92年大会は、初めてゴール地をセネガルのダカールではなく、南アフリカのケープタウンに設定した。23日間で総走行距離12,441km、うち競技区間（SS）5,680kmで競われる。通過国は11ヶ国で、アフリカ大陸を縦断する壮大なスケールで行われた。12月25日にパリのヴァンセンヌ城前をスタートして地中海を渡り、リビア北部のミスラタからアフリカに上陸し、同国を南下してニジェール、チャド、中央アフリカへと至り、さらにガボン、カメルーンを通って１月８日、コンゴの港町ポアント・ノアールで休息日を迎える。後半戦は大西洋岸沿いをアンゴラへ下ったあとフェリーでザイールをパスしてナミビアへ入り、最後の通過国である南アフリカへ。ケープタウンの海岸にゴールしたのは1月16日であった。チャド南東のンギグミまでは、従来のダカールラリーとほぼ同じ広大な砂漠を越えるステージが設定されたが、南下して熱帯地帯に入るとサバンナの一本道やジャングルを抜ける細い小道など追い越しの難しいステージや、前走者の巻き上げる埃の酷い区間が続き、参加者を悩ませることになる。なお、チャド国内の治安問題などから合計4つのSSがキャンセルされた。

三菱自動車チームは1992年大会用の92年モデルの開発作業をスタートさせると同時に、1993年大会を見据えた先行研究車の岡崎プロト３号車の開発にも着手した。新型プロトタイプである91年モデルの高い戦闘力を確認できたことから、92年モデルは前回大会で発生したドライブシャフトのトラブル対策など、信頼性向上を中心とした改良を実施した。三菱自動車チームは、篠塚とフォントネに、新たにアーウィン・ウェーバー（ドイツ）、ユベール・オリオール（フランス）、ブルーノ・サビー（フランス）を加えた92年モデルの5台体制で92年大会に臨む。また、増岡が市販車改造クラスの発展型である、信頼性の高い90年モデルのプロトタイプで出場することとなった。

この長く過酷なラリーで、パジェロを駆るオリオールは序盤でトップタイムを記録して総合首位に浮上。ニジェールでのSSではパジェロ5台がトップ5を独占して、篠塚が２位、ウェーバーが３位の1-2-3体制を築き、前半戦でシトロエンに対するリードを広げた。途中、サビーの転倒やフォントネのリタイアはあったものの、オリオールは最後まで首位を守り抜いて総合優勝。これに２位のウェーバーと３位の篠塚が続き、パジェロは圧倒的な1-2-3フィニッシュで1985年以来の2勝目を飾った。一方、増岡はハブベアリングのトラブルなどでペースが上がらず総合20位でゴール。チームメイトでパジェロ・ロングボディのV6エンジン搭載車を駆って出場したシリワッタナクン・ポンサワン（タイ）が総合28位で、市販車改造クラス優勝を果たした。