2013
- パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム

2013年
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム

2013年 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム

三菱自動車は2年目の挑戦となるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(以下パイクスピーク)の2013年大会に、進化させた競技専用車ミーブ・エボリューションⅡを2台送り込んだ。市販車の量産部品を元に先行開発した大容量バッテリーと高出力モーターを搭載し、最高出力は400kWを発揮。フロント、リヤともに2基の合計4基のモーターで構成されるクアッドモーター4WDシステムとし、パワーを的確に路面へと伝達できるものとした。さらに車両運動統合制御システムS-AWC(Super All Wheel Control)を新たに採用し、操縦安定性の向上を図った。専用ボディによる車両軽量化、空力性能の改善も相まって、走行性能を大幅に進化させた。ドライバーは監督兼任の増岡浩に加え、新たに同レースの二輪車部門で過去6度の優勝を誇るグレッグ・トレーシー(米国)を起用し、2台体制で電気自動車クラスの優勝を狙った。
電気自動車クラスの予選は約20kmの決勝コースを3分割したうちの麓にあたるボトムセクションで行われ、トレーシーが1位、増岡が2位のタイムを記録し上位を独占。三菱自動車チームはガソリン車など全クラスを含めた総合優勝に向けて期待を膨らませた。しかし迎えた決勝では、ロッキー山脈の名峰パイクスピークの大自然が牙をむくこととなる。午前中は青い空が広がっていたものの、やがて天気は下り坂となり、電気自動車クラスが走行する頃には強い雨が路面を濡らしていた。すでに走行を開始していた改造無制限クラスなどはドライ路面でレースを終えたが、電気自動車クラスのトップランナーであるトレーシーは、スタート直前の豪雨により急遽スリック(溝無しタイヤ)からカットスリック(溝ありタイヤ)への交換を余儀なくされた。
トレーシーは路面コンディションが悪化する中での走行を強いられたが、前年の増岡のタイムを約7秒上回る10分23秒649でフィニッシュし、マシンの大幅な進化を見せつけた。続く2番手走者の増岡もウエット路面での走行となるが、果敢に攻めてトレーシーを上回る10分21秒866でゴール。しかしながら、路面状況が回復していく中で走行したライバルに逆転を許し、増岡が2位、トレーシーが3位となり、電気自動車クラスの優勝は3ヶ年計画の3年目となる2014年大会に持ち越された。豪雨によるウエットコンディションのなか、急勾配で156ものコーナーをもつ約20kmのコースを一気に駆け抜けるパイクスピークで、マシンを信頼して攻め続けることができたのは、意のままの操縦性と卓越した安定性をもたらすS-AWCに因るところが大きい。運には恵まれなかったが、将来のEVやPHEVの高性能化アイテムに関する技術情報を得ることができ、翌年の電気自動車クラスでの優勝に向け自信を深めることができた。

スペック

MiEV Evolution Ⅱ

全長 4870 mm
全幅 1900 mm
全高 1390 mm
駆動方式 4モーター電動4WD
モーター 搭載数(基) 4(フロント2基、リヤ2基)
最大出力 400(100 kW×4基)
バッテリー 総電力量(kWh) 50
シャーシ スチール製パイプフレーム
カウル カーボン製
サスペンション フロント ダブルウィッシュボーン
リヤ ダブルウィッシュボーン
タイヤ(ダンロップ製) 260/660R18
制御系(dSPACE製) 量産i-MiEV用ECU+制御ソフト改修