この年、世界ラリー選手権(WRC)は現在に至る最新の形態に変貌を遂げた。シリーズは全14戦となり、すべてがドライバーズ、マニュファクチャラーズの両選手権のポイント獲得対象に。1戦あたりのスペシャルステージの距離は400kmまでに短縮され、日程も3日間の3レグ制が基本となった。使用される車両についても大きな変化があった。ベースが前輪駆動車であっても、それに2.0Lターボエンジンと4WDシステムを組み込んでラリー専用車とすることができるワールドラリーカー(WRカー)規定が導入されたのである。車両の最低重量は従来の1200kgから、グループA、WRカーともに1230kgへと増加。
Rd. |
name |
Country |
1 |
Rallye Monte Carlo |
モナコ、フランス |
2 |
Swedish Rally |
スウェーデン |
3 |
Safari Rally |
ケニア |
4 |
Rallye de Portugal |
ポルトガル |
5 |
Rally Catalunya |
スペイン |
6 |
Tour de Corse |
フランス |
7 |
Rally Argentina |
アルゼンチン |
8 |
Acropolis Rally |
ギリシャ |
9 |
Rally New Zealand |
ニュージーランド |
10 |
Rally Finland |
フィンランド |
11 |
Rally Indonesia |
インドネシア |
12 |
Rallye Sanremo |
イタリア |
13 |
Rally Australia |
オーストラリア |
14 |
RAC Rally |
イギリス |

シーズンに臨んだワークスチームは三菱自動車、スバル、フォードの3社。このうち、三菱自動車以外の2社はともにWRカーでの参戦となった。2.0Lターボエンジンで4WDのグループAラリーカーを持つ彼らであったが、WRカー規定が持つ開発の自由度をパフォーマンスアップの方向に利用してきたわけである。対する三菱自動車は純粋なグループA。そのベース車両は、前年のチャンピオンカーであるランサーエボリューションⅢではなく、フルモデルチェンジが図られて96年8月に発売されていたランサーエボリューションⅣとなった。4G63型DOHCターボエンジンの搭載方向が左右逆転したところが構造的な最大の変化で、これに伴い4WDシステムを織り成すコンポーネントは新設計に。リヤサスペンションは引き続きマルチリンク式ながら、トレーリングアームタイプからダブルウィッシュボーンタイプとした。またラリーカーに関してはライバルに先駆けてシーケンシャル式ギヤボックスを導入。またも三菱自動車の先進性を印象付けることとなった。
この年の三菱自動車チームの体制は前年と同様で、トミー・マキネンを全戦にエントリーさせ、リチャード・バーンズの参戦数も8戦に増加。残る6戦では、ラリーアート・ジャーマニー製のグループA仕様のランサーエボリューションⅢで出場する前年グループNカップ2位のウベ・ニッテル(ドイツ)をマニュファクチャラーズポイントの獲得対象として指定した。
前年に初の世界チャンピオンの栄冠を獲得したマキネンは、ポルトガルラリー、カタルニアラリー(スペイン)、アルゼンチンラリー、1000湖ラリー(フィンランド)と計4勝をマーク。特筆すべきは、完全なターマックラリーとして開催されるようになったカタルニアでの優勝で、三菱自動車としても初めて舗装路ラリーを制することとなり、ランサーエボリューションがまさに路面を選ばないオールラウンダーに成長したことを強くアピールした。最終戦RACラリーでは、マキネンはインフルエンザにかかり最悪の体調でのスタートとなったが、死力を尽くしてラリーを戦い抜き、見事王座を防衛。三菱自動車に2年連続で世界一の座をもたらした。