事業等のリスク

事業等のリスク

(1)市場及び事業に係るリスク(オペレーショナルリスク)
① 部品・原材料調達の影響

当社グループは、製品の品質、コスト競争力向上の観点からグローバルに原材料、部品等を調達しており、部品・材料により集中発注、複数発注等、最適な発注形態を取ることとしておりますが、パラジウムやロジウム等、産出量が少ないだけでなく、産出が特定の国や地域に限られる希少金属も使用しております。
そのため、原材料、部品等の需給状況の急激な変動、調達先の国における政情の変化・経済安全保障に関わる輸出入規制の強化、自然災害の発生等の理由により、それらの調達先からの供給が停止した場合、又は適時に競争力のある価格で調達ができない場合には、当社製品の生産の遅延・停止やコストの増加が生じるおそれがあります。
また、当社グループの人権尊重の取り組みにかかわらず調達先において人権侵害が発生又は発覚した場合には当社グループのレピュテーションが毀損される可能性があります。
これらのリスクは、当社グループの中長期的な事業計画に与える影響も大きく、対策の重要性はより高まっております。当社グループでは、事業・業績への影響を最小化する為、サプライチェーンの見直し及び強化を継続的に行っておりますが、地政学リスクの高まりを受け、本事業年度、関連部門が参画する形で全社横断的なチームを立上げ、更なる対策強化を検討・実行中です。しかしながら、これらのリスクが顕在化する可能性はあります。

② 製品の品質・安全性の影響

当社グループは、製品品質の改善のため、市場からの情報に基づき関連部門が連携して迅速に不具合原因の究明及び対策を実施すること、また、潜在リスクの検証を適切に行うことに努めております。
当社グループによる製品及びサービスの品質向上及び安全性の確保の努力にかかわらず、製品の欠陥又は不具合によるリコール又は改善対策等が大規模なものとなる場合、あるいは製品の欠陥又は不具合による大規模な賠償請求がお客様からある場合には、多額の費用負担、当社製品への評価、ブランド・イメージの毀損及び販売の低下等により、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 法規制等の影響

当社グループは、事業を展開する各国において自動車業界に関連する排出ガス、燃費、騒音、化学物質、リサイクル、水資源等の環境に係る様々な法律や政府による規制の適用を受けています。
また、消費者保護規制、事業及び投資に対する許認可、労働規制、外国為替規制、安全保障目的を含む輸出入貿易規制、各種税法(関税含む)、独占禁止法、贈収賄防止法等内外の広範な法令の適用を受けております。
これらの規制や法令に対応するため、当社グループは、規制や法令の遵守体制を整え、各担当部門が違反の未然防止の対策を講じ、コンプライアンスに係る案件を察知した場合には速やかに対応する体制も整備しております。しかしながら、将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、法令違反が生じ、あるいは対応の内容、効果、迅速性等が不十分との指摘を受ける可能性があります。その場合、規制当局による行政調査の対象となったり、罰則を受けたり、あるいは関連する訴訟の当事者となる等の可能性があります。これらの可能性が現実に生じた場合には、当社グループのコンプライアンス・レピュテーションに悪い影響を及ぼしたり、当社グループの経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。

④ 訴訟その他の法的手続の影響

当社グループは、事業活動を行っていく中で、ユーザー、取引先、第三者などとの間で様々な訴訟その他の法的手続の当事者となる可能性があります。それらの法的手続において、あるいは現在進行中の法的手続において、当社に不利な判断がなされた場合、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、法的手続きのうち製造物責任に関する損害賠償請求訴訟については、敗訴等の場合の損害賠償金をカバーし得ると思われる製造物責任保険に加入していますが、想定外の内容の判決が出るなどした場合、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 知的財産権侵害の影響

当社グループは、技術・ノウハウ等の知的財産の保護の対策を講じるとともに、第三者の知的財産権の侵害防止の対策を講じております。しかしながら、当社グループの知的財産権が不法に侵害されて訴訟費用が発生した場合、又は、第三者から予期せぬ知的財産権侵害の指摘を受けることに伴い、当社グループの製品の製造販売の中止、想定外のライセンス料支払、賠償金支払、当社製品への評価及び需要の低下等が生じた場合、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 情報技術及び情報セキュリティの影響

当社グループの運営や製品・サービス等に利用する情報及びこれを保存するネットワーク、システム等の情報技術は、委託先管理のものを含め、多岐にわたります。コネクティッドサービスやIoT技術の進展を踏まえ、当社グループは、ハードウェア・ソフトウェアの安全管理対策を、個人情報保護対策を含めて実施する他、当社グループ従業員への情報セキュリティ教育を実施しております。それにもかかわらず、当社グループ又は取引先においてインフラや製品・サービス等へのハッキング・サイバー攻撃、当社グループ内部若しくは委託先での管理不備ないし人為的な過失、又は自然災害等の発生により、当社技術情報等の機密情報・個人情報等の漏えい、重要な業務やサービスの停止、不適切な事務処理、又は重要データの破壊・改ざん等が発生し、当社グループのブランド・イメージや社会的信用の低下による販売の減少、法的請求、訴訟、賠償責任若しくは制裁金や罰金の支払義務発生、又は生産停止等の運営の支障が生じた場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2)事業戦略や競争力維持に係るリスク(戦略リスク)
① 営業戦略、競合他社動向への対応の影響

自動車業界では現在、世界的な規模で激しい競争が展開されています。また、電動化に加え、テクノロジーの発展により、人の移動とモノを運ぶための手段であった自動車の概念が大きく変わり、「100年に一度」の大変革の時代を迎えています。当社グループは、「安定収益基盤確立に向けた地域戦略」「カーボンニュートラル対応の促進」「デジタルトランスフォーメーション、新事業への取り組み」を主要なチャレンジとする中期経営計画「Challenge 2025」を推進し、三菱自動車らしい製品や体験をお客様に提供することで、販売台数やマーケットシェアの維持拡大、及び収益力の向上に努めております。しかしながら、今後、そういった戦略が想定通りに進まず、競合他社に対して優位な施策を講じることが出来ない場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 製品・技術開発の影響

当社グループは『環境×安全・安心・快適』を実現する技術に裏付けられた信頼感により『冒険心』を呼び覚ます心豊かなモビリティライフを提供するために、地域毎の多様な要請、カーボンニュートラル対応等、自動車メーカーに求められる技術や姿勢が急激に変化している中において、お客様の価値観とニーズに対応した有用かつ現実的で使いやすく、「三菱自動車らしさ」を具現化した新技術や新製品をタイムリーに投入することが重要と考え、開発に日々取り組んでおります。しかしながら、きめ細かな調査に基づく研究・開発であっても、お客様の価値観とニーズを十分にとらえることができない場合、又は内部・外部的な要因により、新技術や新製品を、タイムリーに開発しお客様に提供することができない場合には、販売シェアの減少、売上高及び収益力の低下を引き起こす可能性があります。

③ 他社との提携等の影響

当社グループは、経営資源の効率化や相乗効果を期待し、研究開発、生産、販売等の分野において共同出資関係を含む他社と業務提携・合弁による事業運営を行っておりますが、相手先の事業戦略の変更、当事者間の提携方針の不一致、出資比率の変更等により、提携・合弁関係を変更する又は維持できなくなる可能性や期待どおりの成果を生まない可能性があります。期待どおりの成果を生まない場合、提携・合弁先の財務状態が悪化した場合、又は出資関係の変更・大幅な提携の変更・提携の解消が生じた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 人事労政戦略の影響

当社グループは、高度な専門性を持つ人材の確保と、活躍機会の提供が極めて重要であると考えており、要員構成の是正による適切な人員配置、役割に基づいた処遇制度の整備、多様な働き方を支える風土の醸成と、個々の成長を促す仕組みづくりを推進しております。
しかしながら、採用難や労働市場の流動性の高まりにより、計画通りの採用や定着化が進まなかった場合には、長期的に当社グループの競争力が低下する可能性があります。
また、当社グループではグローバルに事業を展開し、持続的に成長するためには、人権尊重の取り組みが社会的責任を果たしていく上で不可欠な要素であると認識しており、「人権方針」で制定した差別の禁止や不当な労働慣行の排除等に取り組んでいます。しかしながら、当社グループ及び関係者が人権上問題のある行動を取った場合には、お客様の信用・信頼を失う、又は社会的信用の低下等によるブランド・イメージの毀損等が事業基盤に影響を与える可能性があります。

⑤ 気候変動の影響

当社グループは、燃費/CO2排出規制やZEV規制の強化、カーボンプライシング等の導入拡大を想定し、当社グループの環境への取り組み方針と目標を定めた「環境計画パッケージ」に基づき、電動化の推進や各拠点での省エネルギー活動と再生可能エネルギーの導入等を進めております。しかしながら、想定を超えて気候変動政策が強化され、燃費/CO2排出規制やその他規制の更なる強化への対応により原価が高騰する場合、又はカーボンプライシングなどの導入拡大によって生産や調達の原価が高騰する場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、グローバルでのCO2の削減が進まず、気温が上昇し続け、現在よりも広域で台風、豪雨等の自然災害が頻発・激甚化することに備えて、事業継続計画の策定などの適応策の推進にも努めております。しかしながら、当社グループや取引先の生産拠点等が所在する国・地域において、想定以上の洪水等の自然災害の頻発や激甚化により、部品調達、製品の生産や販売、物流等が遅延又は停止する場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3)金融・経済に係るリスク(財務リスク)
① 為替変動の影響

海外売上高比率が約8割を占める当社グループでは米ドル、ユーロ、豪ドル等の外貨建債権を有しており、また、タイ子会社にてグローバルでの輸出生産を行っていることから、タイバーツを中心に外貨建債務も有しております。
円と外国通貨の為替相場が変動すると、外貨建資産(売掛金等)や外貨建負債(買掛金等)の価値が増減するため、当社グループの円ベースの損益に影響を及ぼします。
現在、インドネシア生産車の輸出、タイ生産車の現地販売拡大等、為替影響低減のために必要な措置を適宜進め、為替相場変動の影響削減に中長期的に取り組んでおりますが、大幅な為替変動が発生した場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 市場環境変化の影響

当社グループは、世界各国で事業を展開しており、様々な国、地域で生産活動を行い、製品を販売しております。 これらの事業活動は、それぞれの国、地域の経済低迷、金融危機などにより影響を受ける可能性があり、また、輸送費の上昇、輸送のための船腹が確保できない、又は手配が遅れる場合には、生産・販売活動に影響を及ぼし、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 取引先等の信用リスク

当社グループは、事業活動を行っていく中で、販売業者や、販売金融事業による顧客・リース先等の取引先の信用リスクを伴っております。
販売業者等の取引先に対する信用リスクについては、カントリーリスクや取引先の財務状況に対する継続的な評価を行いながら適切な債権保全を図ることで、その抑制に努めております。また、販売金融事業から生じるリスクに対しては、厳格な審査・回収管理を行い、破綻の発生及び回収不能額の抑制に努めております。しかしながら、外部環境等の悪化等を要因とし、これらのリスクに基づく損失が当社グループの想定を上回る場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 資金の流動性の影響

当社グループは、金融機関からの借入に加え、コマーシャル・ペーパーの発行等により資金調達を行っております。当社は事業環境の悪化による資金需要の増加に備えるべく、コミットメントライン約1,500億円に加えて、海外子会社においても資金調達枠を設定することで十分な流動性を確保すると共に、メインバンクをはじめ取引金融機関との良好な関係性の維持に努めております。しかしながら、経済・金融危機等の発生、又は当社グループの信用格付けの引き下げ等により、金融市場から適切な条件で必要とする金額の資金調達ができなくなった場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4)事業の継続に係るリスク(ハザードリスク)
① 戦争・テロ・政治不安・治安の悪化の影響

当社グループは、日本及び世界各地に開発、製造、販売等の拠点の施設を有しており、当該各地でテロ、戦争、内戦、政治 不安、治安不安等が発生することにより、当社グループ又はその取引先の操業の中断等の重大な支障をきたす場合があります。
かかる状況を想定し、経済安全保障クロスファンクショナルチームにより想定される支障の軽減策を準備・実行すると共に、仮にこうした事象が発生した場合には、関係部門が参画した対策会議を立ち上げ、全社横断的な観点で対応を行っております。
しかしながら、想定を超える規模でテロ、戦争、内戦、政治不安、治安不安等が発生し、部品調達、製品の生産や販売、物流等が遅延若しくは停止する場合、又はコストの増加をもたらした場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 自然災害や事故、感染症等の影響

当社グループは、日本及び世界各地に開発、製造、販売等の拠点の施設を有しており、当該各地で大規模な地震・台風・豪雨・洪水等の自然災害や火災等の事故、感染症の発生により、当社グループ又はその取引先の操業の中断等の重大な支障をきたす場合があります。
これらに備え、当社グループ事業へ影響が大きいと想定されるシナリオに基づき、BCM*委員会において事業継続計画を策定するとともに、定期的な訓練による有効性検証を行い、今後の新たな脅威に備えております。
しかしながら、想定を超える規模で自然災害、事故、感染症等が発生し、開発、製造、販売等の拠点の施設の損壊、又は部品調達、製品の生産や販売、物流等が遅延若しくは停止する場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
*:Business Continuity Managementの略

以上は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。
かかるリスク要因のいずれによっても、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。