生物多様性への取り組み
当社は、事業における土地利用が地域の生態系に与える影響を把握するため、主要な国内工場において、いきもの調査を実施してきました。
2019年度のいきもの調査で、京都工場はかつて地域に見られた植物や昆虫が局所的に生き残っている場所(レフュージア)であることが分かり、地域の生物多様性の保全のため2020年度にビオトープ(※1)を工場内の「憩いの広場」につくりました。
※1:ビオトープ:生物が自然な状態で生息している空間
「憩いの広場」の池のかいぼりによる生物が生育しやすい環境づくり
「憩いの広場」の池には、希少水生植物のオニバスやミズアオイ、アサザ、昆虫のヤゴ(トンボ類の幼虫)、ミズカマキリなどが生育しています。
これまでは池に水流がなかったため、定期的にホースから水を補給していましたが、充分な水循環が行われず、池底に栄養分を多く含む泥が蓄積し、その結果、アオミドロが大量発生し水生植物が生息しづらい環境になっていました。そのことをふまえ、2022年度からは太陽光パネルで発電した電気をポータブルバッテリーに蓄電し、小型の水中ポンプを稼働させることで水流をつくり出し、夏場の水温上昇を抑えられたことにより、アオミドロの発生が少なくなり、水生植物の生育阻害も改善されました。
![太陽光パネルおよびポータブルバッテリー](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_1.jpg)
太陽光パネルおよびポータブルバッテリー
![水中ポンプ稼働の様子](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_2.jpg)
水中ポンプ稼働の様子
2023年3月、池の水質改善のため、社員14名で池の水を抜いて清掃する「かいぼり」を実施しました。ポンプで池の水を抜き、底に溜まった泥を玉網ですくい除去したことで、池底が見えるほど水質が改善しました。かいぼり後には、オニバスとミズアオイの種を植え付けるとともに、バードバス(小鳥の水浴びや水飲み用の水盤)も設置し、より多様な生物が集まりやすくなるような環境づくりを行いました。
![かいぼりを行う社員](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_3.jpg)
かいぼりを行う社員
![オニバス種の植え付け](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_4.jpg)
オニバス種の植え付け
![かいぼり後の池](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_5.jpg)
かいぼり後の池
生物モニタリング調査の実施
かいぼりに合わせて、生物多様性の取り組みをサポートする(株)地域環境計画の協力のもと、簡易的な生物モニタリング調査を行いました。かいぼりで採取した泥の中から生物を探し、一時的に保護、生物の撮影・同定(生物の種類を特定)の後、池へ戻しました。
![生物を保護している社員①](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_6.jpg
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生物を保護している社員①
![生物を保護している社員②](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_7.jpg)
生物を保護している社員②
![保護した生物](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_8.jpg)
保護した生物
調査結果
今回の調査では、「イトトンボ科」が新たな種として確認されました。また、ビオトープ池内では、ギンヤンマ、ショウジョウトンボ、シオカラトンボの幼虫も確認されました。ギンヤンマ、シオカラトンボは成虫も確認されていることから、構内で“成虫→産卵→幼虫→成虫”という生活史(※2)を完結していることが考えられます。
※2:生活史:生物個体が出生して、成育後、次の世代をつくって死亡するまでの生活過程。
![「イトトンボ科」の幼虫](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_9.jpg)
「イトトンボ科」の幼虫
![「ギンヤンマ」の幼虫](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_10.jpg)
「ギンヤンマ」の幼虫
![「ギンヤンマ」の羽化](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_10.jpg)
「ギンヤンマ」の羽化
今後の取り組み
今回の池のかいぼり、生物モニタリング調査の結果、ひとつの種のトンボの生活史の完結が確認されたことから京都工場の「憩いの広場」は生物の生息場所としての機能が高まってきていると思われます。今後もビオトープの定期的な維持管理や改修を行うとともに、フタバアオイなどの京都在来種の植栽場所拡大や新しい植物の追加植栽などを実施し、「憩いの広場」を通じて生物多様性の保全活動に取り組んでいきます。
![憩いの広場の池(2023年6月現在)](/jp/sustainability/sustainabilitynews/2023/07/images/19_12.jpg)
憩いの広場の池(2023年6月現在)
担当者のコメント
今回で3回目の実施となったかいぼりでは、役割分担を事前に打ち合わせし、スムーズに作業に取り組むことが出来ました。かいぼりは力仕事中心で、これまでは主に男性社員が参加していましたが、今回は、かいぼりで採取した泥からの生物保護など、女性社員も参加しやすい役割を設定したことにより、より多くの社員が生物多様性について考える機会を提供できたと思います。これからもかいぼりなどの生物多様性の取り組みを実施し、情報発信していきますので、たくさんの方に知っていただけたら嬉しいです。
また、2023年度は池の改修工事を実施していく予定ですので、今後の「憩いの広場」の発展が楽しみです。