AM 09 : 00
初日は朝から出場車両全車の車検が行われ、
アウトランダーPHEVは無事に車検をクリア。
競技車両は、『アウトランダーPHEV』を使用。プラグインハイブリッドEVシステムをはじめ、ハード面では市販車とほぼ同様の仕様で参戦。
競技専用サスペンションの採用や電池搭載部の加工などにより昨年よりも車高をアップして悪路での走破性を向上。さらに、車両運動統合制御システム「S-AWC」の制御を競技向けにセッティングし、トラクション性能を高める。また、ロールケージやアンダーガードの装着、ボンネット、リヤゲート、内装部品など昨年に比べ100kg以上を軽量化、各部のシーリング強化やシュノーケル(吸気用ダクト)などの水回り対策を実施。
出場クラス | : T1-3G(改造無制限)クラス*1 |
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エントラント | : TWO & FOUR MOTOR SPORTS*2 |
車両重量 | : 1872kg(Fr 1040kg/Rr 832kg) |
※スペアタイヤx2、工具含む(ジャッキ、ジェリカン、牽引Kit等)、ガソリン20L
形式 | : S61(前)/ Y61(後) |
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定格出力 | : 25kW×2 |
最大出力 | : 60kW×2 |
最大トルク | : 137N・m(前)/ 195N・m(後) |
種類 | : リチウムイオン |
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総電圧 | : 300V |
総電力量 | : 12kWh |
年齢 | : 56歳 |
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出身 | : 大阪府 |
世界的なラリーや各種レース・ダートトライアル等で活躍。 アジアクロスカントリーラリーでは、コ・ドライバーの石田とともにワークス勢を相手に、プライベーターながら、2004・2005・2007とクラス優勝に輝いている。 また2000年のロンドン-北京ラリーでは見事総合優勝を獲得。 |
年齢 | : 47歳 |
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出身 | : タイ王国 |
タイクロスカントリーラリーで入選するなどタイ国内を中心に活躍。 今回、青木選手とコンビを組み、初めてアジアクロスカントリーラリーに挑戦する。 |
初日となった8月9日。まずは出場車両全車の車検が行われました。『アウトランダーPHEV』は無事に車検を終え、プロローグランへ。このプロローグランは、全行程14kmと短いものですが、そのなかにもSS(スペシャルステージ:タイムトライアル区間のこと)が組み込まれています。『アウトランダーPHEV』は22台の出走中11位でSSを終えました。
SSゴールから約4時間後、いよいよセレモニアルスタートの時間。セレモニアルスタートはパタヤビーチの繁華街で行われました。多くの観光客が見守るなか、モトクラス16台と4輪クラス22台の計38台が1台ずつスタート。チームは翌日からの長いラリーに向けての第一歩を踏み出しました。
大会2日目。この日のメニューはタイ王国パタヤをスタート、カンボジアとの国境の町、サケオまで約400kmを移動します。この400kmのなかには約200kmのSSも含んでいます。
SSのスタートはゴムプランテーションのなかにある林道。フラットダートな路面状況で『アウトランダーPHEV』の得意とするシチュエーション。PHEVらしくスタート直後はエンジンが始動しない状態で、滑るように走り出しました。
しかし、今回のSSはスタート地点のようなフラットなダートばかりでなく、多くは非常に深いマッド路面。SSスタートから18km地点は特にひどく、地元の農家の耕耘機でほじくり返された深いわだちに覆われていました。昨年よりも車高をアップしていましたが、さすがにこのわだちにはスタックを余儀なくされました。
約4時間の足止めを食いながらもどうにか脱出することに成功した『アウトランダーPHEV』は、オンコースで進みつつ、深いマッド路面が予想される場所は迂回を行いながら、SSの約2分の1の距離にあるタイムコントロールまで到着。この後のSSをオンコースで走ってもタイムアウトすると判断したドライバーの青木孝次選手はオンコースを諦めて迂回を決意。タイムアウト前になんとかゴールを達成し、総合13位でこの日を終えました。
マシンのポテンシャルはアップしているものの、あれだけ深いわだちには歯が立たちませんでした。車高が上がっている分、行けそうだという気持ちも強くなりついつい入ってしまったのかも知れません。車両重量が軽くなっているので、スタックしたときの脱出も昨年よりも楽にできました。再発進時もモーターと特性で回転を上げることなくトルクで走れるので非常に走りやすかったです。
昨年出たさまざまな問題点を解決していて、それをドライバーに感じてもらえているのがいい点。今日は無事にゴールに戻ってきてくれてホッとしています。これから長い道のりですがとにかく完走を目指したいですね。
大会3日目。タイ王国サケオの街を起点とした約380kmのループコースで競技が行われます。
SSスタートまで移動距離は約90km。その後約240kmのSSを走り、約50kmの移動でホテルに戻るというコース。
『アウトランダーPHEV』は13番手から順調なスタートを切ったものの、約4km走ったところで左前タイヤをパンクさせてしまいました。このトラブルにより8〜10分程度のタイムロスとなり、さらには順位を落とすことに。
とはいえ、それ以外についてはかなり順調に走ることができました。昨年、チームをもっとも悩ませたのは連日の雨でしたが、今年のタイは雨期にも関わらず晴天が続き、コースも比較的乾いている状態。こうした路面状況のよさも手伝って、走りは順調に進みました。
パンクによるトラブルでの遅れを途中で取り返し、昨日より1位上位の総合12位で今日の走行を終えました。
本日のSSは川渡りあり、ロックセクションあり、フラットダートにサンド、そしてジャングルと非常に多種多様な状況でしたが、『アウトランダーPHEV』は軽くなった車重を活かしたフラットダートや、車高を上げたことで楽になったロックセクションなどで高いポテンシャルを感じることができました。
セーブモードを上手に使うことでモーター動力が必要なときに使えるように走っています。
また、S-AWCも上手に使えるにようになってきて、走りが楽になりました。
2日間続けてタイムアウトにならず競技が進行しているのは非常にうれしいこと。ドライバーも運転を楽しんでいるようですし、明日からも良い日になりそうな予感がしてます。
大会4日目。タイ王国サケオを出発したラリー部隊はコンボイを組んで一路カンボジア国境に向かいます。
カンボジアに入国すると今まで左側通行だった道路がいきなり右側通行に変わります。道路は舗装と未舗装が入り交じった状況で舗装路といえども大きな穴があるなど、決して路面状況は良いとは言えない状況です。
サケオのホテルからSSスタート地点まで約80km、SSが約170km、SSゴールからホテルまで約20kmの計約270km。
カンボジア最初のSSは、以前の経験から高速コースであることは予測していましたが、今回はしばらく雨が降っていないことに加え、目を見張るような速度で道路の整備が進んでいることもあり、「超」がつくほどの高速コースとなりました。
『アウトランダーPHEV』は、このSSで9位のタイムを出し、総合順位を11位にジャンプアップさせ、ゴールのアンコールワットに到着することができました。
まったくトラブルレスで3日間のSSを終えていることが非常にうれしい。今日はPHEVのプログラムを変更して充電をしっかり行えるようにしました。これは加速時にモーターの力をめいっぱい使えるようにするためです。今日はタイのマッド路面を想定した足まわりでしたが、明日はフラットダートに合わせたセッティングに変更するので、さらなるタイムアップが可能となるでしょう。
ドライバーの好みに合わせてS-AWCのセッティングをいじっています。具体的には弱アンダーな特性をニュートラルに近づけるセッティングです。とはいえS-AWCだけでセッティングできることではないので、まずはハード面でしっかりとセッティングしてそれからS-AWCがフォローするという方式です。現状、ドライバーにも好評なセッティングとなっています。
大会5日目。ラリーはアンコールワットを出発し、カンボジア西部の街バタンバンへ。
この日のSSは昨日の逆回りとなる予定でしたが、あまりにハイスピードになることなどを理由にSSの前半約110kmがキャンセルに。このため、走行はSSスタートまでの移動約16km、SS約80km、ホテルまでの移動約90kmの計約186kmとなりました。さらにSSスタートからしばらくの区間で道路整備が行われていたことから、スタート地点が当初の予定よりも10kmほど先に移動されました。
この日『アウトランダーPHEV』は、ドライバーがチャージモードを多用することでより多く充電できるように動力電気系のセッティングを変更しました。また、ドライバーもフットブレーキより充電が可能な回生ブレーキを多用することで、より充電を行い、そこで得られた電力を加速に生かすことで、この日のSSでは6位に入ることができました。
昨日の逆回りとなる予定でしたが、
あまりにハイスピードになることなどを理由にSSの
前半約110kmがキャンセルに。
さらに、道路整備による影響でスタート地点が
予定よりも10kmほど先に移動された。
モーターが使える状態を多くすることで速く走ることが可能になります。エンジンだけの場合よりも走りやすさを感じます。そして燃費もよくなるのにはビックリ。70kmのSSを全開で走って、燃料計は1目盛りしか動いていませんでした。
また、ボディもモノコックなのにしっかりした剛性を持っていることを感じ取れます。SSを走った後もボディにきしみ音などが出ることはなく、しっかりとしていることが確認できます。さらにトラックベースのモデルとは違って、ちゃんとしたラグジュアリー感があるので、疲れないのもこのクルマの大きな特徴。
カンボジアに入ってからは高速コースが続くので、発電をメインとしたセッティングにしています。発熱の問題と戦いながら、より効率のよい充放電のバランスを取っています。モーターを使いたいときに使えるようにバッテリーの状態を持っていくことが重要なポイントとなっています。
大会6日目。ラリーはカンボジア西部の街バタンバンから最終目的地である首都プノンペンに向います。
この日はSSのスタート地点まで約20km、SSが約210km、SSゴールからホテルまで約200kmの計約430kmというこのラリーでもっとも長い距離を走るコース。
今回のSSはフラットダートからジャングルに入るコース。ドライバーの青木孝次選手は、各所からの情報と今までの経験から、今回のSSの過酷さを予想しました。
その予想は的中し、約45km走った地点で、その先の路面状況がかなり過酷であるという情報をつかみ、完走を最優先し、オンコースを諦めてチェックポイントを目指すことにしました。
その結果、『アウトランダーPHEV』はSSのリザルトが17位、総合結果のリザルトが15位となりました。
昨年と比べて車高をアップし、サスペンションの強化などを行っているにも関わらず、今日になってもボディ関係に不具合が出ていないのには驚いています。市販車に対して強化している部分もありますが、このようなラリーで活躍できるということは、それだけ耐久性がしっかりとしている証拠だと自負しています。
高速で走行するとどうしてもバッテリーの電力が減ってきてしまいます。そこをどうやってジェネレーターで充電していくかが、今回のラリーでのポイントです。ジェネレーターの働きが勝負のポイントとなるでしょう。ジェネレーターでより充電をする頻度を上げることが大切です。また、充電をしていくとバッテリーが熱を帯びるのですが、クーリングシステムについては市販車と同じで、このシステムが安定していることを確信しました。ジェネレーターに関してもハード面は市販車と同じでプログラムのみを変更し、ほぼ充電しながら走行を続けているようなセッティングとなっています。
大会7日目、ついに迎えたアジアクロスカントリーラリー最終日は首都プノンペンを起点にスタート。
この日のコースはプノンペンのホテルからSSスタート地点まで約70kmを移動。約50kmのSSを走り、ふたたびプノンペンまで70kmを移動するというコース。50kmというモーター駆動用の電池を使い切れる距離ということも手伝い、SSでは2位のタイムをはじき出しました。同時に総合順位では14位、T1Eクラス優勝を2年連続で果たすことができました。
PHEVシステムについては昨年から開発がさらに進んでいることがよくわかりました。モーターとエンジンの両方を使って走れる距離についても約2倍に増えています。1年でこの進化は本当にすごいと思います。
昨年に続き、PHEVシステムには何の問題もなくラリーの全日程を終えられたのが一番うれしいです。グリップの良い路面でのハイスピードラリーになったため、S-AWCのテストも市販車にフィードバックしやすいデータを得ることができました。来年についてはまだ何も決まっていませんが、帰国後にいろいろと話し合い、ぜひ限界に挑戦したいと思っています。
総走行距離約1,986km 完走!!
総合14位、T1Eクラス優勝
『アウトランダーPHEV』は、過酷なコースを19時間17分12秒で走り切り、2年連続の完走を果たした。
信頼性・耐久性及び走破性の高さを発揮するとともに、プラグインハイブリッドEVシステムが過酷な道路状況にも十分耐えることを実証。
今回のラリーを振り返って…
スタート前のテスト段階で足廻りのトラブルが発生した事が、最終的に完走に繋がったと、今は思っています。やはりテスト走行は大事ですね!(笑)
パーツ変更により、強化された部分が、強化されていない部分に負荷を掛ける事を改めて認識できたテストになったと思います。もちろん、スタート前には全ての問題箇所も改善されスタートする事ができました。
スタート初日と2日目までは、昨年から進化した今年のシステムに慣れる事と感覚を思い出しながらの走行。
3日目からは更に充電システムや回生ブレーキのタイミング、前後トルク配分などを変更した結果、走行距離が格段に伸び、更に身体で感じることのできる加速感など、目を見張る進化がありました。他車に追従する速さを身につける事ができたことには驚きました。
最終SSで総合2位のタイムが出せる程にセットアップできたのは、車両を製作したメカニックやアウトランダーPHEV主要部分のメカニックと試行錯誤しながら、セットアップした成果だと思います。
最後にシステム変更や足廻りの調整をする事によって、ラリーにおける走行安定性、操縦性、航続距離など、アウトランダーPHEVの持つ走行性能を更に引き出す事の出来た大会になったと思います。
このラリー特有の悪路での完走したデータをもとに、市販車開発にぜひフィードバックを頂き、更に進化したアウトランダーPHEVを見てみたいですね!
あと、来年はいよいよ上位を狙いますよ!!(笑)
SSのコースはアップダウンの多いラフロードでした。道幅が狭くて、クルマ1.5台分くらいしかない感じ。シェイクダウンでの走行距離も短く、不安もあり、ずいぶんと抑え気味で走ったのでかなりの余裕を感じられました。マシンが軽量化されていることで揺り返しなどの動きが抑えられていてコーナーはかなり楽に走れます。サスペンションもよく動いてくれるので運転は楽ですね。今回のコースはS-AWC(Super All Wheel Control)を入れっぱなしでしたが、十分に機能してくれました。