
第28回大会はダカールラリーの歴史で初めてポルトガルの首都リスボンがスタート地に選ばれた。スタート後、ポルトガル国内で2つのSSを実施し、スペイン南部の港町マラガまで移動してフェリーでアフリカに上陸する。モロッコを南下して西サハラ地域をかすめ、モーリタニアに入るルートは近年同様。山場となる砂丘ステージはヌアクショットでの休息日を挟んでモーリタニア国内で5つのステージが設定されている。後半戦はモーリタニアからマリ経由で南下してギニアに向かいセネガルのダカールに至るルートで、総走行距離9,043km、うち競技区間(SS)4,813kmとなっている。

三菱自動車チームはパジェロエボリューション・スーパープロダクション仕様のさらなる改良型(MPR12)を開発し、第28回大会に4台体制で参戦した。ドライバーは2002~2003年に2連勝を果たした増岡、2004~2005年に同じく2連覇を飾ったペテランセルに、アルファンとロマを加えた盤石の布陣である。マシンはエンジンのピストン、コンロッド、クランクシャフトの形状見直しで耐久性を高める一方、吸排気管長、カムタイミングを最適化させて低中速域でのトルク特性を改善。これに併せてデフの減速機構を2段階として負担軽減を図り、可変容量化したトルクリミッターとともに駆動系の耐久性を向上させた。また、サスペンショナームのレイアウト見直しやショックアブソーバーの衝撃吸収性の向上など細部を煮詰めた内容となっている。
初優勝を狙うフォルクスワーゲンワークスは元WRC王者のカルロス・サインツ(スペイン)を筆頭に、サビー、クラインシュミット、ドゥビリエなどダカールラリーで実績のある実力者を擁し、圧倒的なトルクを誇るディーゼルターボエンジンを搭載するトゥアレグの5台体制で今大会に臨む。序盤のポルトガルステージでリスクを避けた滑り出しを見せる三菱自動車チームに対し、VWのサインツは果敢なアタックで首位に立つが、アフリカステージに入るとロマが首位に浮上し、二輪から四輪に転向して初めてラリーリーダーとなった。僅差で2位につけていた増岡はコ・ドライバーとのコミュニケーションミスから大転倒を喫して無念のリタイア。その後、VW勢がリードするが、モーリタニアの砂漠に入りコースの難易度が増すと、パジェロエボリューションが本領を発揮する。砂丘ステージでペテランセルがSSトップタイムを記録し、アルファンとの1-2体制で前半戦を終える。後半戦もペテランセルがリードするが、ダカール到着を2日後に控えたギニアのSSでコース脇の木立にヒットし、サスペンションを破損。修復後に復帰するも、優勝戦線から脱落した。これにより首位に浮上したアルファンが、VW勢で唯一優勝戦線に残っていたドゥビリエの追撃を振り切り、17分53秒という希に見る僅差で初優勝を飾った。四輪部門での参戦2年目であったロマは3位、終盤に挽回したペテランセルが4位に続く。三菱自動車チームは連勝記録を6に伸ばし、通算11勝目を挙げた。