「走る蓄電池」が支える日常と非常時

2026年09月07日

三菱自動車のPHEVと災害支援の15年

その一台に、支えられた人がいる

停電した避難所を照らし、診療所の機能を支え、地域の防災にも力を発揮する。三菱自動車のPHEVは、災害の現場で「移動・運搬するためのクルマ」を超えた役割を果たしてきました。後編では、国内地区統括部で自治体向けの営業・企画を担当する太田岳志に、佐渡市での大雪被害などの事例を通して見えてきたPHEVの実力と、防災や医療の現場へと広がる活用の可能性について話を聞きました。(前編はこちら

PHEVが証明してきた価値 佐渡市での経験

2022年12月、佐渡市は大雪による大規模な停電に見舞われました。この際、災害時協力協定に基づいて派遣されたPHEVが、避難所や診療所の電源確保に活用され、佐渡市はその心強さを実感したといいます。
12月18日から19日にかけて、大雪による倒木・倒竹の影響で、市内138地区に停電が発生。一日最大7,800戸、延べ17,200戸で電気が止まりました。追い打ちをかけるように12月23日から24日にも大雪となり、停電の復旧までに9日を要しています(一部地域では12月29日に復旧)。この間、災害時協力協定に基づいて派遣されたPHEVは、避難所や診療所の電源確保に活用。避難所では照明や暖房の電源として利用されました。診療所では、カルテや会計が電子化され、電気が失われれば日常の診療にも支障が生じます。停電が長期化する中、PHEVは診療所のパソコンなどの電源として使われ、地域医療を支えました。
また、当初使われていた発電機には騒音や燃料補給といった課題がありましたが、PHEVは作動音も静かで、長時間給電できる点も大きな利点だったといいます。佐渡市の担当者からは「佐渡市では電気自動車も導入していますが、フル充電で使用できる時間はPHEVの半分以下。長時間の停電が想定される災害時には、PHEVの派遣が非常に有効であると感じています」との声がありました。また、派遣先の避難所や診療所は山越えが必要な地域にあり、除雪してもすぐに積雪してしまう厳しい道路状況でしたが、SUVタイプのPHEVなので悪路でも問題なく走行し、現地ではこの点も「このクルマがあってよかった」と感じたポイントだそうです。この経験を踏まえ、佐渡市はその後、地区避難所にV2H機器を設置し、電動車から施設全体へ給電できる体制も整えています。


実際に派遣された車両と、車両から給電した電力を診療所で使用していた当時の様子の再現

なぜPHEVなのか 現場が証明した「走る蓄電池」の実力

三菱自動車のPHEVが災害の現場で評価される理由には、大きく4つの強みがあります。1つめは、スイッチひとつで1500Wの大容量から給電できること。『アウトランダーPHEV』は車内にコンセントが標準装備されており、ハンドル横のスイッチを押すだけで、誰でも迷わず電化製品が使えます。「被災地では、あまりクルマを触ったことがない方もいます。エンジンをかけるのと同じ手順で起動し、スイッチ1つ押せば充電できるため説明がなくても使っていただきやすい。実際に利用された方からも喜んでいただけることが多く、その手軽さは大きな価値だと感じています。夏なら扇風機やスポットクーラー、小型冷蔵庫、冬なら電気ストーブや電気ポット。1500Wあれば、場面に応じてさまざまな家電を組み合わせて使うことができます」
2つめは、「Vehicle to Home(V2H)」機器と接続することで、住宅全体に電力を供給できる機能。満充電・満タンの状態であれば、最大で一般家庭約11日分もの電力を確保できると想定されています。3つめは、広い荷室。緊急時にはさまざまな物資を運搬する車両としても活躍します。そして4つめが、悪路でも安心な4WD性能です。「地震によって路面がガタガタになってしまうような状況でも、三菱自動車の4WD技術であればしっかり走って、被災地の必要な場所まで人や物を運べる。そこはかなり誇らしい部分です」。

なかでも太田が強調するのが、純粋なEVにはない、PHEVならではの安心感です。「ピュアな電気自動車になると、電欠すればレッカー移動が必要になることもあります。使う側からしても、残りの電力量を気にしながら電気を使わなければなりません。一方、三菱自動車のPHEVはガソリンを確保できれば、その分発電が可能です。バッテリーだけでも十分な電力を供給でき、発電を組み合わせることもできる。災害時の対応に関しては、ベストなクルマだと思っています」。
この実力は、令和8年熊本地震(2026年8月)でも期待され、三菱車が派遣されました。熊本市でも震度5強を観測したこの地震で、太田の頭にまず浮かんだのは「今、あの地域に何が必要か」という問いだったといいます。地震発生から数日後には、『アウトランダーPHEV』と『デリカD:5』が西日本三菱自動車販売(株)から熊本市へと運ばれ、PHEVの給電機能はもちろん、両車によって車中泊のニーズにも応えるかたちで活用されています。停電がいつ復旧するかわからないなか、「移動する蓄電池」として、そして「暮らしの場」として、三菱自動車のクルマは形を変えながら被災地の人々を支え続けています。

支援の輪は、医療の現場へ、そして「自分ごと」へ

三菱自動車のPHEVは、医療の現場でも新たな役割を担い始めています。神奈川県川崎市と三菱自動車は、PHEVを活用して人工呼吸器の専用外部バッテリーを充電する検証を行いました。「災害時に停電してしまうと、人工呼吸器を使っている方々にとっては命に関わる問題になってしまいます。そこを課題に感じていた福祉課の方と一緒に実証実験を行い、ご家族にもご説明することができました」。太田が川崎市との取り組みを通じて見てきたのは、自治体が抱える防災上の課題と、PHEVの機能をどう結びつけるかという点。川崎市とは災害時協力協定を締結して終わるのではなく、実際にどのような場面で電動車を活かせるかを一緒に考えています。 同様の取り組みは他の自治体にも広がっています。大阪市と締結した協定でも、医療機器への給電を想定。また災害時にPHEVができることを、給電という機能だけで考えるのではなく、その電気を“誰が、何のために必要としているのか”まで考える。自治体との対話を重ねることで、太田自身もその役割の広がりを感じています。
「どの自治体も、医療機器をどうにかしたいという想いはかなり強い。実証実験の話をすると、うちの自治体もやってみようかなという声を多く耳にします」。
被災地へ電気を届ける。その電気が、明かりになることもあれば、情報を得るためのスマートフォンを動かすこともある。そして場合によっては、医療を支える電源にもなるのです。
太田が自治体を訪ねる際、必ず伝えているメッセージがあります。それは、協定による「共助」だけでなく、「自助」の大切さです。「災害時協力協定は共助です、という説明をしたうえで、やっぱり実際には自助の視点も持っていただけると、いざというときの備えになるのではないか、という話をしています」。公用車の一部を、日頃の使用と両立できる電動車に置き換えておけば、災害時にはそのまま移動可能な電源としても機能します。倉庫にしまわれたままの蓄電池と違い、日常的に使われ、定期点検のたびにメンテナンスもされるため、「いざ災害が起きた時に、実はメンテナンス不足で使えませんでした、ということが起きにくい」と太田は説明します。


自治体向けの営業・企画を担当する国内地区統括部 太田岳志

「備え」のかたちは、日々の暮らしの中に

この仕事のやりがいを尋ねると、太田はこう答えてくれました。「地震はどこで起こるかわからないですし、いつ起こるかもわからない。そうした中で私たちが届けた車両が被災地で役立ち、人々の暮らしや安心を支えていることを実感できるのは、この仕事の大きなやりがいです。一台のクルマが誰かの助けになっていると思うと、うれしいですね」。
災害対応をきっかけに、三菱自動車のPHEVそのものに惹かれていく人たちもいます。太田が自治体を訪ねると、すでにPHEVを個人で所有しているという方に出会うこともあるといいます。「普段から給電機能を活用しているという話をよく聞きます」。災害対応をきっかけに、三菱自動車のPHEVに関心を持つ人も少なくないといいます。
一方で、災害時にPHEVがどのような役割を果たせるのかを、平時から地域の方々に知ってもらう取り組みにも力を入れています。地域の防災訓練の会場には、太田たちがPHEVを持ち込み、実際に家電への給電デモンストレーションを行いながら、住民の方々に「こんな給電ができますよ」と伝える活動を続けています。
三菱自動車は2011年の東日本大震災以来、電動車を、被災地に派遣し続けてきました。電気を自由に取り出せ、自ら発電もできる「三菱のPHEV」を早く届けたい。そうした想いのもと、被災地への支援を続けるなかで、より迅速に車両を届けるための仕組みを模索し、試行錯誤を重ねてきました。その積み重ねが、全国273の自治体との協定という、共助の輪につながっています。しかし、こうした取り組みに終わりはありません。平時からの備えと、いざという時の支援。三菱自動車は、その両方を支える取り組みを、これからも全国各地で続けていきます。

2026年9月

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