WRカー規定も施行4年目を迎えたミレニアムイヤーの2000年世界ラリー選手権(WRC)は、トヨタが前年限りで撤退したものの、グループAで戦う三菱自動車を加えると、実に7つもの自動車メーカーがひしめく活況ぶりであり、これは明らかにWRカー規定の効果の表れといえた。開幕戦モンテカルロを制したのは、トミー・マキネンのランサーエボリューションⅥだった。的確なタイヤ選択とドライビングで、マキネンは2年連続のモンテカルロ制覇。続くスウェディッシュラリーでもマキネンは秒差のトップ争いを展開。最終結果は2位で、このラリーの3連覇は逃したものの、まだまだマキネンとグループA仕様のランサーエボリューションの戦闘力が高い次元にあることを周囲に印象づけた。
Rd. |
name |
Country |
1 |
Rallye Monte Carlo |
モナコ、フランス |
2 |
Swedish Rally |
スウェーデン |
3 |
Safari Rally |
ケニア |
4 |
Rallye de Portugal |
ポルトガル |
5 |
Rally Catalunya |
スペイン |
6 |
Rally Argentina |
アルゼンチン |
7 |
Acropolis Rally |
ギリシャ |
8 |
Rally New Zealand |
ニュージーランド |
9 |
Rally Finland |
フィンランド |
10 |
Cyprus Rally |
キプロス |
11 |
Tour de Corse |
フランス |
12 |
Rallye Sanremo |
イタリア |
13 |
Rally Australia |
オーストラリア |
14 |
Rally of Great Britain |
ウェールズ |

だが、本格的なグラベルとターマックの連戦に入ったあたりから、ライバルとのパワーバランスが変化を見せ始める。WRカーに対してハンディを負うサスペンションストロークを補うため、三菱自動車チームは先述の第2戦スウェディッシュラリーでサスペンションのスプリングをダブルスプリング仕様とし、第4戦ポルトガルラリーからはさらに一つ追加してトリプルスプリング仕様とした。また、第5戦カタルニアラリーから一層の軽量化を図った4G63型エンジンを投入。第7戦ニュージーランドラリーからはセンターディファレンシャルのクラッチ容量を上げ、続く第8戦フィンランドラリーでその制御コンピュータも一新した。同時に、この年の1月に発売された特別仕様車であるランサーエボリューションⅥトミーマキネンエディションと同じデザインのフロントバンパーを与えたほか、サスペンション・ジオメトリーの大幅な見直しを図るなど、懸命な開発努力を続けた。
この間、チームは一種のセッティングの悪循環に陥る。そして何が問題なのかをもう一度確認するため、第10戦キプロスラリーで前年仕様のサスペンションに戻した。これが功を奏し、マキネンは久しぶりにベストタイムを4カ所のスペシャルステージで奪い、さらに第12戦サンレモラリーでは3位に食い込み、続くオーストラリアラリーではトップ争いを展開した。ただし、部品の組み間違いという手痛いミスが原因で、ターボのハウジングがホモロゲーションを取得しているものと形状が異なるものであったことがラリー終了後の車両検査で判明。マキネンには失格の裁定が下るという残念な結果となった。そして、気を取り直して臨んだ最終戦グレートブリテンラリーをマキネンは3位でまとめてシーズンを終了した。
前年まで4連覇を果たしたドライバーと車両をもってして最終ランキングが5位という結果は、三菱自動車にとっては不本意以外の何物でもなかった。ここにおいて三菱自動車は、WRカーを新たに開発するという方向転換を決断。三菱自動車のラリー活動は、ここで新たな段階へと歩を進めることとなったのである。