第13回大会は、前年のルートから前半戦のチャドへの往復を省略した比較的シンプルな構成。パリのヴァンセンヌ城前をスタートし、ラックローズに到着する総走行距離9,186km、うち競技区間（SS）6,747kmの行程である。前回大会限りで撤退したプジョーに替わり、同じPSAグループのシトロエンがZXの４台体制で参戦。エースは引き続きバタネンである。これにポルシェ製エンジンを搭載するラーダのプロトタイプの3台が加わり、三菱自動車チームとの三つ巴の戦いが予想された。

三菱自動車チームは、第13回大会に期待の新型パジェロ・プロトタイプを投入した。90年のダカールラリー終了後、SBMが中心になって岡崎プロトの１号車をベースに、軽量化やエンジンのドライサンプ化などを図った試験車を製作。実戦を通じたテストを繰り返し、オーストラリアン・サファリで篠塚が優勝を飾った。これに岡崎のモータースポーツチームが岡崎プロトの２号車で研究を進めていた空力性能に優れるリヤカウル形状などを組み合わせて完成したのが、新型プロトタイプの91年モデルである。同車は軽量なマルチチューブラー構造のシャシーを持ち、従来型より大幅に延長したホイールベースに四輪独立懸架式サスペンションを装備。エンジンは2.2Lの4G63型ガソリンターボエンジンで、最高出力320PSと最大トルク45kg-mを発生。トランスファーに新たにハイ・ロー切り替え機構を持つX-トラック社製６速トランスミッションを採用している。
三菱自動車チームは引退したコーワンに代わり、世界ラリー選手権でギャランVR-4をドライブするケネス・エリクソン（スウェーデン）を迎え入れた。篠塚、ラルティーグ、フォントネ、そしてエリクソンがパジェロ・プロトタイプの91年モデルをドライブする強力な布陣だ。前回総合10位で市販車改造クラス優勝を果たした増岡は、引き続きパジェロ・ロングのT2仕様で出場。なお、この年のエンジンは、3LのV6ガソリンエンジンから、世界ラリー選手権のギャランVR-4で使用している2.0Lの4G63型ガソリンターボエンジンに換装されている。

リビアのオアシス都市であるガダメスからアフリカステージが始まると、シトロエンのバタネがリード。パジェロのラルティーグがこれを追うがオイルクーラーの配管トラブルで後退し、前半戦の最終日には篠塚もハイスピードからの転倒クラッシュで参戦以来初のリタイアを喫した。三菱勢はシトロエン、ラーダを上回る6回のSSトップを記録したが、逆転はならずバタネンが総合優勝。しかし、シトロエンの2台が車両火災で戦列を去ったのに対し、パジェロは新型車ながら信頼性の高さを発揮して、ラルティーグ、フォントネ、エリクソンが総合2～4位となった。