2012
- パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム

2012年
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム

2012年 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム

三菱自動車は2009年、世界環境デーである6月5日に世界初の量産電気自動車であるアイ・ミーブを発表した。国内では同年7月より法人向け、翌年4月より個人向けの販売を開始。また、2011年初春より欧州、同年秋より北米で販売を開始し、来るべき低炭素化社会に向けての一手を示した。量産車の品質に万全を期して電力会社や自治体との数々の実証走行試験を経て世に送り出す一方、将来に向けたEVコンポーネントの高性能化の研究開発についても検討していた。そして、その一つとして2012年から3ヶ年計画で挑戦することとしたのが、米国で100年近い歴史をもつパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(以下パイクスピーク)である。
パイクスピークは1916年に始まり、別名「雲に向かうレース」として知られる。ロッキー山脈にあるパイクスピーク山の標高は約4,300m、山麓の都市コロラドスプリングスから山頂までの距離は約20kmでコーナーの数は156。標高差約1,500mを一気に駆け上がるヒルクライム競技である。スタート地点とゴール地点では天候・気温・気圧などの諸条件が大きく異なり、クルマの基本性能とともに刻々と変化する諸条件への対応力が問われる。三菱自動車はこのパイクスピークに、競技専用車であるアイ・ミーブ・エボリューションと市販車(北米仕様)の改造車であるアイ・ミーブ(北米名はアイ)の電気自動車2台で参戦した。
アイ・ミーブ・エボリューションは専用設計のパイプフレーム製のシャシーに、空力性能を追求した軽量のカーボン製カウルを纏い、モーターやバッテリーは市販車と同様だが240kWと高性能化を図り、トリプルモーター4WDシステム(フロント1基、リヤ2基)とすることで優れたコーナリング性能とトラクション性能を実現した。ドライバーは2002~2003年のダカールラリーで2連覇を果たした増岡浩で、監督も兼任。一方のアイ・ミーブは空力性能を向上させたフロントバンパーや安全装備であるロールバーなどを追加する最低限の改造にとどめる。ドライバーには米国人女性ドライバーのベッキー・ゴードンを起用した。
増岡の駆るアイ・ミーブ・エボリューションは練習走行初日のコースアウトによりマシンにダメージを負うものの、メカニックの修復作業により完全な状態で決勝に送り出され、10分30秒850を記録して電気自動車クラスで2位入賞。将来の高性能化アイテムの性能・機能を確認するとともに、市販車のEVコンポーネントの信頼性を実証した。またアイ・ミーブのゴードンはほぼ市販車の競技車での出場ながらクラス6位完走を果たし、こちらでもバッテリー消費量やモーター温度など市販車の改良に繋がる貴重なデータを収集した。

スペック

i-MIEV Evolution

全長 4341 mm
全幅 1900 mm
全高 1339 mm
乗員(名) 1
駆動方式 4輪駆動
モーター 搭載数(基) 3(フロント1基、リヤ2基)
最大出力 60kW×2
バッテリー 総電力量(kWh) 35
シャーシ 専用パイプフレーム
カウル カーボン製
タイヤ 245/40R18

Mitsubishi_i

全長 3675 mm
全幅 1585 mm
全高 1615 mm
乗員(名) 4
駆動方式 後輪駆動
モーター 搭載数(基) 1
最大出力 49/3,000~6,000
バッテリー 総電力量(kWh) 16
タイヤ Fr:145/65/R15
Rr:175/60/R15