シェイクダウン終了後も、チームは万全を期すべくマシンの最終調整を施し、昨日の午後(現地時間10/21)リスボンのガレージとなったポルトガルの販売会社を出発。ラリーが行われる東部のポルタレグレを目指しました。リスボンからポルタレグレは約220kmの道のり。出発後すぐに、テージョ河の河口に架けられたヴァスコ・ダ・ガマ橋を通過しました。全長は何と17.2kmで、ヨーロッパでもっとも長い橋のようです。そして、高速道路とのどかな田園風景が広がる一般道を走る事約2時間半、ポルタレグレに到着しました。 一夜明け、22日(木)には公式車検が行われ、三菱自動車チームのプラグインハイブリッドEV『アウトランダーPHEV』が、新設されたTEクラス(ポルトガル語Tout Terrain Especialの略。オフロード特別車両クラス)唯一の車両として車検を通過しました。
今年で29回目となる「バハ・ポルタレグレ500」には、4輪92台、2輪80台、バギー37台、クワッド34台、そしてプロモーションクラスの2輪/バギー/クワッド69台の全312台が集結。
23日(金)のレグ1(SS1+SS2:90.52km、移動区間77.78km、総走行距離168.30km)、24日(土)のレグ2(SS3+SS4:350.00km、移動区間151.96km、総走行距離501.96km)の2日間にわたって競われます。
ラリーの中心地となるポルタレグレは、スペイン国境に近いアレンテージョ地方の古都です。ラリーのサービスパークは町の中心部から数キロ南に下った広場に置かれ、サービスパークを中心に競技が行われます。ラリーのコースはグラベル(未舗装路)で、フラットでハイスピードなダート路、凹凸の激しい荒れ地、林の中の狭路など様々な道を走行します。また、コースの途中にはジャンプや河渡りなどもあり、マシンと選手には総合的な対応力が求められます。
監督兼ドライバーの増岡浩、コ・ドライバーのパスカル・メモン、そしてテクニカルディレクターの田中泰男(三菱自動車 開発本部 EV要素研究部エキスパート)、同部の4名のエンジニアと三菱自動車が主体となったチーム体制により、『アウトランダーPHEV』のパフォーマンスを引き出し、完走及び上位フィニッシュを狙います。
ドライバー兼監督、増岡浩のコメント
「ダカールラリーにも出場する強豪が集うバハ・ポルタレグレ500に、自ら『アウトランダーPHEV』のステアリングを握り参戦することを楽しみにしてきました。国内で数回テストを行い『アウトランダーPHEV』のポテンシャルは確認済みですが、ポルトガルでのシェイクダウンは実際のラリーコースに近い走行条件で長距離テストを行い、最後の微調整と本番に向けた走行準備を行いました。S-AWCのセッティングのさらなる最適化により、自由自在なハンドリングに仕上がりとても満足しています。競技車両の『アウトランダーPHEV』は、基本的にはエンジンで発電してモーターで走るシリーズ走行モードでの走行となります。モーターによる力強く滑らかな加速はコントロールしやすく、変速操作が不要なためアクセルワークに専念できます。また、常時発電して、ブレーキングで積極的に回生、立ち上がりではモータートルクをフルに発揮するという、電動車両ならではのエネルギーマネージメントが走る醍醐味です。ラリーフィールドで、『アウトランダーPHEV』のパフォーマンスを披露したいと思います。」
テクニカルディレクター、田中泰男のコメント
「アジア・クロスカントリーラリーに『アウトランダーPHEV』で参戦するプライベートチームに対して、3年間、技術支援を行ってきました。今回の競技車両は、8月のアジア・クロスカントリーラリーに出場した競技車両と基本的に同じですが、技術支援を通じて得たノウハウを活用し、ラリーの特性に合わせて細部を仕上げてきました。そして、ラリーの開始前に行ったシェイクダウンではその効果を確認するとともに、さらなる小改良を施し万全を期しました。発電量、充電速度、モーター出力の向上といった今回の高性能化アイテムは、ラリーでのパフォーマンスを向上させるためだけでなく、今後の市販車の性能向上にも応用できる技術です。連続する限界走行で確認できた様々な課題を、ラリーを通じて克服していくことで、将来の電動車両の性能・品質を高める技術を磨いていきたいと思います。」
<番外編>
今回ラリーの中心地となるポルタレグレの町は、小高い丘のてっぺん部分に建つ大聖堂や城を中心に広がり、狭く迷路のような坂道が続く旧市街と、多くの人が生活し働く新市街にわかれています。旧市街は昔ながらの町並みが残り、のんびりした雰囲気です。 1日の仕事が終わった後は待ちに待ったディナータイム。アレンテージョ地方の美味しい田舎料理が味わえる、地元のレストランを訪れました。レストランのスタッフのおすすめは、肉料理。メニューにはポーク、チキン、ビーフ、ラムなどいろいろな選択肢がありましたが、この地方ならではのイノシシ料理を選択。何でも、地元の猟師さんから新鮮なイノシシが手に入るということです。イノシシというと少し匂いが強いイメージがあるかもしれませんが、グリルされたイノシシは実に香ばしく良い香り。肉質は意外にも柔らかくジューシーで、上質な豚肉のような食感。しかし豚肉よりも旨みに凝縮感があり、その濃い味わいは1度食べたらクセになります。アレンテージョ地方を訪れる機会があったら、是非試して頂きたい逸品です。なお、アレンテージョ地方はワインの名産地としても有名だとか。ポルタレグレまでの道中ではブドウ畑やワイナリーも多く見かけました。こういった旅行的な雰囲気を味わえるのも、移動が多いラリーの魅力のひとつですね。
10月23日(金)、総走行距離173.94kmのレグ1が行われ、増岡浩の駆る三菱自動車チームの『アウトランダーPHEV』は、1時間16分10秒71の総合32位(TEクラス1位)、ナショナルクラス3位でゴールしました。
同ラリーの伝統的な名物ステージであるスーパーSSのSS1(5.62km)は、大勢の観衆に見守られる中、草原地帯の特設コースでスタート。全体的にはドライながら一部湿り気を帯びたグラベルコースで、『アウトランダーPHEV』は5分26秒71という総合26位、ナショナルクラス2位のタイムを記録し、好調なスタートをきりました。
ポルタレグレでのサービスをはさんで行われたSS2(83.15km)は、ポルタレグレの西側エリアに広がる丘陵地帯や森林地帯を中心とするグラベルステージ。道幅は全体的に狭く、アップダウンが連続するテクニカルで難易度の高いコースでしたが、『アウトランダーPHEV』はノートラブルで最初のロングSSをクリア。1時間10分44秒というナショナルクラス3位のタイムを記録し、レグ1を総合32位(TEクラス1位)、ナショナルクラス3位の暫定リザルトで終えています。
なお、四輪部門では、『ハイラックス』(トヨタ)のリカルド・ポレム(ポルトガル)が1時間00分46秒36で総合首位。三菱車では、『ASX』(日本名:RVR)のカルロス・スーザ(ポルトガル)が1時間03分22秒26で総合4位と健闘しています。
ドライバー兼監督、増岡浩のコメント
「今日のレグ1は私たちにとって完璧に近い1日でした。マシンはノートラブルで、ドライビングとナビゲーションもノーミス、すべてがうまく行きました。私がバハ・ポルタレグレ500に出場するのは10年ぶりで、クロスカントリーラリーに出るのは2009年のダカールラリー以来となりますので、最初のステージは少し慎重にスタートしました。しかしマシンのフィーリングがとても良かったので、すぐに自信を持ってドライブすることができました。
コースは想像していた以上に狭く、アップダウンが激しく、そして出走順がかなり後方だったため路面は驚くほど荒れていました。しかし『アウトランダーPHEV』は抜群の走破性能と優れたコントロール性能を示し、難しい路面コンディションにも関わらず意のままに操縦することができました。また、全開走行を続けてもPHEVシステムは完全に機能し、モーターが発生する大トルクを最大限に感じながら、気持ちよく走ることができました。」
テクニカルディレクター、田中泰男のコメント
「このクルマでバハ・ポルタレグレ500に出場するのは初めてでしたが、『アウトランダーPHEV』はノートラブルでパフォーマンスを出し切ることができました。シェイクダウン後、冷却系に施した小さな改良もうまく機能し、競技において大きな負荷がかかるPHEVシステムのモーターは完全に温度がコントロールされた状態を保ち続けました。
今日は砂地のトラクションがかかりにくい道も多かったようですが、そのような路面こそレスポンスに優れ大きなトルクを途切れなく発生するPHEVシステムが得意とするところ。増岡選手が記録したタイムにはとても満足しています。ただし、明日のレグ2は今日よりもはるかに長い合計345kmのSSを走行するので、チャレンジングな1日となるでしょう。『アウトランダーPHEV』と増岡選手がどのような走りを見せてくれるのか楽しみです。」
10月24日(土)、総走行距離501.96kmのレグ2が行われ、増岡浩の駆る三菱自動車チームの『アウトランダーPHEV』は、レグ1との合計タイム11時間45分47秒0の総合47位(48台中)で初参戦の「バハ・ポルタレグレ500」を終えました。
ポルタレグレの西側エリアで午前中に行われたSS3の全長は144.13km。スタート後しばらくすると小雨が降り始めて路面はやや濡れた状態となり、『アウトランダーPHEV』が走り始める頃には、道は荒れ深い轍が刻まれる難しい路面コンディションとなりました。前日に続き快調なペースでSS3を走行していましたが、スタートから58km地点で発電系統のヒューズにトラブルが発生し、ステージ続行を断念することになりました。
その後、クイックアシスタンスに助けられポルタレグレのサービスに戻った『アウトランダーPHEV』は、速やかにヒューズを交換して競技に復帰。ポルタレグレ西側に広がる、今大会最長となる200.95kmのSS4を走行し、降り続く雨の中、3時間29分37秒00を記録し、総合では48台中22位(ナショナルクラスでは20台中2位)となり、『アウトランダーPHEV』の走行性能の高さを証明しました。
今日(現地時間10/20)はポルトガルの首都リスボンの120kmほど南東にあるサンタ・マルガリーダ・ド・サドという村でシェイクダウンを行いました。早朝、ポルトガルの販売会社MBPアウトモベイス・ポルトガル・エスエー(英語表記:MBP Automóveis Portugal, SA)でアウトランダーPHEVをキャリアカーに乗せ、高速道路と一般道を通りシェイクダウンステージまで移動。道中、シルバーとレッドにカラーリングされたアウトランダーPHEVは注目の的でした。
シェイクダウンのコースは、一般の交通が遮断されたグラベルロード(未舗装路)。コルクの木の林や、牧草地の中を通る約4kmのステージです。日本での入念なテストや、8月に行われたアジアクロスカントリーラリーへの出場で完成度を高めてきたアウトランダーPHEVは、簡単なシステムチェック後すぐに走行をスタート。増岡浩選手のサイドシートには、かつてダカールラリーを共に戦ったフランス人ナビゲーターのパスカル・メモン選手が座りました。ふたりはまず、抑え目のスピードで走行しコースの状況を確認。やがて全開走行を開始し、予定していたテストメニューを順調に消化していきました。
十分なデータが集まり、増岡選手がクルマになれたところで午前中のセッションは終了。コースのすぐ近くにある食堂でランチタイムとなりました。ランチはスタッフ全員で大きなテーブルを囲み、ポルトガル料理を堪能。その地方名産の羊のチーズや豚肉の薫製に始まり、アスパラガスのオムレツ、ほうれん草のスープ、そしてマリネしたポークリブのグリルなど美味しい料理を皆で楽しみました。ラリーチームにとって食事はリラックスタイムで、コミュニケーションの場でもあります。みんなで楽しく食事をとることで、自然とチームの結束力が上がっていくのです。
昼食後はコースに戻り、シェイクダウンを再開。午後は連続走行を中心に行い、長距離を走った場合のクルマのコンディションや、セッティングの善し悪しをチェックしました。増岡選手はPHEVシステムやS-AWCなどいくつかのセッティングを試し、アウトランダーPHEVを豪快かつ繊細にドライブ。最後に約50kmのロングランを行い、日が暮れる寸前まで精力的に走行を続け、予定していたすべてのテストメニューをクリア。増岡選手は、ラリー本番に向けてしっかりとした手応えを感じたようです。
増岡選手は「すでに日本でかなり完成に近い状態にクルマを仕上げていたので、特に問題もなくロングランを続けることができました。また、8月のアジアクロスカントリーラリー出場で得たデータもフィードバックされ、信頼性がさらに高まっていることを確認しました。今日走ったコースは実際にラリーで使うコースとかなり似ていると思いますが、とても良いフィーリングで走ることができました。アウトランダーPHEVはもともと低重心なのでハンドリング性能が求められるコースで挙動がとても安定しており、そしてS-AWCのおかげで自由自在にクルマをコントロールすることができます。それを実際のコースに近い道で確認することができた、とても有意義なシェイクダウンでした」と、満足そうに語っていました。
シェイクダウン終了後は、夕闇迫る道をリスボンまで走り、ポルトガル販社に無事到着。チームスタッフは入念にクルマのチェックやメンテナンスを行い、長くも実りある1日が終わりました。明日はいよいよラリーが行われるポルタレグレへの移動です。だんだんとラリー本番が近づき、チームスタッフの士気はさらに高まってきています。