2005年、三菱自動車とMMSPは大幅に改良を加えたランサーWRC05で世界ラリー選手権(WRC)に参戦した。この年から採用された新たな車両規定では、車両全幅がこれまでの1770mmから30mm拡大され、最大1800mmとなる。ランサーWRC05は、従来型に対しフロントおよびリアフェンダー、リアクオーターパネル、バンパーなどの形状変更を行った。また、この拡幅に伴う改良で、ランサーWRC05には長尺のサスペンション・リンクやドライブシャフトを採用すると同時に、アップライトにも改良を加え、サスペンション・ジオメトリーの最適化を図った。すでに04年10月に開催されたラリー・スペイン(カタルニア)へのテスト参戦で使用したターマック用ダンパーは、ランサーWRC05のワイドボディ化を見据えてデザインしたものであった。
Rd. |
name |
Country |
1 |
Rallye Monte Carlo |
モナコ、フランス |
2 |
Swedish Rally |
スウェーデン |
3 |
Rally Mexico |
メキシコ |
4 |
Rally New Zealand |
ニュージーランド |
5 |
Rally Italia Sardinia |
イタリア |
6 |
Cyprus Rally |
キプロス |
7 |
Rally of Turkey |
トルコ |
8 |
Acropolis Rally |
ギリシャ |
9 |
Rally Argentina |
アルゼンチン |
10 |
Rally Finland |
フィンランド |
11 |
Rallye Deutschland |
ドイツ |
12 |
Rally of Great Britain |
ウェールズ |
13 |
Rally Japan |
日本 |
14 |
Tour de Corse |
フランス |
15 |
Rally Catalunya |
スペイン |
16 |
Rally Australia |
オーストラリア |

エンジンは従来同様、4G63型をベースにしたもので、1月の開幕戦モンテカルロから新型ウェストゲートとアンチラグバルブを採用し、エンジン・マネージメントの改良との相乗効果で大幅な性能向上とチューニングの精密化を図る。また、新たに採用するセミオートマチックのギヤボックスとクラッチは、ステアリングホイールに装着されたパドルを介してクラッチ操作レスのギアシフトを可能とした。ドライバーは前年の発表通り、ハリ・ロバンペラ(フィンランド)、ジル・パニッツィ、ジャンルイジ・ガリ(イタリア)の3名にステアリングを託す。
シーズン開幕戦のモンテカルロでパニッツィは3位表彰台を獲得。三菱自動車チームとしては01年7月のサファリラリー以来、3年6カ月ぶりとなる表彰台圏内でのゴールを果たした。エースドライバーのロバンペラはコンスタントに完走を重ね、全16戦中9戦でポイントを獲得、高い安定感を発揮した。10月には、三菱自動車としては初めての参戦となる母国開催のWRC、第13戦ラリージャパンに3台体制で参戦。三菱自動車にとっては母国・日本で初めて臨む記念碑的な一戦であり、契約ドライバー全員を送り込む総力体制で臨んだ。このラリーではロバンペラが5位入賞、日本のファンを大いに沸かせた。そして最終戦の第16戦ラリー・オーストラリアでは、ロバンペラがチームで今季最高位となる総合2位、ガリが自己最高位タイとなる総合5位でゴールし、ランサーWRC05の着実な進化を証明した。
そして12月、三菱自動車は経営資源の選択と集中をさらに推進する必要があるとし、2006年からのWRCへのワークス参戦を休止し、5連勝中であるダカールラリーへのワークス参戦に集中することを発表した。「ラリーの最前線で戦い続けることは、三菱自動車の商品である市販車の開発に必ず役立つ」という理念は、四輪制御技術や電動化技術に形を変え、現在もSUVなどの市販車に受け継がれているのである。