記念すべき第20回大会を迎えたダカールラリーは、5年ぶりにパリをスタートしてダカールにゴールするオリジナルスタイルで開催され、総走行距離10,593km、うち競技区間5,219kmのコースで競われた。

国際自動車連盟はラリーの安全性向上を目的として、新たな車両規定を策定した。基本的には、1997年大会時の主催者の独自規定を追認する格好だが、それよりも改造制限を強化。この新規定に対し、三菱自動車では競技車のベースモデルとなるパジェロエボリューションを開発し、97年に発売した。同車は前後トレッドを拡幅した上でリヤにダブルウィッシュボーン独立懸架式サスペンションを採用し、フロントサスペンションも一新してストロークを増大。ボディにはオーバーフェンダーやエアスクープ付きアルミ製ボンネットを装着し、3.5Lの6G74型ガソリンエンジンは新たにMIVEC（バルブタイミング可変機構付）とした。32mmのリストリクター装着により最高出力は300PSから260PSに低下したが、MIVEC化によって最大トルクは2kg-m増えて36kg-mとなった。最低重量はイコールコンディション化を図るための性能調整策として、排気量と駆動方式に応じて定められるが、シュレッサー・バギーなどの2WDはパジェロより300kg以上も軽く、リストリクター径も大きいうえにサスペンションストロークの規制もない。走破性について2WDがハンディキャップとなる場面は少なくないが、その半面、フラットな高速ステージでの最高速は圧倒的であった。三菱自動車チームは、篠塚、サビー、フォントネがパジェロエボリューション・T2仕様を駆り、増岡浩がチャレンジャー・T2仕様で出場する体制とした。

ヨーロッパステージからSSトップタイムを連発したサビーが総合首位に立つが、ミッショントラブルにより後退。代わって首位に立ったフォントネは、篠塚がスタックやパンクなどで遅れたこともあり、じわじわとリードを広げていく。マリ北東部タウデニで競技車を銃撃する事件が発生し、休息日のガオへはSSをキャンセルしてリエゾン（移動区間）として到着。すでに序盤のトラブルで遅れていた増岡も３位に復帰し、フォントネ、サビー、増岡、篠塚の1-2-3-4体制で後半戦に突入した。篠塚はSSトップタイムで３位へ浮上すると、終盤でサビーが大スタックを喫したことにより２位に浮上。その間もフォントネは好調にSSトップタイムを記録しながらリードを広げ、パジェロエボリューション・T2仕様がトップでダカールにゴール。篠塚、サビー、増岡がこれに続き、三菱自動車は四輪部門最多となる5度目の総合優勝を2年連続の1～4位独占で飾った。三菱自動車チームの4台は17ヶ所のSSのうち16ヶ所を制する完勝。また、パジェロは市販車無改造クラスでも1～4位を独占。後年、三菱自動車チームに加わることになる元アルペンスキー王者のリュック・アルファン（フランス）がこの年、パジェロのT1仕様で初挑戦（結果はリタイア）。同じく後に三菱自動車チームに加わるステファン・ペテランセル（フランス）は、二輪部門で史上最多となる６度目の優勝を果たした。