスクを回避・緩和するため、サプライチェーンにおける事業継続計画(BCP)の取り組みとして、リスクと影響の早期把握、代替取引先や代替部品の検討などの対策を講じています。
具体的には「サプライチェーンリスク管理システム」を構築し、取引先に当該取引先工場および海外を含めたTier2以降の取引先を登録していただくことで、リスク対象の取引先の迅速な絞り込みを可能にしています。さらに、取引先の被災・被害状況、特定部品および材料の生産ひっ迫による影響、当社生産計画への対応などについて、当社・取引先双方で情報交換を行い、対策を講じることができる仕組みを整備しています。

ガイドラインへの合意書および適合宣言書による確認

当社は、人権侵害を発生させないことなどを含め適正取引を行っており、取引価格や納期を各取引先と十分協議のうえ決定しています。
また、「サプライヤーCSRガイドライン」および「グリーン調達ガイドライン」を取引先に確実に遵守いただくために、「サプライヤー合意確認書」と「製品含有環境負荷物質の使用制限適合宣言書」の提出をお願いしています。新規取引先に対しては、これらの書類を提出いただいたうえで取り引きを開始し、その後も合意状況を継続的に確認することで、実効性の担保を図っています。
当社の主要海外拠点であるミツビシ・モーターズ(タイランド)・カンパニー・リミテッド、ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア、ミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーションでも同様の取り組みを展開し、海外生産拠点の取引先からも確実に「サプライヤー合意確認書」を提出いただいています。

お取引先様相談窓口の設置

経済産業省策定の「自動車産業適正取引ガイドライン」に則した適正取引を推進する取り組みとして、当社調達部門の取引先を対象とした「お取引先様相談窓口」を設置しています。この窓口を通じ、取引先よりご意見やご指摘をいただき、当社の調達活動における法令違反や不正・不当行為、人権侵害など、コンプライアンスの問題や懸念を早期に発見し、迅速な改善につなげることで、よりいっそうの適正取引の確保に努めています。

指標および目標

長期目標(2030年) 調達・物流領域における取引先・輸送業者との連携を通じたCO2排出削減活動を推進
中期目標 社会的要求であるCSRに対して取引先の意識向上と改善に向けた取り組みを促す
  • CSR活動の重要性の説明による第三者機関でのCSR評価の促進とスコア改善
  • 新出部品の取引先選定時や毎年の取引先評価でCSRを評価し、取引先選定の判断基準の一つとする
  • 取引先と調達領域でのCO2排出量削減に向けた活動の定着化
  • 取引先および業界団体(JAMAなど)と連携した調達領域でのCO2削減活動やCO2削減量把握手法の確立
  • CO2排出量をコスト換算し、新出部品の取引先選定時の判断要素として考慮

2024年度の取り組み

取引先とのコミュニケーション

サプライチェーンマネジメントにおいて、取引先への適切な情報提供や双方向コミュニケーションは欠かせません。
当社は毎年、年度末に次年度に向けた調達方針の説明会を開催し、約300社が参加しています。また、取引先経営幹部と当社幹部との個別懇談会も毎年開催し、経営者レベルで密接なコミュニケーションを図っています。これは取引先約180社の自主組織である「三菱自動車協力会」が実施している1回当たり20社程度の小規模懇談会で、2024年度は計9回、懇談を行いました。

第三者評価によるサプライチェーンでのCSRの向上

当社は、取引先においてCSR活動をレベルアップいただくことを目的に、第三者による「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4分野に関わるCSR評価を実施しています。
2024年度は、多くの取引先に第三者評価を受審していただきました。
2025年度も継続して評価を受審していただく取引先を拡大しつつ、すでに受審済みの取引先(発注金額ベースで全体の約9割)の評価スコアの向上に注力していきます。

取引先における品質向上の支援

当社グループでは、取引先の品質に対する監査や、取引先が実施するセルフチェックへの協力といった活動を定期的に実施し、サプライチェーン全体の品質向上に取り組んでいます。
2024年度は取引先92社104工場に対して工程監査を実施し、指摘事項はおおむね3カ月以内に改善していただきました。工程監査は、前回監査の結果により監査周期を1~3年に定め実施しています。品質セルフチェックは毎年310社の取引先に実施していただき、各社セルフチェックで発見された弱点の改善を図っていただいています。加えて、セルフチェックの全社の傾向分析結果を全取引先へ展開し、改善を促進するなど取引先とのコミュニケーション向上ならびに品質向上に積極的に取り組んでいます。
また、各取引先の品質実績を数値化したサプライヤースコアカードを毎月発行することで各社の課題を明確化し、迅速かつ的確な改善対策につなげています。特に重大な不具合に対しては、取引先と共同で原因の分析や対策の妥当性を検証し、確実な再発防止を図っています。さらに、お客様に安心して当社の製品をご利用いただくために、部品納入時の不具合の発生を未然に防止する活動についても取引先と共同で実施しています。

現地調達の推進

主要生産拠点が所在する国別部品購入額比率(2024年度)

当社グループの海外拠点においてはコストの最適化を目的とし、現地調達の効果があり技術的に成立するものは、できる限り現地取引先から調達することを基本方針としています。また、すでに現地調達を行っている部品においても、構成部品などの現地調達を進め、さらなるコストの最適化を推進しています。
なお、新規取引先については、事前に体制監査を実施して、開発能力、生産能力、品質管理能力などを評価し、必要に応じて改善指導を実施しています。また、現地取引先への支援として、日本の取引先と現地取引先との合弁や技術提携などの橋渡しも行い、現地の雇用創出、技術力向上など地域への貢献にも取り組んでいます。

従業員教育・研修(単体)

対象者 内容
全従業員
  • 下請法の周知(eラーニング)
調達部門
(新入社員、キャリア入社者、他部門からの異動者)
  • 「サプライヤー CSRガイドライン」および「グリーン調達ガイドライン」の再周知
  • CO2排出量削減活動の取り組み事例共有

社外イニシアチブへの参画

  • 一般社団法人日本自動車工業会
  • パートナーシップ構築宣言

その他