三菱自動車は、これまで見合わせていたワークスマシン2台による世界ラリー選手権(WRC)の全14戦へのフル参戦をこの年からついに開始した。ドライバーラインナップはトミー・マキネンとリチャード・バーンズで不変、開幕戦モンテカルロでのマシンも前年のチャンピオンカーとなったグループA仕様のランサーエボリューションⅣだった。ライバルには、スバル、フォードの2社に加え、復帰してきたトヨタもいた。前年の半ばから5戦にテスト参戦を行っていた彼らの車両もまたワールドラリーカーであった。
Rd. |
name |
Country |
1 |
Rallye Monte Carlo |
モナコ、フランス |
2 |
Swedish Rally |
スウェーデン |
3 |
Safari Rally |
ケニア |
4 |
Rallye de Portugal |
ポルトガル |
5 |
Rally Catalunya |
スペイン |
6 |
Tour de Corse |
フランス |
7 |
Rally Argentina |
アルゼンチン |
8 |
Acropolis Rally |
ギリシャ |
9 |
Rally New Zealand |
ニュージーランド |
10 |
Rally Finland |
フィンランド |
11 |
Rallye Sanremo |
イタリア |
12 |
Rally Australia |
オーストラリア |
13 |
RAC Rally |
イギリス |

マキネンは第2戦スウェディッシュラリーで早くも1勝目を挙げ、続く第3戦サファリラリーではバーンズが念願のWRC初優勝。そして第5戦カタルニアラリー(スペイン)で、この年1月に発売された新しいランサーエボリューションⅤのグループA仕様をデビューさせる。最大のポイントは、より幅の広いトレッドの採用にあった。WRカー規定では全幅は1770mmまで認められていたがグループAエボリューションⅣは1690mm。WRカーに対して80mmのトレッド差があることは、特に高い速度領域での車両の安定性においてハンディとなりつつあった。しかしグループA規定ではボディ全幅はあくまで市販モデルに準拠しなければならないことから、三菱自動車はその市販モデルの時点から全幅を1770mmに拡大。かくして、3ナンバーとなったランサーエボリューションが登場することになったわけである。
ランサーエボリューションⅤの初陣を3位でまとめたマキネンは、第7戦アルゼンチンラリーで3年連続となる優勝を飾る。その後、センターディファレンシャルのクラッチ容量が増やされた電磁作動アクティブデフとサスペンションのセッティングが進み、シーズン終盤にはフィンランドラリーを皮切りに、サンレモラリー、オーストラリアラリーと怒涛の3連勝を飾って一気にポイントリーダーに踊り出る。こうして迎えた最終戦グレートブリテンラリーだったが、マキネンは第1レグの序盤でアクシデントに遭遇する。ヒストリックカーラリー参加車が撒いたオイルに乗ってスピンし、コンクリートブロックに右リヤサスペンションをもぎ取られてしまったのである。マキネンはリタイアを余儀なくされた。ところが、チャンピオンに逆王手をかけた形となったトヨタのカルロス・サインツが、最終ステージフィニッシュ直前にエンジンブロー。これにより、マキネンの3年連続チャンピオンが決まるという劇的な幕切れとなった。
このラリーを制したのはバーンズで、これにより三菱自動車はシーズン中に計7勝、勝率5割という驚異的な戦績を残し、初のマニュファクチャラーズチャンピオンも奪取。ランサーエボリューションユーザーの寡占状態が続くグループNカップもグスタボ・トレレスが3年連続で制し、三菱自動車は三冠を達成。まさに記録づくめの1年となった。