新世代の電動車開発物語

電動SUVの新境地へ——『エクスフォースHEV』が示した進化の到達点
HEV開発ストーリー後編

電動SUVの新境地へ——『エクスフォースHEV』が示した進化の到達点 電動SUVの新境地へ——『エクスフォースHEV』が示した進化の到達点

三菱自動車は、『エクスパンダーHEV』で始まったHEV開発の革新をさらに押し広げ、次世代コンパクトSUV『エクスフォースHEV』を誕生させます。こだわったのは、三菱自動車の強みである“壊れないSUV性能”をどこまで磨けるのか。
この難題に真正面から挑み続けた、三菱自動車の電動技術の集大成ともいえるプロジェクトでした。

『エクスパンダーHEV』からつながる「本物のSUV性能」への挑戦

アセアンで販売されるコンパクトSUVの多くは前輪駆動を主軸としていますが、一般的には不整路走行には耐えられず壊れてしまう例は少なくありません。ただ、三菱自動車は「誰でもどのような道でも安全・安心に走行できて家族を守れるが三菱のSUV」という信念のもと、“本物のSUV性能”を妥協なく追求してきました。コンパクトSUVであってもユーザーが期待するオフロード走行性能を確実に満たすこと――これが開発チームのこだわりでした。先に発売した『エクスパンダーHEV』においても、“見た目だけのSUVではなく、前輪駆動でも不整路を壊れることなく走れる性能”を掲げてきました。『エクスフォースHEV』でもその哲学は揺らぐことはありません。

『エクスフォースHEV』

では、どうすれば“壊れないクルマ”を成立させられるのか。全体開発統括の上平真が考えるその答えは、ハードウェアの強度だけではなく、ソフトウェアによる「壊れる直前の挙動の見極め」にありました。例えばABSやASCの制御スピードはコンマ数秒ですが、それでは不整路での破損抑制には間に合わない。もっと素早く検知できる制御システムが求められました。ただ、守ることを最優先して制限を強めすぎれば、「今まで走れていたラフロードで急に走れなくなる」という事態を招きかねません。設計・試験チームは、どこが“ギリギリの境界”なのかを徹底的に見極め、走破性を損なわずに保護を成立させる調整を積み重ねてきました。最終的にお客様が公道で不満を感じないかどうかについては、MMTh(Mitsubishi Motors (Thailand)Co., Ltd)で現地走行テストを担っているタニソーン・シンパッタナコーン(愛称シャイン)らによる現地での何万キロにも及ぶ実走行と、電動パワートレイン開発を統括した水井俊文の膨大なデータ解析によって一つひとつ確かめていきました。
さらに、世界ラリー選手権(WRC)で培ってきた四輪駆動の走行性能を前輪駆動で実現するための鍵となったのが、モーター制御と三菱独自の四輪統合制御、その軸となるAYC(アクティブヨーコントロール)の採用です。最低地上高を約200mm確保しながら、重い駆動用バッテリーを車体中心のシート下にレイアウトして、ガソリン車よりも重心を下げたパッケージを活かし、モーター・エンジン・ブレーキを統合制御すれば、競合車よりもタイの激しく変わる道路環境で優れた性能が発揮できると考えました。

技術刷新と組織改革が生んだ“次世代HEVの到達点”

現地タイの視点と日本の技術を融合させて、モーターとエンジンを最適に組み合わせるハイブリッドシステムを高効率に作用させた結果、『エクスパンダーHEV』はエンジンモデル比で市街地燃費約34%、総合燃費約15%向上(いずれもNEDC*¹)という明確な成果を示しています。多人数乗車や長距離移動が一般的なアセアン地域では、こうした実用燃費の向上が大きな魅力になります。また、前席まわりや床下構造を専用設計とすることで衝突安全性も確保しており、単なる燃費追求にとどまらず、実際の使用環境を見据えた価値向上も実現しました。
また、『エクスフォースHEV』は燃費面でも大きく向上します。従来の湿式多板クラッチから摩擦損失の少ないドグクラッチへ変更、高速巡航時にはモーターを完全に切り離す機能を持ったことで不要な抵抗を削減。結果として、24.4km/L(NEDC)というクラストップ水準の燃費を達成。エンジンは『エクスパンダーHEV』と同じ1.6L MIVECをベースに高回転・高出力化し、40%を超える高い熱効率によって燃費向上にも貢献しています。タイのお客様がハイブリッド車に強く求めるのは燃費性能です。どれほど走行性能が優れていても、燃費が悪ければ選ばれない。そんなタイ市場の厳しいニーズに『エクスフォースHEV』は確かに応えたのです。
また、二段階の減速比を持つトランスアクスルを採用し、低速では力強い加速性能を確保しつつ、高速では静粛かつ効率の良い走りを実現しました。

  1. :車の燃費やCO2排出量を測るための試験方法を用いた表記の一つ。タイで一般的に使用されている。

燃費性能と走行性能を両立したHEVシステムを搭載した
『エクスフォースHEV』と(エクスパンダーHEV』

電動車開発を次のステップへと導く

上平は「ドライバーや同乗する皆さんが快適に過ごせ、行ったことがないはじめての道や場所にも気軽に踏み出せる。そして運転が得意な人にも苦手な人でも、クルマが自分たちを守ってくれて、確実に目的地まで到着できる。こんな一台はありません」と確かな手応えを示し、水井も「HEVで突き詰めた知見をPHEVへ還元することで、今後も続いていく当社の電動車のレベルを底上げできたと確信しています」と述べました。
シャインは「三菱車の魅力は、どのような道でも楽しく走れることです。『エクスフォースHEV』によって、その魅力をタイのお客様にも体感していただけるのが本当にうれしい。私たちは非常に良い仕上がりになったと 感じていましたが、タイのお客様からの反響は予想以上でした。もちろん私も購入しました」と語っています。


3人の言葉が重なることで、『エクスフォースHEV』が単なる新型車ではなく、三菱自動車の電動車開発を次の段階へ押し上げる節目となったことがはっきりと浮かび上がります。これまで培われてきたEV・PHEVの技術は、HEV開発によってさらに研ぎ澄まされ、三菱自動車の電動化戦略はここから新しい章へと踏み出しました。

  • 【上平真】
    HEV/PHEV開発統括として開発をリード。過去に担当した車両は「アウトランダーPHEV」「エクリプス クロスPHEV」「エクスパンダーHEV」「エクスフォースHEV」「ランサーエボリューションⅩ」等

  • 【水井俊文】
    車両の走行システム開発を担当。タイ一般道での品質確認試験をとりまとめ、HEVシステムの信頼性を実際の走行データに基づいて立証。
    また、MMTh営業部門への技術説明やメディア向け試乗会の技術フォローなど部門間の橋渡し役も担う。

  • 【タニソーン・シンパッタナコーン(愛称シャイン)】
    車両の動的性能の評価を担当。開発初期よりタイの走行環境や市場要望をフィードバックした。
    また、タイ一般道での品質確認試験やメディアへの商品アピール活動も担当。

2026年7月

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