第23回大会は原点回帰を目指し、パリをスタートしてダカールにゴールするオーソドックスなスタイルで開催された。スタート地はパリのエッフェル塔近くのシャン・ド・マー広場。スペイン東南のアルメリアから地中海を渡ってモロッコのナドールに上陸、モーリタニア北西のアタールで休息日を迎えたあと、後半はマリを通ってセネガルへ。モーリタニアで2ヶ所のループコースを設定している。総走行距離10,518km、うち競技区間（SS）5,944kmと往時に匹敵するスケールとなった。

三菱自動車チームは新型パジェロ・T2仕様の改良に着手。エンジンのドライバビリティを向上させるとともに、最高速や加速性能を高めた。また、サスペンションを改良して悪路での衝撃吸収性をさらに向上。タイヤも耐パンク性能を向上させた。この年は、三菱自動車チームから篠塚と増岡、そしてフォントネが新型パジェロ・T2仕様で出場。三菱自動車から支援を受けるドイツ販売会社チームからクラインシュミット、スペイン販売会社チームからプリエトが同じく新型パジェロ・T2仕様で、ポルトガル販社チームからスーザがL200・T3仕様で出場した。

この年も四輪部門はパジェロとシュレッサー・バギーによる激しい一騎打ちとなった。序盤で首位に立ったシュレッサーは中盤で違反行為によるペナルティで８位に後退すると、チームメイトのセルビアが替わってトップに立つ。しかし、前半戦最後にパジェロの増岡がSSトップタイムを記録して総合首位に浮上し、クラインシュミットも2番手につけて1-2体制で前半戦を終える。
後半戦に入ると増岡が快進撃を見せ、トラブルに見舞われながらも８日間に渡って首位の座をキープ。シュレッサーを2番手に抑えてセネガルのタンバクンダに到着した。ところが、タンバクンダからダカールまでの一本道のSSでシュレッサーとセルビアが１番手スタートの増岡の前に割り込んでスタートし、増岡の進路を妨害。間もなくステアリングのトラブルでペースダウンしたセルビアに前を阻まれた増岡は、これを追い越すべくコースを外れた際に左後輪を切り株にヒットしてサスペンションを壊してしまう。この妨害行為により、シュレッサーには1時間6分のペナルティが課せられた結果、総合順位はクラインシュミットが１位、増岡は2分55秒差の2位となった。最終日はセレモニー的な僅か25kmのSSであり、逆転はかなわずクラインシュミットが女性初のダカールラリー勝者となった。増岡は無念の2位に終わるが、通算6勝目となる1-2フィニッシュに貢献した。なお、本件に関してシュレッサーより提出されていた１時間のペナルティは不当との控訴に対して国際自動車連盟の控訴審が開催され、同アピールを却下したが、その際、フランス自動車連盟からの報告で、同SSで計時ミスがあり、4分早くスタートしたセルビアに課すべき4分が増岡に課せられていたことが追認された。この計時ミスがなければ増岡は1分21秒差で優勝していた計算だが、競技結果が覆ることはなかった。