「スターキャンプ」が育んできた体験の価値 Part1
クルマの価値は、「どこへ行けるか」だけで決まるものではありません。その先で、どんな時間を過ごせるのか——。三菱自動車は、三菱車が“新しい体験への一歩を後押しする存在”であってほしいと考えてきました。そうした思いを実際の体験として形にしたのが、オートキャンプイベント「スターキャンプ」です。1991年に始まったこの取り組みは、クルマで出かけた先に広がる時間そのものの価値を提示してきました。
「RV=三菱自動車」を体験で伝えたスターキャンプの始まり
1991年、長野県・野辺山高原。標高1300メートルほどの牧場に、数百組の家族がテントを張り、焚き火を囲みながら夜空を見上げていました。そこに広がっていたのは、単なるキャンプイベントの風景ではありません。三菱自動車がこの年に立ち上げた「スターキャンプグラウンズ(現スターキャンプ)」は、「クルマは目的地へ移動するためだけの道具ではなく、その先にある体験を広げる存在である」という考え方を、実際の体験として提示する場でした。
1991年は、三菱自動車にとって大きな転換点でもありました。2代目『パジェロ』をはじめ、『RVR』、2代目『シャリオ』などの新型車が相次いで登場し、『デリカ スターワゴン』を含めたRV(レクリエーショナル・ビークル)のラインアップが揃った年です。「アウトドアに強い三菱自動車」というイメージが、商品面としても明確な輪郭を持ち始めていました。
当時は、ダカールラリーの人気が高まっていた時代でもありました。過酷な砂漠や悪路を走破する『パジェロ』の姿は大きな注目を集め、「悪路に強い三菱自動車の四駆」というイメージが広く浸透していきます。単なるRVブームではなく、「どこへでも行けるクルマ」としての信頼感や憧れが、『パジェロ』の人気を支えていました。スターキャンプは、そうした“走破性への信頼”を、“その先でどんな時間を過ごせるか”という体験も含めた価値へつなげたいという想いを背景に、始まりました。
具体的には、大きく二つの目的がありました。一つは、「RV=三菱自動車」という認知を社会へ広げていくこと。もう一つは、クルマを単なる移動手段ではなく、アウトドアライフそのものを支える存在としてその価値を提案することでした。性能やスペックを訴求するだけではなく、「このクルマがあることで、どのような時間を過ごせるのか」を体験として提示しようとしていたのです。
また同時に、『パジェロ』をはじめとする三菱車は、過酷な環境で求められる走破性や耐久性を備えた“本格的なギア”でありながら、専門的な技術がなくても扱える四輪駆動車へと進化していました。悪路を走れること自体が価値なのではなく、誰もが安心して自然の中へ踏み出し、新しい世界へアクセスできること。スターキャンプには、そうした三菱自動車の思想を、実際のアウトドア体験とともにイベントでのプログラムを通じて伝えていく意味も込められていました。
時代もまた、大きく変わり始めていました。1980年代後半から、日本ではアウトドア文化が徐々に広がり、キャンプは一部の愛好家だけの趣味ではなく、家族で楽しむレジャーとして定着し始めていました。自然の中で過ごす時間や、都市を離れて家族と向き合う体験に価値を見いだす人が増えていた時代です。
スターキャンプは、そうした社会の変化をいち早く捉えた先進的なプログラムだったのです。
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2代目『パジェロ』
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開始当初のイベントの様子
「キャンプをする」から、「自然の中で時間を過ごす」へ
スターキャンプが始まった1990年代初頭、キャンプは「火を起こし、食事をつくり、テントで寝る」という行為のみを楽しむレジャーとして捉えられていました。スターキャンプは、そうした従来の枠組みを大きく広げていきます。アウトドアでの様々な楽しみや、キャンプの魅力など「クルマで出かけることで広がる世界」を含めて体感いただくことで、三菱車の魅力やブランドをお客様に、より感じてもらいたいという考え方です。こうした考え方から、会場ではパラグライダーやカヌー、4WD試乗、星空観察、音楽イベントなど、多彩なプログラムが用意されていました。
こうした思想は、現在のスターキャンプにも色濃く受け継がれています。国内営業本部 国内商品戦略部でスターキャンプの企画・運営を担当する竹内直子は、「普段の生活ではあまり経験できないことをしてほしいという思いがあります」と話します。
国内商品戦略部 竹内
「子どもには薪割りや火起こしなど、本格的なアウトドア体験ができるようにしています。単なるレクリエーションではなく、自然の中で自分たちが生活している感覚を味わってもらうことを重視しています」
大人向けのプログラムにも、そうした“非日常”の体験が組み込まれています。
「朝、富士山を目の前にラジオ体操をして、その後みんなでヨガをやるんですけど、すごく気持ちが良くて、特にお母さんたちの満足度が高いんですよね。また、キャンプファイヤーは大人にも子どもにも人気があります」
朝ヨガ、キャンプファイヤーを楽しむお客様
国内商品戦略部で2025年からスターキャンプの企画・運営を担当する室田裕次郎は、イベントそのものの“過ごし方”にも特徴があると話します。
「朝から夕方までさまざまなプログラムを用意していますが、全部に参加しなければいけないわけではありません。参加は自由ですし、家族でゆっくり過ごすこともできます」
決められた体験を一方的に提供するのではなくお客様自身が“自分たちらしい時間”をつくっていく。その自由度の高さもまた、スターキャンプが長く支持されてきた理由の一つになっています。
さらに、三菱自動車ならではのプログラムとして欠かせないのが、オフロードでの試乗体験です。
「必ず行っているのが、オフロードでの三菱車の試乗体験です。『デリカD:5』や『トライトン』などに乗って、特設の林道コースや本格オフロードコースを走行してもらいます。最大傾斜45度の急坂登坂が体験できる専用キットも人気ですね。普段は行かないであろう道をあえて体験してもらうことで、すでに三菱車に乗っているお客様でも、『やっぱり三菱自動車の四駆はすごいね』『タフで安心だよね』と感じてもらえますから」
国内商品戦略部 室田
カタログや映像だけでは伝わりにくい4WD性能を、実際の体験を通じて理解してもらう。そこには、三菱自動車が長年培ってきた四輪制御技術への自信もうかがえます。
同時に伝えようとしていたのは、「走れること」そのものではありませんでした。進化した四輪制御技術があるからこそ、高速道路での長距離移動を快適にこなし、目的地へ安心してたどり着くことができる。舗装路から外れた場所でも、不安なく自然の中へ踏み出していける。そうした安心感があるからこそ、家族や友人と新しい場所へ出かけ、これまで挑戦したことのない時間を楽しむことができるのです。
三菱車の四輪制御は、単なる悪路走破のための技術ではありません。家族をしっかり守りながら、人の行動範囲や体験そのものを広げていく。その価値を、スターキャンプは実際の体験として伝え続けてきました。
オフロード試乗