
第29回大会は前回と同様、ポルトガルの首都リスボンをスタートし、スペイン、モロッコ、モーリタニア、マリを経由してセネガルの首都ダカールにゴールする計画であったが、モーリタニア~マリ間の行程が治安問題によりキャンセルとなり、モーリタニア国内でステージをこなしてマリはリエゾン(移動区間)のみとする変更がなされた。コースの総走行距離7,915km、うち競技区間(SS)4,339kmである。

1983年大会以来、一貫してダカールラリーに挑戦してきた三菱自動車チームは、2007年大会で参戦25年目の節目を迎え、前人未踏の7連覇・通算12勝を飾るべく同大会に臨んだ。パジェロエボリューション・スーパープロダクション仕様(MPR13)は、2003年大会のデビュー以来、初のフルモデルチェンジともいえる内容を盛り込んだ。従来のサブフレーム構造を廃した一体構造による完全新設計のマルチチューブラーフレームを採用。これにより車体の軽量化及び高剛性化を図るとともに、燃料タンクとスペアタイヤ(最大4本)の搭載位置低下による低重心化及び前後重量バランス最適化を行った。燃料タンクの床下配置で位置が上がったドアは、Aピラーを支点に跳ね上がるガルウィング式。前年に発売した4代目パジェロのフロントフェイスデザインを採用しながら、空力性能を向上させてCd値を約5%改善。ジオメトリーの最適化、スプリングレートやダンパー特性の改良でさらに走行性能を高めた。動弁系部品の軽量化やフリクションの低減によりエンジンレスポンスの向上など、車体全体で細部にわたって改良を施している。参戦体制は前回大会と同様、増岡、ペテランセル、アルファン、ロマの4台である。
今大会も三菱自動車チームとフォルクスワーゲンチームの一騎打ちとなった。ポルトガルステージからスパートをかけるVW勢に対し、アフリカステージになっても三菱勢はペースが上がらない。ペテランセルはクラッチトラブルや相次ぐパンク、増岡も同じくクラッチトラブルに見舞われる苦しい展開となった。それでも各車、徐々にポジションを上げ、ペテランセル3位、アルファン4位、増岡5位で前半戦を終了した。首位はVWのドゥビリエでサインツがこれに続く。しかし、後半戦に入ると様相は一転した。モーリタニアでの今大会最長589kmのSSでサインツがスタックにより後退。また、翌日のSSではドゥビリエがエンジントラブルでストップ。これによりペテランセルとアルファンが浮上し、パジェロエボリューションが1-2位となる。2人はゴールまで接戦を演じたが、そのままの順位でダカールに到着。VW勢の最上位はマーク・ミラー(米国)の6位で、ペテランセルから2時間以上の大差となった。三菱自動車チームは参戦25年目という節目に1-2フィニッシュで7連覇を達成。勝利数でも通算で12回目を数え、メーカー最多勝となっている(注、2021年時点)。増岡は挽回して5位、転倒して遅れたロマはサポートに徹して13位。パジェロエボリューション・スーパープロダクション仕様は4台揃って完走した。