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特別編 ジル・パニッツィ ロングインタビュー第2弾 その1

発売前のエボリューションプロトタイプIXを極秘ドライブ
エボVIIIとの違いを2点挙げてくれました
(写真: '04.12.8 群馬県)
パニッツィが運転するランサーエボリューションIXの試乗走行を動画で掲載しています。
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Q: ラリー・ドイツからラリー・スペイン(カタルニア)まで、三菱自動車は参戦活動を休止しましたが、その間はどのような仕事をしていたのですか?

サスペンションの改良でより進化したWRC04。この改良をもとに05モデルの開発も進んでいる
A: ラリー・ドイツが終わって、すぐに新しいサスペンションが仕上がりましたので、すぐにテストを始めました。まずは、的確に機能するかどうかを確認しました。サスペンションに限らず、新しいパーツが完成した場合、最初に大きな問題がないことを確かめなければなりません。従って新しいサスペンションの挙動や効果を理解する必要がありました。路面コンディションに合わせてセットアップを変更するといったチューニングは、それからのこととなります。まずグラベル(未舗装路)でテストをして、それからターマック(舗装路)でもテストを実施しました。このテストでは、サスペンションと並行して、さまざまなニューパーツや改良パーツを装着し、走行性能と信頼性の向上を目指しました。これはサス周りだけでなく、多くのエリアのエンジニアが関係しています。
 実際、エンジニアはさまざまな作業をしてくれましたが、参戦活動を休止しなければあそこまで入念にはできなかったでしょうね。基本的には細かい部分ばかりでしたが、それらが総合的にマシンパフォーマンスと信頼性の向上に貢献してくれたのでしょう。ラリー中はもちろんですが、テスト中にも小さな問題が幾つも持ち上がります。でも三菱自動車の強みは、優秀なエンジニアが揃っていて、一度発生した問題の再発を確実に防止できる、という点です。とにかく細部まで気を配ることを念頭に置いていますが、まずはラップタイムを上げる段階ではなく、つまらないトラブルの発生を防止して、タイムロスを防ぐ方向で作業を進めていきました。最近のラリーではサービスパークが少なくなり、スペシャルステージ(SS:競技区間)からサービスパークまでのリエゾン区間の距離がかなりあるケースも珍しくなくなっています。また、ステージ間ではリモートタイヤゾーンしか認められない場合も増えており、マシンのトラブル防止や信頼性の向上がますます重要視されています。もしも何か問題が発生した場合は、車載工具やパーツだけで対処しなければならないので、出来る範囲も限られますからね。

Q: 復帰第1戦となったラリー・スペイン(カタルニア)では、ハッキリとした成果が出ましたね。

カタルニアラリーで、久々にファンの前に姿を現したパニッツィ

カタルニアでは、細かな問題が発生して上位から
ドロップ。SS2終了時は総合3位だっただけに残念だった
A: はい。パフォーマンスと信頼性の向上をこの目で確認できました。ですが、やるべき仕事はまだまだ残っています。ラリー中、細かな問題が発生してスローダウンを余儀なくされ、期待していた上位フィニッシュは叶いませんでした。SS2を終えた時点で3位につけていたので、チームは大いに喜んだのですが、その後が続きませんでした。もちろん何が原因か確認しようとしましたが、ラリー中に的確なセットアップを見つけるのは非常に困難です。一度方向を間違えてしまったら、大幅なロスは必至ですし、ひとつ問題が解決したとしても、別の部分に悪影響を与えてしまうケースもあります。だから、ラリー後にテストを実施し、意図的にスペインと同様のトラブルを再現しました。おかげで、カタルニアで経験したトラブルは、もう解決しています。ワークショップでも、ダンパーのベンチテストを実施しました。

Q: 今回の来日の直前にも、イタリア、サルディニアでのテストに参加しましたね。何か新しいパーツをテストしたのですか?
A: ラリー・スペイン(カタルニア)の直後にターマックテストを実施しました。ここでは、アクティブ・ギアボックス(ステアリングホイールにパドルが装着される)とアクティブ・センターディファレンシャルをテストしたのですが、導入したおかげで、また一歩前進したという手応えを掴みました。もちろん、先ほどにもお話したとおり、ニューパーツを導入する場合、まず、十分に時間をかけて性能を確認する必要があります。細部に渡って完全に確認が取れてからソフトウェア的な作業を行って、ファインチューンをしていきます。何kmも走行を重ねた結果、テスト最終段階では、素晴らしくバランスが良く、ドライブしやすいクルマに仕上がっりました。今までのランサーWRCでは実現できなかったレベルに達しています。ハリ・ロバンペラがどんな感想を持つか、早く聞いてみたいと思い、実は日本に来る直前、チームに電話を入れたところ、ハリは嬉しい驚きを感じていたそうです。ランサーWRCはこの2ヶ月間に大きく進歩していますが、これは復帰1年目の2004年は年間通じて開発に全力をつくすというコミットメントの成果だと思っています。まさにシーズン中ずっと取り組んできたことの成果が見え始めた、というのが正しい表現かもしれません。個人的には、ランサーWRCの開発熟成と真剣に向かい合い、パフォーマンス向上には何をすべきか、何が必要なのかと、ひとつひとつ冷静に分析してきました。だから新たにチームに加わったパリから、ポジティブなコメントが聞けて非常に嬉しいです。ハリが初ドライブを終えた時、マリオ・フォルナリスがこう尋ねたそうです。「まず何が必要だと思うかね」と。するとハリは、「もっとパワーが欲しい」と答えたのです。つまり、それ以外のこと、特に基本的な部分には全て満足している、ということになりますね?ランサーWRC04については、いろいろな意見があることは私も承知しています。ですが、問題はどうやってパッケージに一貫性を持たせるか、ということだけだと思っていました。今の進歩が開発ドライバーとしての私の判断の正しさを証明していると思っています。

Q: では、今後の開発熟成の予定は?
A: 1月にもテストが予定されていますが、個人的にも、新たに装着を決めたピレリタイヤの特性を確認できるという点で、このテストを重要視しています。すぐに開幕戦のモンテカルロが控えているので、よけいに重要ですね。まだ(モンテカルロ用の)最終セットアップは確定していません。新しいサスペンション・コンポーネントの完成を待っているのですが、今よりも快適性が増加して、イージードライブになるはずです。モンテカルロでは、さまざまな路面コンディションが予想されますが、こうしたコンディション変化に対応するにも、現在開発を進めているニュー・コンポーネントが必要となってきます。アクティブ・センターディファレンシャルも、もう少しチューニングを煮詰めて、挙動をプログレッシブにしたいところです。マシンに信頼が置ければ、ドライバーは自信を持ってアタックすることができます。パドルシフトを含め、もう少し細部を煮詰める必要がありそうです。例えばパドルをもう少し大きければ、ステアリングホイールのどの部分を握っていても、簡単にシフト操作ができると個人的には思います。

Q: アクティブ・センターディファレンシャルには、どの程度のアドバンテージがあるのでしょう?
A: 具体的な数字で示すのは難しいですね。ステージによって、アドバンテージが大きい場合と、それほど差がない場合もあります。ただし、レスポンスは明らかに向上しますし、ハンドブレーキを使う場合にも差が出ます。最良のセッティングが見つかったら、大きなプラスになるに違いありません。デフロックとロック解除が自由にできますから、路面に合わせてドライバーがファインチューンすることができます。これは大きなアドバンテージとなります。ただし、完璧なセットアップを見つけるには、それなりに時間をかけなければなりませんし、ひと筋縄で行くような簡単な作業でもありません。イベント毎にマッピングを変更しなければなりませんから、ある程度経験がモノをいう世界です。同じターマックでもドライとウェットではグリップレベルが異なります。ひと口にグラベル、スノー、アイスなどと言っても、路面状況は同じではありません。といっても、データを蓄積できれば、作業も容易になるでしょう。

Q: フロントやリアのアクティブ・ディファレンシャルには、どういう計画があるのですか?
A: アクティブ・ディファレンシャルは2006年には禁止されることが決定しているので、今、それに集中するのが適切かどうか、ちょっと判断に迷うところはありますね。マシンの他の部分にお金と時間を使った方がいいのではないか、そういう気もしています。2005年には何かが足りないと感じたとしても、それが2006年以降に向けたアドバンテージになれば問題はないでしょう。

Q: では、個人的な目標は?
A: 過去11ヶ月よりも、最近の1ヶ月で、パフォーマンス、信頼性の両面でマシンが急激に進歩した、と感じています。おかげでメカトラブルが少なくなって、テストでも走行距離が稼げるようになりました。全員の努力が報われ始めたようです。それだけに、今後は大いに期待ができそうです。これでラリー本番でも結果が出れば、さらにモチベーションが高まるでしょう。
 現在の第一目標は、ライバルとの差を詰めることです。2004年は4チームが優勝を経験しており、それからすると三菱自動車はかなり差を付けられています。今ではマシンもかなり進歩していますから、ライバルとのギャップを1kmあたり1秒以内まで削り落としたいですね。ライバルと比較した場合、三菱の方がマシンも新しいので、伸び代が大きいというアドバンテージはありそうです。ちょっと幸運に恵まれれば、来シーズン前半に表彰台に上ることも可能だと思います。とはいうものの、現実的には、後半戦でトップ3になることを目標にした方が良さそうです。その頃には、マシンはもちろん、チームも程良く熟成されているでしょう。来シーズン後半にトップ3という目標を是が非でも達成し、2006年はさらにその上を狙う、というのが個人的なターゲットです。


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