三菱自動車はさらなる進化を果たしたランサーエボリューションⅥを開発し、市販車とグループA仕様のラリーカーを同時にデビューさせた。基本仕様はエボリューションⅤを踏襲しており、最大の違いは空力パッケージにあった。ラリーカー側からの要求に基づいて、エボリューションⅥには市販モデルの時点から2段式リヤウイングを採用したのである。しかし国際自動車連盟は、このリヤウイング形状は車両規定に抵触するとして、下段の開口部を塞ぐよう三菱自動車に対して指示。世界ラリー選手権(WRC)は1997年にワールドラリーカー規定を導入してからも純粋なグループAで挑み続けてタイトルを奪い続けてきた三菱自動車への風当たりが強まってきていることの表れだった。
Rd. |
name |
Country |
1 |
Rallye Monte Carlo |
モナコ、フランス |
2 |
Swedish Rally |
スウェーデン |
3 |
Safari Rally |
ケニア |
4 |
Rallye de Portugal |
ポルトガル |
5 |
Rally Catalunya |
スペイン |
6 |
Tour de Corse |
フランス |
7 |
Rally Argentina |
アルゼンチン |
8 |
Acropolis Rally |
ギリシャ |
9 |
Rally New Zealand |
ニュージーランド |
10 |
Rally Finland |
フィンランド |
11 |
Rally China |
中国 |
12 |
Rallye Sanremo |
イタリア |
13 |
Rally Australia |
オーストラリア |
14 |
Rally of Great Britain |
ウェールズ |

体制面では、新たにフレディー・ロイックス(ベルギー)をNo.2のレギュラードライバーとして起用。チームは新たにフィリップモリス社のスポンサードを受けることとなり、ランサーエボリューションⅥはモータースポーツ界の王者の象徴ともされる赤白の鮮やかなマールボロカラーに塗られて開幕戦に登場。そしてマキネンは三菱自動車が長年夢見てきた伝統のモンテカルロラリー初優勝を達成。続くスウェディッシュラリーも制し、同ラリーで2年連続・3回目の、そして三菱自動車としては前年のフィンランドラリーから6戦連続となる勝利を挙げる。まさにグループA仕様のランサーエボリューションの絶頂期であった。
シーズン中盤を迎えると、3年目を迎えて熟成が進んできたWRカー勢がいよいよ本格的な攻勢を開始。同年はフォードがフォーカスWRCを開幕戦から投入し、第6戦ツール・ド・コルスからはプジョーも206WRCでテスト参戦を開始していた。ベースになる市販モデルがそもそもWRカー規定の最小全長である4mに満たないコンパクトなこの車が出場を認められたあたりにも、国際自動車連盟のWRカー優遇策が見て取れた。
しかし、あくまでグループAで戦い続ける三菱自動車は一層の改良をランサーエボリューションに加え続け、第9戦ニュージーランドラリーでマキネンがシーズン2勝目を挙げる。そして第12戦サンレモラリーからは、5年以上をかけてテストを重ねてきたリヤ・アクティブデフもついに実戦に投入する。そのサンレモではマキネンが闘志あふれる走りをでプジョーの新鋭WRカーを最終レグの最終ステージで逆転し優勝。これでシリーズランキングも単独首位に立ち、マキネンはそのまま4年連続世界チャンピオン獲得という前人未到の記録を成し遂げることになる。一方、グループNカップでもグスタボ・トレレスが同様に4年連続となるチャンピオンを獲得。また、アジア・パシフィック選手権(APRC)ではタスカ・エンジニアリング製のグループNランサーエボリューションで参戦した田口勝彦が、ライバルの自滅もあって、シリーズ総合でのチャンピオンを獲得するという大金星を挙げている。